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騒乱の街

前回までのあらすじ


 今こそ一丸となれ!

 一丸ブーム到来。

 一丸君人形、売れ売れ。


  ◆


 吾等はドラゴンの躯をセイハニーンの寺院に預けて町長の元へと向かうこととした。

「これ保存しといて」

「いいっすよ」

「寺院に飾っとくといいよ。かっこいいから。でも腐ったら弁償な」

「いいっすよいいっすよ」

 なんだか見も知らぬ寺院の人に安請け合いされる。

 さて、町長の屋敷の前では多くの人々が集まって口々に叫んでいるではないか。その全てが攻撃色に満ちていた。

「町長に責任を取らせるんじゃ!」

 吾等は、その中に一際声の大きいドワーフ軍曹の姿を見る。聴衆を扇動するかのように、

「これまでの横暴の報いを受けさせろ!」

 吾等の胸に去来するもの、それは違和感である。皆、踊らされているのではないか。今街の中の者達が相争うことで笑うのは血風党の者どもであろう。

 吾等は件のドワーフに近づく。

「おお、お前さん達も来たか! 今こそわしらと共に町長の屋敷に乗り込もう! この場に引きずり出すんじゃ」

「まあ待て」

 吾等は狂熱する軍曹を諌めんとするのだった。

「今このようなことをするのは早計かもしれぬ。裏でこうなるよう画策した奴等がいるかもしれぬのだ」

「何じゃと? お前ら、町長の味方をする気か!?」

 と、最初はいきり立っていたドワーフも、

「確かにその怒りはわかる。人を搾取するような奴は最低です」

「それ、グエドベとおエラドリンとの関係でずっとそうなんだけど……」

「また誤解があるようだ。一体どうしたらグエドベを善の道に戻せるのか……。アヴァンドラー! そうか! 転生ですかー!」(グエドベの首を切り落とさんと二刀を振るう)

 といった天啓を受けし高貴なるエラドリンらの説得により、次第に気持ちを落ち着かせたようである。

 具体的に言うとドワーフを説得するという技能チャレンジに成功した。

「……ふうむ……お前さん達の言うことにも一理あるわい。ここで騒いでいても何もならん。ここは町長と話し合うべきじゃろうな」

 ドワーフ軍曹が落ち着いたこともあり、その場にいた人々も我を取り戻したようである。不安なざわめきや眼差しは変わらぬが、少なくとも狂熱は引いた。

「町長から事後の対応策を聞きたいところじゃ」

 そのようなドワーフの言葉を受けつつ、吾等は町長に面会を求める。そして、ドラゴン殺しの名はここでも吾等について回るのだ。

「あ、あの噂の。どうぞ、中へ」

 そうして通されたは町長の執務室。そこでは部下に指示を下したり叱り飛ばしている町長、ジャミガンの姿があった。

「君達か。何の用だね。見ての通り、今取りこんでいるのだが」

 横柄そうな態度に、

「この街の状況はどうなっているのかね?」

 高貴なるエラドリンは上から目線で尋ねるのだ。町長ジャミガンは肩をすくめる。

「外を見ればわかるだろう。騒乱状態だ」

「血風党が実際に商人を襲ったりして被害が出たからね。それを放置して、今まで何してたんすか?」

「私には何の報告も上がってこなかったのだ。血風党の脅威を知らせるような報告は何一つ」

「それはあなたが無能だってことでよろしいか」

「ああ、そうかもしれんな。ただ、無能で報告が上がってこなかったのならまだいいが……どうも、意図的に情報を隠ぺいしていたフシもある。私の部下の一部は何者かから買収されていたようだ」

