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神の子  作者: 越前紗和
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ブラックコーヒー

31歳独身会社員。

趣味はカフェ巡りと読書。

そんな私がある日見つけたのは毎日通るはずの道に

いきなりでてきたカフェの看板でした。


社会人になるとなぜか


コーヒーをよく飲むようになります


学生の頃なんて絶対にのまなかったのに。


コーヒーよりもフラペチーノ。


でも今の私はどこのカフェに行っても


メニューも見ずにアイスコーヒーを注文します。


冬でもアイスコーヒーを私は飲みます。


でも、たまにホットココア。


コーヒーを飲むようになったきっかけは覚えていないけど


コーヒーが飲めるようになってからは


カフェにもよく一人で行くようになりました。


恋人もいないし友達も多くない私の休日は


ほとんど一人なのでいつからか趣味はなんですか


と聞かれればカフェで本を読むことです。


と答えるようになりました。


そんな趣味は誇りに思うほどでした。


お酒もタバコもしない私は


生きてて楽しいのと言われるほどでした。


でも私はその趣味のおかげで生きてて楽しいよ


と答えることができます。


自分がしたいことだけをすれば十分楽しいと思います。


私は普通の会社員なので週末が休日です。


そのためその辺で見つけたカフェに入ろうとすると


いつも人が多くてうるさいところばかりです。


ですから私は人が少なそうな場所をよく探しておくのです。


でも、いつも行ってみればお店の中が


あまり綺麗じゃなかったり、


そもそも閉店してたり


なかなか私が求めるようなカフェは


簡単に見つかりませんでした。


しかしあるひ散歩がてら家の周りを歩いていた時


ふとある看板が目に入りました。


かなり古びている看板でしたが


coffeeという文字がうっすら見えたので


カフェの看板だと思いました。


しかしここは通勤の時も通るけど


今まで気づかなかった。


看板の下の方に書いてある矢印の方向をみれば


小さな小屋のようなものが奥に立っていました。


私はお店の入り口の扉を開けました。


中は少し暗くてお客さんは一人もいません。


初めは非常に


「ああ、また失敗した。」


と心底思いました。


いくら静かなカフェとはいえ


お客さんが一人もいないのは少し不安です。


しかし私が店内に入ると


奥から一人の男性が出てきました。


その人がここの店主でしょうか


黒いエプロンをしていました。


「いらっしゃい。」


その人はまだ若く見えました。


私にはまだ高校生のようにも。


「あ、営業してますか?』


「いえ、でもどうぞ座ってください。ブラックコーヒーでいいですか。」


「あ、はい。お願いします。」


「うちにはミルクとシロップがないので、すみませんね。」


そう言うと男性はキッチンと思われる場所に入って行きました。


店内は結構ちゃんと掃除もされていて


雰囲気も良いのですが


BGMもなければ照明も薄暗いので


なんだか変な感じでした。


まだ営業してないと言っていたから


開店前に入ってしまったんだなと


ばかり考えていました。


「はい、どうぞ。」


「ありがとうございます。」


私は本を広げる前に一口飲みました。


今までにないくらいの美味しさでした。


コーヒーなんてどれも同じだろうと思う方も


多いと思いますがここまでコーヒーを飲んでいると


少しの味の違いを理解してくるものです。


私も美味しい、不味いの区別は


まださほどつきませんでしたが、


このコーヒーは今までのコーヒーの中で


間違いなく美味しいと言えるものでした。


苦味は程よく香りはとてもいい。


渋さもなくてすごく飲みやすい。


私はごくごく飲んでしまいまして、


本をさほど読んでいないのにコーヒーを


先に飲み終わってしました。


流石に2杯飲むのは、と思ったので


その日は少しだけ本を読んだら帰ろうと考えました。


いい場所を見つけて気分がとてもよかったのですが


帰り際にお会計をしようとしたら


男性の姿はどこにも見えず、


大きな声で読んでも返事をしませんでした。


まさかその辺で倒れて要られても困るので


