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第七話 素人療法は余計に傷を悪化させるからやめといた方がいいと思う。



 「ふぅ、おなかいっぱい。一時はどうなることかと思ったよ」


 マグノリアと別れたあと、そのままカフェで食事も済ませたハルトは、満足げに猫に話しかけた。

 路銀も調達した、腹ごしらえも済んだ。ならばそろそろ、行動を開始する頃合いだ。


 「ねぇ、ネコ。彼女はどこにいると思う?どこに行けば会えるかな?」


 とは言え、完全に行き当たりばったり計画性皆無のハルトに、目的を達成するための手段はおろか、その手がかりすらもなかったりする。


 「…な、なーお」


 そんなこと自分に聞かれても…と言わんばかりに鳴くネコに、ハルトは困ったように溜息をついてみせた。


 「そうだよねぇ。まずは、あの子…メルセデスが何処にいるのか探さなくちゃ。でも探すってどうやればいいんだろう?」

 「……んにーーー……」


 そんなことも考えずに城を飛び出したハルトに呆れているかのようなネコだが、当のハルトは自分の迂闊さには全く気付いていない。

 …そもそも、自分の振舞いが無謀で迂闊で軽はずみで非合理的だと思ってもいなかった。


 「何とかして彼女に会わなくちゃ。きっと彼女もボクのこと待ってるよね?」

 「んに…にーー…?」


 それはどうだろう?と首を傾げるネコ。しかしハルトは何かを確信している。


 「ボクたちはね、出逢うべくして出逢ったんだ。彼女はボクに逢うためにあの森にいたのだし、ボクも彼女に逢うためにあの日城を出たんだ。…分かる?」

 「……にーににゃー……」

 「そっか、分かってくれるね!」


 アニマルコミュニケーターでなくても、おそらく彼らの遣り取りを聞いていたら九割方の人間はネコの言いたいことを正確に理解しただろう。

 だが、残念なことにハルトは残り一割の方に入っていた。


 「……んなーーー」


 ネコは諦めたように一声鳴くと、ハルトの肩に飛び乗った。それに催促されるように、ハルトは店を出てとりあえず歩き出す。


 ハルトの考えはこうだ。

 …メルセデスと出逢った森から一番近い街はここである。

 だから、このあたりをうろついていれば彼女に逢えるに違いない。


 考えるのが面倒だとか適当に考えてるだとかではない。ましてや、根拠があるはずもない。

 だが、ハルトは大真面目にそう考えていた。

 軍資金は手に入れたわけだし、数日間…或いは数週間この街に滞在すれば、きっと彼女と再会できる。何故ならば、二人は運命で結ばれた関係なのだから。

 ……と。

 そしてここには、そんなハルトの暴走気味な勘違いを訂正してくれる者は、残念ながらいなかった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「おいおいおいおい、ぶつかっておいて詫びの一つもないのかよ、坊主?」

 「うあー、痛ててて、こりゃ折れてるに違いねぇ!」


 行動方針を決めた矢先、ハルトは困っていた。

 彼の目の前には、二人の男性。一人はハルトを脅しつけるように見下ろし、もう一人は地面に倒れ込んでいる。


 カフェを出て数歩のところで、ハルトは後ろから足早にやってきたこの二人組のうち一人と、ぶつかってしまったのだ。

 