 やはり何か画策している者達がいるのだ。

 と、そこへ急使が飛び込んでくるではないか。

「血風党を名乗るならず者達が西にある村々を襲っているそうです! 支給援軍を!」

「何だと! こんなときに……!」

 そう呻く町長ジャミガンに対し、

「こんなときだからこそ、では?」

 この街の西には3つの村があり、その内の1つで街から一番近いところにある白菊村に血風党が現れたというのだ。

「それを率いているのは牛頭の怪物で……一騎打ちを求めているそうです」

「一騎討ち?」

「勇者を選んで自分と戦わせろ、と。自分に勝ったらならず者達は手を引く。だが負けたら村を寄こせ、抵抗せず降伏しろ、と」

 吾等に視線が集まるのだ。町長の厳かな声。

「ドラゴン殺しがここにいる」

「いや、無理だ。もし、その牛頭の怪物が私達の知っている者なら、絶対今の我々では勝てない」

 高貴なるエラドリンは自信を持って言うのだ。清々しさすら漂う。

 だが、町長ジャミガンは諦めぬ。吾等に頼み込んできた。

「この街の騒乱で、衛兵隊を村々に遣わせる余裕はない。だが、このまま白菊村を見殺しにもできん。どうか君達に頼みたい」

「こういう時こそ一丸となって! 衛兵隊とかと全員一丸となって西の村に行こう」

 心は一つ、他はバラバラ。

 吾等がそう提案するも、

「そうやって、この街から衛兵を遠ざけようという陽動かもしれん。今は街の治安を守るためにも衛兵隊を割くわけにはいかんのだ」

 町長ジャミガンはその案を退けるのだ、ならばと、

「では当初からの目的通り、血風党の親玉マガンテに会いに行こうか?」

「王都から手練れを連れてくる旅に出るというのは?」

「拠点を西の村に移そう!」

「病気のふりして寝てるデスメトーを起こして、彼にやらせるのはどうか?」

 吾等は全力で牛頭の怪物と戦うことを回避しようと試みた。が、結局のところ、

「一騎討ち。とはいえ、私達の心は一つだし、こういう時こそ一丸となって!」

 全員でかかれば、何とかなるのではないかと心を慰めるほかない。

「いや、戦わなくてもあのミノタウロスだったら話し合いで何とかなるかも。甘チャンなところあるし」

 そのような希望的観測にも縋る。

 ともあれ吾等は善なる一党である。危機に陥った村を見捨てるわけもなし。善を為す喜びこそあれ、それを忌避するなどあり得ぬことだ。そういうわけで町長のジャミガンは白菊村を救う報酬として吾等1人につき金貨100枚を約束したが、ちょっと少ないのではないか。

 と、外で再び声が上がり始めるのだ。西の村が襲われていることが人々に伝わったのだろうか。不満と怒りに満ちた声で、

「町長を出せ!」

 と合唱している。先程まで収まっていたのに、何があったのか。

「……扇動している者がいるのでは?」

 吾等は屋敷の外へ出てその考えを確かめんとす。

 屋敷の前の人々は再び騒ぎだしていた。もうおしまいだ! 戦いが始まるらしいぞ! 逆らった村は皆殺しになったそうだ! そんな言葉が交わされている。

「町長に責任を取らせろ!」

 再びそのような声が上がるのだ。

「奴を差し出して恭順すれば、命までは取られないぞ!」

 吾等は怯えに駆られた聴衆を鎮めんとす。

「今は街の者が争っている場合ではない! 今こそ一丸……」

「よそ者が何言ってやがる!」

「あいつら町長の味方だ! 金で雇われてやがるんだ!」

 高貴なるエラドリン、指差して曰く、

「お前とお前! 帰って良し!」

 義務教育じゃねえんだ、であった。とにかく、野次がひどいのである。高貴なるエラドリンが聴衆の心に隙間を作るために軽業によるアクロバットを見せるなど、懸命の説得工作により何とか騒動を収めることができたのは僥倖というものであろう。

「……まあ、あのドラゴン殺しが言うことだから……」

 といった様相で、人々は三々五々散り始める。

 吾等はその中の幾人かに目星をつけていた。積極的に野次を飛ばし、扇動せんと試みていたように思える者達である。

 吾等は分散して、それぞれ怪しき者どもを追った。あれ? これ、下手したら危ないんじゃないかな? と思わないでもなかったが個別に追ってしまったものは仕方がない。

 怜悧なるペンテルが追った男はうらぶれた酒場に入り、管を巻き始める。と、ふらりと現れた別の男と何やら密談したあと、舌打ちして別れるのだった。

 高貴なるエラドリンが追った男はどこか見知った道を行く。影に隠れながらの追跡は、この街の地下水道まで続いた。男は地下水道の更に奥へと消えるのだ。高貴なるエラドリンはその先まで追うこと叶わない。見失ってしまう。だが、それでよかったのかもしれぬ。さすがに1人でこの先追い続けるのは危険であっただろうからだ。

 敬虔なるグエドベが追った男はボロ屋の集まったせせこましい通りに行く。そして、どうやら自宅へと戻ってしまったようだった。グエドベは辺りにいた物乞いから話を聞こうとするも、