一応店内の奥の方まで見ましたが


姿は一つも見えませんでした。

仕方がないので私はいくらなのかわからない


コーヒー代として500円を


テーブルに置いてお店を出ました。


外はすっかり日が暮れていました。


そんなに長い時間いたのだろうか。。


私はまっすぐ家へ向かって歩きました。

家に帰って先ほど行ったカフェのことを


調べようと思いパソコンを起動させました。


そういえばそのカフェの名前も知らない。


次に行く時にはちゃんと営業時間内に


行こうと思っていたので何とか


ネットで調べようと思いました。


しかし位置情報を利用して


近所のカフェを調べても


私が行ったあのカフェだけが出てこないのです。


いつまで調べてもことが進まないので


私は明日も行って見ることにしました。


「雨か。」


朝起きて準備を済ませてそとに出ると


外は雨が降っていました。


傘を持って目的のカフェまで歩いて行きます。


昨日と同じように古びた看板は


草に隠れるように出ていました。


これじゃあ誰も気がつかないな。


何の迷いもなくお店のドアを開けると


昨日私が帰る時姿を見せなかった店主の姿がありました。


彼はお客さんのように席に座りコーヒーを飲んでしました。


「あの。。」


私は聞こえるかどうかもわからない


小さな声で声をかけました。


彼はすぐに私に気がつき


ニコッと微笑みました。


「また来てくださったんですね。どうぞおすわりください。」


私はテーブルを挟んで彼の前に座りました。


「今日もコーヒーでよろしいですか?」


「あ、はい。今日は営業中ですか?」

「いえ、でも大丈夫ですよ。少しお待ちください」


彼はそういうとすぐに立ち上がり


キッチの方へ入って行きました。


もうすでに12時を回っているのに


営業していないということは


お休みの日なのだろうか。


聞きたいことはたくさんあるが


謎に包まれた彼にあれこれ聞く


勇気が私にはなさそうだ。


5分もしないうちに彼は


コーヒーを持って戻って来ました。


私の前にコーヒーを置くと


そのまま元の席に座りまた私に微笑みました。


こうやってまじまじと


彼の顔を見たのは初めてでしたので


何だか照れ臭かったです。


顔立ちのはっきりした彼は女性に


人気がありそうな綺麗な顔でした。


でも私はふと思ったのです。


誰かに似ている。


芸能人とかそういう意味ではなく、


昔の自分の知り合いのような、


どこかで会ったことがあるような


そんな感情が出て来ました。


私が頭の中でごちゃごちゃ考えてるうちに


彼が先に口を開きました。


「聞きたいことがきっとたくさんあるでしょう。」


「え?」


「休日のこんな時間にお客さんもいなければ


営業もしていないカフェなのにあなたにコーヒーを出して」


「あ、はい、今日は営業時間に


お邪魔しようと思ってネットで昨日調べたんですが、


ここの情報だけ何も出てこなくて...お店の名前もまだ知らないし」

「そうですね、ホームページも作ってないし、


ここに来たのはあなたが初めてだからネットには情報がありませんよ。」


「それならこれから開店する予定なのですか?」


「いえ、看板を見て入ってくださった方がお客様です。」


私は聞きたいことを聞いたのに


何一つスッキリしない答えにモヤモヤし始めました。


彼の顔を見ながら話していても


誰に似ているのかすら思い出せないし


彼の口から出てくる言葉はなかなか


不思議なことばかりだし。


「紗栄子さん、あなたは僕のこと覚えていないみたいですね。」


.....!?


なぜ私の名前を知っているんだろうか。


やはり前にどこかで会った人...?


「少しずつ話せば少しずつ思い出してくれると思いますが。


僕はあなたのこといまでも覚えています。あなたならここに来てくれると思っていました。僕はここであなたのことずっと待っていました。」


なぜか私の目からは涙がこぼれていた。


彼が誰なのかなにひとつわかっていないのに、


私の中で何かが目を冷ましたかのように


いきなりたくさんの涙がこぼれ落ちた。


彼は何も言わずに水色のハンカチを差し出してくれた。





不思議なことに私はその水色のハンカチを見て全てを思い出した。

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