 「あ……ごめんなさい大丈夫ですか?」


 ハルトとしてはぶつかった覚えはないのだが…寧ろぶつかられたような気がするのだが…相手がそう言っているのならそうなのだろう、素直に頭を下げた。

 だが、二人組が必要としているのは、どうやら謝罪の言葉ではないようだった。


 「っはーーー、これだからお坊ちゃんは。ゴメンで済んだら警察要らないだろぉ?」

 「あててててて、痛くてたまんねーや!!」


 ぶつかった方の男は地面に転がったまま、大仰に右肩を抱いて悶絶している。周囲の人々も騒ぎを聞きつけて、何事かと人垣を形成し始めた。

 その中には、倒れ込む男の態度を見て顔を顰める者も少なくなかったのだが、ハルトは本気で男を心配する。


 「痛みますか?折れちゃったんですか?どうしよう……とりあえず、治療ができる場所に…」

 「あーー、そうしたいのはやまやまなんだけどよぉ、オレもこいつも治療院に行く金なんかねーんだよ。…な?だったら、分かるだろ?」


 オロオロと狼狽えるハルトに、無事な方の男がニヤリと笑って言った。無事じゃない(はずの)男の方も、一瞬だがニヤリと笑った…のだがやっぱりハルトは気付かなかった。


 

 ハルトは、暴力沙汰とは完全に無縁で生きてきた。したがって、自分が他者に傷付けられた経験はもとより、自分が他者を傷付けた経験もない。

 生まれて初めて、誰かに怪我をさせてしまった…という状況は、純粋培養のハルトの罪悪感を刺激しまくるには充分すぎた。


 「本当に、ごめんなさい。ええと、ええと、こういうときは………あ、そう言えば…」


 そのとき、ハルトは思い出した。

 お飾りの君主でしかなかったハルトは、限られた執務以外の時間は自由に過ごしていた。と言っても、城の外に出ることは許されず、退屈凌ぎに出来ることと言えば限られている。

 そんな退屈凌ぎの一つが、兵の訓練風景を盗み見る、というものだった。

 そのおかげで、見様見真似で剣を振るうことも出来たわけなのだが、習得した(とハルトが思っている)ことは剣の構え方だけではない。


 「確か、骨が折れたときの処置は……」


 当然ながら、訓練中に負傷する兵もいるわけで。そういった負傷兵に対する応急処置も、遠目ではあるが何度も見ていたりするのだ。


 「お、おい坊主…?」

 「えっと、確かこうやって腕を持ち上げて……で、回して、こう!」


 ごりょ。


 不気味な音がした。


 「いいぎゃあぁあ●✕*$!??」


 脱臼なんてしていないのに(もちろん骨折も)コッヘル法()()()で妙な角度に曲げられた男の右肩は、今度こそおそらく、本当に折れた……と言うか、砕けた。


 「最初は痛いらしいですけど、これでもう大丈夫です!」


 演技ではなく本気でのたうち回る男を見下ろして、一仕事やり終えた感のある表情で断言するハルト。どこからどう見ても、大丈夫ではない。一部始終を見ていた野次馬たちは皆、そう思った。



 「お、おい大丈夫かルアン?どうしちまったんだよ?」

 「痛ぇ、痛ぇよぉ俺の肩が、肩がぁあーーー」

 被害者役の男の様子に、交渉役の男も何かが変だと気付いた。演技にしては、真に迫り過ぎている。自分の相方は、ここまでの演技力は持っていない。


 「ですから、痛いのは最初だけだから我慢してくださいってば」

 「おい、てめぇ!何しやがった!!」


 だから、彼がハルトの襟首を掴もうとするのも、無理からぬことだろう。

 いくら仕掛けたのが自分たちの方だったとは言え、だからしっぺ返しを食らっても自業自得なのだと納得できるような者であれば、そもそも当たり屋の真似事などはしない。


 …しかし、男は確かにハルトの襟首を締め上げてついでに有り金全部搾り取ってやろうと思っていたのだが、それは叶わなかった。



 「そこまでにしとけよ、ローグ、ルアン」

 