「お恵みを……」

 一回蹴ってから、

「質問に答えろ。あの家に住む男は何者だ?」

 セイハニーンもご照覧あれ。これこそ月と愛と欺きの神の教えに忠実なる者である。

 交渉の末、物乞いは金貨1枚くれれば全て話すという。

「よし、じゃあ先に話せ」

「そんなこと言って、話だけ聞いて金をくれないんじゃないだろうな?」

「俺がお前を疑ってんだ。お前が俺を疑うな」

 物乞いはそれで納得し、全てを話すのだった。いいのか。

 曰く、この家に住む男は最近働きもしないのに金回りがよく、むかつく限りだ、と。

「話したぜ。じゃあ、もらってくからな」

 物乞いは金貨を攫うように掴むと駆けだして行ってしまう。

「もう一枚やるけど……」

「それを早く言え」

 と、戻ってきたところをガーンと一発。敬虔なるグエドベは無事金貨を回収するのだった。なんてことはさすがにしないのであった。

 ともかく吾等はそれらの話を突き合わせる。

「金もらっているというのは、多分血風党からだろうな」

「工作員が入り込んでるのは間違いなさそうだ」

「とにかく、街のことは町長がやるって言ってたから任せておこうか」

 あれ? 武と誇りを重んじるへカチンは? ヘカチンは皆が追い掛けてる間、何してたの? などという疑問は置き去りにして、吾等はいよいよ白菊村を救いに向かうのだった。


  ◆


 向かう前に、なぜか領主の館に向かうのだった。

 吾等は領主である少年、ウィルに面会を請うた。と、ウィルは吾等のドラゴン殺しのことを聞き及んでいたらしい。是非にと話をせがんでくるのである。

「ドラゴンを倒したのでしょう? すごいすごい!」

 目を輝かせてくるのだ。

「どうやってドラゴンを倒したのですか?」

「それは吾等一丸となってだな」

「悪が栄えた試しなし、ということだ」

「じゃあ、俺達も短いな」

 領主ウィルは溜め息をつく。

「どうして、そんなに強いのですか? 僕にもそんな力があれば……この街を守れるのに。僕は強くなりたいんです」

「私は特に力を持っているわけではない。ただ、心を強く持っているだけだ。……良いこと言っちゃったよ」

 高貴なるエラドリンは自画自賛した。

「ところで、僕に何の用です?」

「領主としての私兵を100人ばかり貸せ」

 心強きエラドリンは強く言った。

 そんなものはいないということであった。

「でも、その白菊村を救いに行くのでしょう? ……なら、僕が行きます!」

 さすがに無茶であるので丁重にお断りする。手勢を借りようという目論見は外れたものの、吾等は領主の姉であるミリーにも面会する。

「……何しに来たの?」

 彼女はいつの間にか領主の館に戻っていたらしい。このような騒ぎで結婚話が立ち消えになったからであろう。吾等はこれから人々を救うために白菊村へと向かうことを彼女に訴え、

「ひいてはエメラルドでもくれ」

「なんで? バカじゃないの? まあ、勝手に行って死んで来れば?」

 とミリーは言いつつ、エメラルドを3個ばかり投げつけてくるのだった。

「よし。会えば金とかくれると思ったんだ」

 こうして資金を集めた吾等は、これで装備を整えて白菊村へと向かうこととする。以下次回。


  ◆


 ちなみに冒頭、セイハニーンの寺院に預けたドラゴンの躯だが、後日受け取りに行くとそんなものは預かっていないと言われてしまった。いや、なんか調子のいい兄ちゃんが絶対安全に保管する、何かあったら百億兆ゴールド賠償金払うと約束していたと詰め寄ったのだが、そんな兄ちゃん、信徒にいないということであった。普通に詐欺られてドラゴン素材盗まれてた。善良にして世界の平穏を願ってやまない吾等を欺すとは何と悪辣なごろつきであろうか。世も末である。


  ◆


技能チャレンジ

ドワーフの軍曹を説得する(複雑度2:経験値300)

群衆を鎮める(複雑度3:経験値450)

扇動者を追う(複雑度3:経験値450)


1人当たりの経験値は300。


手に入れた財宝等

デスメトーより金貨100枚

ミリーよりエメラルド3個


 この日は一度も戦闘ないまま終了。

 ちょっと戦闘まで行う時間が足りなかったので、少し早めに上がりました。

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