争わぬ者
前回のあらすじ
なんかわざわざ敵のど真ん中にのこのこ乗り込んでみた。
◆
果たして、この者達を統率するミノタウロスとは以前吾等が橋上で相見えたドダイと名乗るミノタウロスであった。
「ほう? 貴様等も血風党に入ったのか?」
そう野太い声で語りかけられては正直に、
「はい。ドラウの人の紹介で」
ウソをつくしかない。
「して、どのような用件でこの地へ来たのだ?」
どうしよう? これ以上追い込まれる前に、ぶっちゃけるしかないのではないか。その前に、
「これは重要な話なので人払いをお願いしたい」
周りのならず者どもに話を聞かれてはいかんのである。すると、ならず者達の中に吾等を見知った者がいたらしい。
「……おい、あいつら、カランバをやった奴らじゃねえか?」
「何でそんな奴等が俺達の仲間になってんだよ?」
騒ぎ始めるではないか。やばす。
ここから技能チャレンジである。吾等は何とかこの場を切り抜けて村へと行かねばならぬ。というわけで、
「黙れ黙れおならぷー」
というはったりに対してならず者達は看破のロールで1を振り、
「そうか大事な話があるんじゃしょうがねーなー」
と、人払いに納得して本当にその場から立ち去ってしまうのだった。いいのか。
「……で、そのオークはわしの部隊の者なのだが、なぜ縛られておるのだ?」
ミノタウロスからの問いかけに吾等は成り行きを説明する。このオークが逃げ出した村人を襲っていたことも告げた。
「……ふむ。その者が勝手な行動をしていたのはわかった。仕置きはこちらでしておくので引き渡してもらおうか」
オークのまじない師はミノタウロスに預けられ、その場から下げられる。
「……で、だ。つまり、貴様等が血風党に入ったというのは偽りであるのだな?」
「うむ。それで村まで案内してくれ」
高貴なるエラドリンは少しも悪びれずに答えるのだ。ミノタウロスは笑ったようだった。
「なるほど。素晴らしいな。その勇気に免じてこの場は見逃してやろう。だが、村に入るというのなら、明日には我等と一戦交えることになる。それでも構わぬか?」
「無血開城させるためにも私達は村に行かねばならないのだ」
「ていうか、あなたも我々と一緒に村へ行こう! そして、明日の朝にはミノタウロスと一騎打ちして!」
何をどうすればそのような論理が組み立てられるか、今の吾には理解できない。未だ触れてはならぬ狂気の領域なのやも知れぬ。
「しかし、我等血風党のまっただ中に入り込んできて直談判とは見上げた根性だ」
「色々手違いがあってな」
敬虔なるグエドベが物憂げに言うのだ。さらに続けて、
「あなたは強さを求めているのでしょう? なら、いずれマガンテと戦うことはないのですか?」
「我が主は、道を失って彷徨っていたわしを拾ってくださった方だ。大恩がある」
「ていうか、マガンテって何者? どんな奴? 人間? ビホルダー?」
ミノタウロスの話によると、血風党の首領は常にローブを着こんでおり、その正体は誰も知らぬのだという。
最後に、
「率直に言って、あなたの力が必要だ。平和のために」
ミノタウロスを調略せんとする吾等。それに対し、
「その言葉こそ、マガンテ様がわしに言ってくださった言葉だ」
彼はこう答えるのみであった。
◆
血風党のならず者達から逃れて、吾等は白菊村へと入る。夜中というのに警備兵が寝ずの番をしているのも、この緊迫した状況なら当然か。吾等は街から来た事を警備兵に伝えた。
「この村を助けにきてくださったのですね! どうぞ、村長のところへご案内します!」
早速歓迎の宴でも開いてくれるのかと思ったら、そんなわけないのであった。村長宅では、老人と中年の男性が深刻そうな顔を突き合わせている。その彼等が吾等を見て、一瞬表情を明るくした。
「おお! 遂に援軍が……!」
「……あなた方だけですか?」
「大丈夫、町長がこの後援軍を100万人くらい送ってくれるはずだ」
高貴なるエラドリンはそこにいる2人、すなわち村長と警備隊長を勇壮なる言葉で鼓舞するのだった。
吾等は村の状況を村長達から聞くこととする。
「村は今ばらばらです。わしらは少しでも村の防備を固めて備えたいのですが、人手が足りません。あのならず者どもに降伏しようという連中は寺院に集まって祈るばかりで手を貸そうとせんのです。降伏したところで奴等に利用されるだけなのに……」
「そもそも、降伏したら命は助けるというのが信じられん。あいつらを村に入れたが最後、わたし達は略奪され、皆殺しにされるかもしれない。なのに、あの寺の神官はならず者達の言うことをバカみたいに信用して……」
この白菊村にはアヴァンドラの寺院があり、そこの神官が降伏するように村人を説得しているのだという。アヴァンドラといえば勇気と自由の女神であるはずだ。それがそのようなことを言い出すとは不可解なり。
「勇気を持って敵を受け入れよう。我々には戦わぬ自由がある、とか申しまして……」
その神官による教義の解釈の仕方は高貴なるエラドリンには受け入れられぬものであったようだ。
「それは間違っている!」
吾等は非戦派の集うという、アヴァンドラの寺院へと向かうのだった。
それは石造りの建物で、中からの人々の祈りの声は途切れることがない。
「ばーん! と寺院の中に殴りこむ」
「すると、寺院の中には罠があって、しかも中の連中が槍持って1列目、2列目、順番にヤー! って」
「やる気満々だな、非戦派」
