プリンは食べました
吾等は一旦街へと戻ることとした。血風党のマーク付けて城へ近付けばいいんじゃん? といった意見もあったが、準備を整える意味でも帰還すべきというのが吾等の結論である。ここまで来て戻るだけで1日ほど時間を費やしてしまうこととなるが仕方がない。
「時間は貴重だ。人間にとってはな」
高貴なるエラドリンがそういうので、戻ることに納得する。
街に戻るや、吾等はセイハニーンを祀る月の光寺院へと向かった。密偵ソイジョイに縄をうち、
「きりきり歩け!」
何でか罪人扱いする。そうやって引きだされたソイジョイは、セイハニーンの司祭デスメトーに対し、吾等にしたのと同じ説明を繰り返した。同じ話しを聞く羽目になり、敬虔なるグエドベは大層めんどくさくなってしまったようだ。
「というわけで、あなたも我々と一緒に来るがいい」
アヴァンドラの使徒はセイハニーンの司祭を顎で使おうとする。
「死者を弔うのは僧侶の務めだ」
「いえ、私はこの寺院を守らねばなりませんし」
「よし、では私が代わりに守っておいてやろう。いってこい」
「事務仕事とかもあるんですが」
「うむ、わかった。やっとく」
高貴なるエラドリンは安く請け合うのだ。そうまでされては仕方がない。セイハニーンの司祭、
「行ってきまーす!」
帰ってこなかった。
嘘だった。
◆
セイハニーンの寺院を訪れた後、吾等は他にもたかれそうなところを巡ることとする。
「弟に会いに行こう」
高貴なるエラドリンに身内がいるとは初耳である。
「というわけで、領主の館へ行く」
いつの間にこの街の少年領主が高貴なるエラドリンの弟になったのか。
「領主を冒険に連れていく。強くなりたいようだったし」
また無茶なこと言いだしたよこの人。
でも、領主の館についてしまうのだった。
「今日はいかなるご用件で?」
侍従長のクラフト老がいつものように取次に出てくる。それに対し敬虔なるグエドベ、首を横に振るのだ。
「いや、俺は用ないから」
そして館の中へとずかずか入り込んでいく。
「冷蔵庫の中のものとかで勝手にやらせてもらうからお気遣いなく」
冷蔵庫開けてごそごそやりだすのでクラフトたまらず、
「そのプリンは私のなので手をつけぬように」
「人の家で失礼を働くものではない」
高貴なるエラドリンがそうたしなめる。
「ここはすでに第2の我が家なのだから」
「一体、皆さま方は何をしに来なさったのですか?」
クラフトがもっともなことを聞く。そこで、吾等は枯枝城の現状を説明するのであった。するとクラフト、思い煩う風である。
「……また死者が……? 一体どうして……?」
聞きたいのはこっちだ。
「……もしや……」
何か思い出したようだ。
「いえ、大したことではございません。ただ、昔の言い伝えの1つを思い出したのです。あの枯枝城は昔、オークの軍勢に襲われたことがあります。当時の枯枝城城主はその危機に際し、秘術を用いて城を護りました。が、結局は全てを失い、城を去ったというものです」
そのような話を以前にも聞いたような気はする。
「その城主の用いた秘術というのが死者を操り兵と為す、といった呪われた術であったとか。そして、その報いとして城主自らもアンデッドと化してしまったということで……あの城はそのような経緯から死者に所縁があるというか、死者を呼び寄せるのかもしれませぬな……」
「城を焼きつくすしかない」
高貴なるエラドリンが即断す。もしこの場に怜悧なるウィザードペンテルがいたとしたら、大いに賛同したであろう。火計大好きな男であるからだ。ちょっと今回、無口な男となってしまっているのが残念である。
「じゃあついて参れ」
高貴なるエラドリン、クラフトにそう命ず。
「いやです」
「ダイナマイト買っていこう! D&Dといえばダイナマイト!」
城を爆破せんと敬虔なるグエドベがそう言った。
そこへこの街の領主である少年ウィルが顔を出す。ウィルは吾等を見るなり破顔一笑、
「ようこそ! また冒険の話を聞かせてください」
聞けば、ウィルは強くなるために鍛錬を怠っていないという。
「どれ。どれだけ強くなったか試してやろう」
高貴なるエラドリンが乗り出した。
「こいつがな」
そして、敬虔なるグエドベに振るのだ。少年との試し試合を押しつけられたグエドベ、
「大人だから本気でいく」
敬虔なるグエドベの決意は固い。殺す気である。容赦ない。
「と、思ったけど何かを感じて後ろ向いて戦う」
グエドベの後ろにはロングソード構えた高貴なるエラドリンがいるだけだ。そして、グエドベは少年領主にそっと囁いた。
「……本当の敵はあいつだ……!」
真の敵を知らされたウィル、更なる強さの高みを目指すことに開眼す。
「よーし! 今度下民を連れてきて試し切りしてみます!」
高貴なるエラドリンの薫陶の賜物、順調に間違っている。
「よし。それは私が用意しよう」
高貴なるエラドリンがまた間違いを教えた。
「……弟に変なこと教えるな」
不機嫌そうな口調と顔つきで現れたのは領主の姉、ミリーであった。お前は呼んでない。
「あれだけ下品に騒いでたら誰だって気付くわよ」
「どうだ? 弟を見習っているか?」
高貴なるエラドリンのふんぞり返った態度を見て、ミリーは鼻で笑う。
「変わってないわねー。エルフだから進歩がないのね」
「エラドリンだ」
「ああ、もっと悪い」
ともかく、ウィルを冒険に連れ出そうとする吾等に向けて、ミリーは『二度と来るな!』と一喝。吾等はエメラルドを投げつけられ追い出されるのであった。