 男の腕を掴んで阻止したのは、ハルトと別れたばかりのマグノリアだった。


 「なっ……口を挟むんじゃねーよ、マグノリア!俺たちはこの小僧に…」

 「どうせまた、世間知らずのボンボンから金をたかろうとでもしたんだろ?お前らのやり口はよく知ってる」


 マグノリアに突っかかる男だったが、彼女の鋭い視線と静かな口調に気圧されて、徐々にフェードアウトしていく。


 「悪いことは言わねぇ。勉強代がちっとばかり高くついたと思って、ここは引き下がりな。じゃないと、アタシだっていつまでも見て見ぬフリはしねーぞ?」

 「く……くそ、遊撃士のくせに、正義の味方ぶってんじゃねーよ!!」

 「お、おい待ってくれローグ!肩、俺の肩がぁ」


 どうやら、マグノリアと二人のならず者は知らぬ仲ではなかったらしい。が、良好な関係というわけでもないらしい。

 マグノリアに脅され、男はなんとも情けない捨て台詞と共にその場を逃げ出した。被害者役…すっかり本当の被害者だが…も肩を抑え泣きべそをかきながらそれを慌てて追いかけていった。



 「…あ、お姉さん。また会いましたね。けど、今の人、怪我してるんです。応急処置はしたから、早く病院に…」

 「あのな」


 未だに自分が何を相手にしていたか気付かず、それどころか相手を気遣うハルトに、マグノリアは嘆息した。

 それから、やたらと野次馬が集まってしまっている現状に辟易し、ハルトの腕を掴んで人垣を突破する。


 「え、あの、お姉さん?」

 「マグノリアって名乗ったろ」

 「ええと、マグノリア…さん?ですから、さっきの人……」

 「ああいうのをいちいち相手にするんじゃねーよ、阿呆」


 人気のないところまでハルトを引っ張ってくると、マグノリアは説教という名のお節介を始めた。


 「あいつらは、しょーもないコソ泥くずれのならず者。普段は貧民街スラムで便利屋みたいなことやってんだけどよ、たまにこうして表通りに出てきてお前みたいな世間知らずのボンボンに目をつけやがる」


 マグノリアは、仕事絡みで貧民街スラムにもよく出入りしていて、あの二人のような連中とは何度か衝突したりしている。衝突ついでにとっちめたりもしているのだが、彼らの雑草魂はそうそう簡単に枯れたりはしない。


 「最初にお前にぶつかったのは、ワザと。で、怪我もしてないのにしてるフリして、治療費って名目で金をふんだくるつもりだったのさ」

 「え、そうだったんですか!?」


 本気で驚くハルトのお育ちの良さに、マグノリアはほとほと呆れ果てた。


 「お前な…あんなの真に受けるのなんて、よほどの世間知らずくらいだぞ。現に、周りの野次馬もみんな本気にしてなかったじゃねーか」


 と言いつつ、確かにハルトはよほどの世間知らずなのだろうなー…と思ってもみたり。


 「そんな……そうだったんですね…。ものすごく痛がってたから、嘘だなんて思いませんでした……」


 いや、後半は嘘じゃなく本当に痛かったんだと思う。

 と、マグノリアは心の中でツッコんだ。


 「それじゃ、おねえ……マグノリアさんは、ボクを助けてくれた…んですよね?ありがとうございます」

 「ん、あー…まぁ、助けたのはお前というかお前じゃないというか………いや何でもねーよ」


 実のところ、マグノリアにハルトを助ける意図つもり)はなかった。

 騒ぎに気付いてあの場に駆けつけたのはいいものの、これも一つの勉強かと思ったのだ。


 魔導具屋で、店主の言いなりになって大損しそうになったことといい、見え見えの手に引っかかって当り屋に絡まれたり、どうもハルトは世間の厳しさを知らなさすぎる。

 きっと今まで、何不自由ない生活を送ってきたのだろう。ハルトが金持ちのボンボンだとマグノリアは半ば確信していた。

 そして彼が何の目的で家を出たのかマグノリアは知らないが、これから先生きていくためにも社会勉強は必要だ。

 幸運?なことに、ハルトは魔晶石の代金をまだ一部しか受け取っていない。いくらあの二人が小悪党でも、信用払いの証文まで取り上げるような大悪党ではないとマグノリアには分かっていたし、世の中の厳しさを知らないお坊ちゃんにはちょうどいい経験になるだろうと、傍観するつもりでいたのだ。