というようなことを警戒しつつ中を見れば、白装束の男を中心に人々が跪き、祈りをささげている。あの白装束こそがここの中心である神官であろう。
「なんですかあなた方は! 神の御許で不躾な!」
「お前は間違っている!」
ここから技能チャレンジである。
「何故そんなに戦いを避けようとする? もしかして、お前血風党の人間じゃないのか?」
「なんと失敬な!」
どうもこの言葉に神官は態度を硬化したようであった。看破のロールを振ってみても、この神官はただ純粋に、戦いは避けねばならぬもの、と信じ切っているように思えるのだ。
「ここは我々の村です。我々の道は我々が決めます。それをよそ者であるあなた方は土足で踏みにじっている!」
「正義なき力は暴力、力無き正義は無力なり、というぞ」
「戦いは何があっても避けねばなりません! 憎しみは何も生みません!」
その言葉を受けて、敬虔なるグエドベは神官を鷲掴みにするのだ。
「いいから、そんなこというなら今すぐ降伏して来い! 村から出て、奴等のところに行けよ! ここはセイハニーンの寺院にする」
そして、寺院から神官を引きずりだすではないか。
「神官様に何をするんだ!?」
村人たちが声を荒げるが、神官はそれを制するのだ。
「手を出してはならない! 悪魔の言葉に耳を傾けてはいけない! 彼等は私達を戦いに巻き込んで、自らの名誉や私欲を満たそうとしているだけだ!」
「戦わなきゃ何も守れないだろ」
「戦うから失うのです」
「抵抗しなければ助かるって、でも、村から逃げ出した家族は襲われてたぞ?」
村人たちの間に動揺が走るのだ。
「それってサモンの家の連中のことか?」
神官は声を張り上げた。
「信じてはいけない! 彼等は私達を惑わして、戦いを強要しようとしている」
「……俺達の言うことは信じられなくて、何で血風党の言うことは信じられるんだ? 降伏したら助かる? どうしてそれが信じられる?」
すると、村人達は顔を見合わせる。そして、
「だって、聞いたんだ。奴等に逆らったら皆殺しにされるって。でも、奴等は降伏した村には手を出さないんだそうだ。だから、おれたちは戦わずに済まそうと……」
「誰がそんなことを言った?」
「旅の男だよ。そうやって滅ぼされた村を幾つも見てきた、ひどい有様だったって、おれたちにいっぱい話してくれたよ」
高貴なるエラドリンと敬虔なるグエドベは視線を交わすのだ。
「……そいつはどこにいる?」
「酒場だよ。村の酒場にいるはずだ」
少なくとも、ここで神官と言い合っていても埒が明かぬ。頑なな神官は、梃子でも心を動かすものか、と決意しているかのようであった。意固地になっているのであろう。これでは話し合いにならない。
吾等はこの村の酒場、ひづめ亭へと急いだ。そこで飲んだくれているエルフの男を見出す。
「……あんた、血風党のことに詳しいみたいだな?」
「ああ? 何だ、話が聞きたいのか? いいとも、幾らでも話してやろう」
エルフの飲んだくれは血風党の恐ろしさを滔々と語り出すのだ。
「……あれを見て俺は思ったね。奴らには決して逆らっちゃいけねえ。ひでえ有様の村を幾つも見てきたよ。でも、抵抗しなかった村には奴らも手を出さないんだ。命あっての物だねだろう? 抵抗せずに平和に済ますのが一番だ。そうすりゃ家族も守れる」
「ふうん……。あれ? こんなところに赤い髑髏のマークが落ちてる」
「え? うそ?」
と、飲んだくれのエルフは自らのポケットや服の中をまさぐり、何やら確認しだすではないか。そして、
「ウソだろ!? 承太郎!?」
何を言っているのかよくわからぬが、その仕草で明らかだ。
「お前、血風党員だろ!」
「わー」
怪しいから。という理由だけで吾等はその飲んだくれエルフをとっ捕まえるのだった。そして、その身を確かめれば、果たして赤い髑髏のマーク、すなわち血風党のシンボルの入った指輪が出てくるではないか。吾等は、おらおら、と剣で迫ることとした。それで飲んだくれのエルフは大変素直になる。
「わ、わかった! 全部話すから命だけは助けてくれ。俺は確かに血風党の者だ。この村を戦わずに降伏させるのが俺の任務だ。さっきのはそのために流してた噂さ。でも、俺は命令されてやっただけなんだ」
「噂を流すように命令したのって、あのミノタウロスか?」
「あんな筋肉バカにこんなこと考える知恵があるかよ。俺に命じたのはショックっていう、別の隊長さ」
また知らん名前が出てきたのである。シナリオとしてまとまりがないのではないか。
「……なんと……わたし達は踊らされていただけだというのか……」
事の真相を知ったアヴァンドラの神官は天を仰ぐ。それに対して、
「踊らされていた、というより祈らされていたんだろう」
敬虔なるグエドベが訂正した。
こうして、白菊村内部での分裂は一応避けられたようである。あとは一丸となって、血風党の脅威に対抗するのみ。さて、いかにして彼奴等に対抗すべきか? 村で迎え撃つのか、一騎討ちに応じるか。はたまたやっぱり血風党にもろ手を挙げて下るのか。
それは次回に続く。
◆
オーガの蛮族(経験値350)×1=350
オークのグルームシュの眼(経験値200)×1=200
オークの遊撃兵(経験値150)×2=300
オークの下っ端(経験値44)×4=176
技能チャレンジ
血風党を突破して村へ(難易度3:450)
村の住民を説得する(難易度3:450)
クエスト(村の分裂を防ぐ)達成による経験値600。
1人当たりの経験値は631。




