プロローグ 〜風待ちボーイズ基礎知識〜
風が来た。
実にささやかな風。
それが僕等の原動力。
さぁこれから何をしようか。
僕等の心をくすぐる。
そう、僕等は好奇心の塊。
僕等の日常は、風を待つことから始まる。
その風に乗ったら僕等は、もう止まらない。
ただ意味なく走り続ける。
どこまでも無気力で青春のカケラもない僕等の日常。
そんな日々が何を生むのか僕等は、知らない。
誰がなんと言おうとこれが青春。
これが僕等「風待ちボーイズ」四人集の日常。
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この学校には、いろいろな伝統がある。
イチョウの木の下は、カップル専用のベンチだとか
夜は、校庭に天使が舞い降りるとか
歩く人体模型があるとか
音楽の先生がついに親父ギャグをかまし始めたとか
とても俺のような硬派な人間には、関係ないであろう伝統。
でも一つだけ俺は、直々に伝統を引き継いでいる。
いや、押し付けられている。
俺の他にも押し付けられた奴らが何人か居る。
みんな理由はそれぞれ。
ある一人は、ただ単に断れず
ある一人は、ただ目立ちたくて
ある一人は、気づいたらそう呼ばれていたと言う。
この引き継ぎ方からして実に無気力なことが分かる。
実際に実に無気力なのだ。
俺は…いったい俺は何故――――――――――――
「風待ちボーイズ」などと呼ばれているのだろう?