  

 傍観するつもりで、男がハルトの胸倉を掴もうとした瞬間、全然関係ない方向から男に向けられたとんでもない殺気を察知して、慌ててそれを止めたのだ。

 それは、長いこと最前線で戦っているマグノリアでさえ、今まで経験したことのないような強烈な殺気。彼女が二人を止めなければ、彼らの末路は……容易に想像できた。

 別にならず者の一人や二人減ったところでさして心は痛まないのだが、往来で…しかも表通りで刃傷沙汰はやめてほしい。

 この街に根付きこの街を愛する彼女は、不必要に街が荒れることを良しとしない。

 すなわち、マグノリアが助けたのはハルトではなく、二人組の男…でもなく、この街だったということになる。


 「…………………」

 「………あの、なんですか?」


 マグノリアに無言でじーっと見詰められ、ハルトは首を傾げる。随分と可愛らしい仕草だが、女性に間近で見詰められて赤面もしなければ気まずさも覚えないあたり、なかなか将来が心配である。

 が、現在彼女が心配するべきはハルトの将来ではない。


 「…悪いことは言わねぇ。痛い目に遭う前に、家に帰った方がいいぞ、お前」


 マグノリアがそう忠告したのも、出逢ったばかりの少年の身を案じたから、ではない。物騒な気配を垂れ流しにしている怖いお目付け役が見張っている限り、()()()()()()安全だろう。

 だが、


 「え、何でですか?」

 「何でって、お前……」


 流石に、お前に何かあったら後をつけてきている剣呑な護衛が何を仕出かすか分かったもんじゃない、とは言えなかった。姿を隠している(バレバレだが)ところを見ると、護衛はハルトに内緒でくっついてきているのだろう。バラしたりしたらこっちが恨まれかねない。


 「お前さ、どこぞの金持ちのボンボンかは知らないけど、身の丈に合わないことはしない方がいいってのが、世間を渡る上で一番重要なんだぞ?親も心配してるだろうし、家出もたいがいにして、さっさと帰れって」

 「そういうわけにもいきません!」


 世間知らずの子供を心底案じている風を装って(少しくらいは案じる気持ちもなくはないが)そう言ったマグノリアに、なぜだかハルトは誇らしげに胸を張ってそれを拒絶した。


 「ボク、会わなくちゃいけない人がいるんです。その人に会うまでは、帰れないし帰らないって、決めたんです!」

 「んなーーお」


 晴れ晴れしい表情でそう宣言したハルトに、これもなぜだか誇らしげに黒猫が合いの手を入れた。やはり、人の言葉が分かっているとしか思えない。


 「会わなくちゃいけない人?」

 「はい、ボクの、運命の人です!」


 心の底から嬉しそうなハルトの声に、通りすがりの通行人ABCDがそれぞれ微笑ましげな表情で通り過ぎていった。

 マグノリアは、臆面もなくそう言ったハルトを、他人事ながら気恥ずかしく感じ、そしてそんな自分は世俗に汚れ切って純粋な心を失ってしまったのだろうかと一瞬本気で悩んでしまうほどだった。


 「えー……と、なんだ、あれか、許嫁…みたいな感じ、か?」

 上流階級の子息であれば、幼い頃から結婚相手が決められていてもおかしくはない。


 「え、そ、そんな…許嫁だなんて……そんなまだ早いって言うか……」

 しかしそこで真っ赤になって照れ照れしているハルトを見ていると、少なくとも相手に対する恋愛感情はあるようだ。


 庶民の中の庶民であるマグノリアには上流階級の考えだのしきたりだのはよく分からない。しかしそういった家の都合と自分の感情に利害の一致があるのであればそれはとても幸運なことなのだと思う。

 …尤も、ハルトのお相手とやらもまた、同じようにハルトを好いているかどうかにもよるのだが。


 「ふーん、ま、約束のある相手だったら無下にはできないわな。さっさとそのお嬢さんに会いに行って、さっさと家に帰るといいさ」

 「………そうしたいのは、やまやまなんですけど……」


 大好きな許嫁に逢いたいばかりに一人で家を飛び出した(実家のお目付け役の尾行はついてるが)お坊ちゃまのささやかな冒険心は、正真正銘の冒険者である遊撃士マグノリアにはとても滑稽でかつ微笑ましい。

 だから半ば本気でハルトを応援したくなったのだが、ハルトは顔を曇らせた。

 

 「なんだよ、会えない理由でもあるのか?」

 もしかしたら、アポなし訪問が問題なのかもしれない。相手の家が自分のところよりも格上だったりすれば、不作法を咎められもするだろう。

 

 「えっと…理由、っていうか、どこにいるのか分からないし……」

 「は?なんだそりゃ?相手の家も分からずに飛び出してきたのか?つか、許嫁なら何処の誰だか知らないハズないだろ?」

 いくら上流階級の結婚が家と家との間の決まり事だとしても、相手の住む場所すら知らないだなんて他人任せにも程がある。マグノリアは呆れかえった。

 しかし、

 「何処の誰かくらいは知ってます!名前だって聞いたし、多分この辺に住んでるんです!」

 ハルトはたったそれだけの情報を、さも特別だと言わんばかりだ。


 「…え、いや……名前くらいは知ってて当然………つーかお前、それ本当に許嫁なのか!?」

 そろそろ何かおかしいことに気付き始めたマグノリア。どうも、自分の認識と事実とは些か齟齬があるようだ。


 「だから、許嫁だなんてまだ早いですよ……それはこれからお互いのことを知ってから……」

 「ちょっと待て。お前、その相手とはどのくらいの仲なんだ?」


 許嫁でなくとも、恋人であれば住所くらい把握しているものだ。

 それなのに、知っているのは名前くらい。この街に住んでいるといっても、「多分」という程度。


 「以前に、彼女に助けられたことがあるんです!」

 「……は?助けられた……彼女に??」

 「はい!すっごく怖い化け物…あ、魔獣…に襲われたとき、彼女が颯爽とやって来てボクを助けてくれたんです。それはもう、すっごく格好良くって綺麗で、見惚れてしまいました」

 「…………魔獣?颯爽と?」


 上流階級のお嬢様が、魔獣退治?

 マグノリアは、自分の中の上流階級に対する認識を改めた方がいいのかと思った。


 「そうそう、彼女がするのを真似して、ボクもあの魔獣から石…魔晶石でしたっけ?あれを取り出してみたんですよ。……ん?と言うことは…、もしかして彼女、ボクがこうすることを予期した上で路銀の調達方法を教えてくれたんじゃ……」

 「にゃ、んにゃにゃ」

 「やっぱりネコもそう思う?」


 ネコは明らかに否定の意味で鳴いたのだが、ハルトはその意味を真逆に受け取った。


 「おい、じゃあその、お前の…恋人?は、魔獣を倒して魔晶石を採取したってわけか?」

 

 それは、どう考えても上流階級のお嬢様のすることではない。どちらかと言えば、遊撃士の仕事だ。


 「なぁ、そいつの名前は?」

 よしんば、上流階級出身の遊撃士がいたとして、マグノリアも名前くらいは知っているかもしれない。

 そう思って、尋ねてみたのだが。


 「はい、メルセデスっていうんです。メルセデス=ラファティ。綺麗な響きの名前ですよね」

 「………………」


 ハルトの口から飛び出て来た名前が、マグノリアのみならず遊撃士であれば誰でも、否、そうでなくとも界隈に少しでも関係する者であれば誰でも知っている超有名人のものであることに、マグノリアは軽く絶句した。

 

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