白き主~裏切りの報酬~後編
前回までのあらすじ
そは永久に横たわる死者にあらねど
測り知れざる永劫のもとに死を超ゆるもの
ああ!? 窓の外に! 窓の外に!
◆
よく考えたら、先のコボルド達との戦いの際、ペンテルがコボルド達から狙われて結構な手傷を負っていたような気がするのであった。最早コボルドなど吾等の脅威ではない、とか勢いで言ってしまったが、ほんとは今でも十分脅威であった。
それはともかく。
小屋の外に明らかに何かいるのである。
「なんかやばいのが外に居るからとりあえず全部貸せ。後で返すから」
と、吾等は商人達から魔法の品々を借り受けようとするも、
「でも、一つしか装備できる時間はないですよ」
聞かれてもいないのに、捕まえたコボルドが余計なことを言うのだ。
「そうか。わかった。だが、私の気を鎮めるために貴様は死ね」
「ぎゃー」
雉も鳴かずば撃たれまい。
吾等は手に手に新たな装備を持ち、小屋の外へと飛び出す。
高貴なるエラドリンが手にせしは『クイックヒット・ブレイサーズ』。2刀使いがそれを腕にはめるとより強く速い打撃を与えるという。
敬虔なるグエドベが選びしは『メディックス・メイス』。神より出でし力で自らを満たす時、味方を回復させるという魔法の武器なり。
怜悧なるペンテルが新たに身に纏いしは『ストーンスキン・ローブ』。この灰色のローブはペンテルの体を石のように硬くするであろう。
戦闘指揮官カランバは『ゴーグルズ・オブ・オーラ・サイト』を付けている。敵の残り体力などを計ることができる補助的装備である。
そして、吾へカチンが手に取ったのは、やはり『ライフドリンカー』であった。敵を1人倒すごとにその命を吾が物とする。まったくもって善の戦士にふさわしいではないか。
こうしてさらに新たな力を手にした吾等の前に立ちはだかるは、やはりというか、白き竜であった。小屋の前に降り立つその姿は禍々しい。酷薄な眼差しを吾等に下ろしてくる。
「よくもわしのおもちゃ達を壊してくれたのう?」
白き竜は吾等に問うように首を傾げて見せる。
「だが、貴様等に壊されるようなら所詮それまでのおもちゃに過ぎなかったということ。奴らが不甲斐なかっただけじゃ。貴様等は許してやらんでもない」
なかなかに話のわかる奴である。
「貴様等がわしの新たなおもちゃとなるなら、許してやろう」
俄然雲行きが怪しいのである。
「もちろん、それに見合うだけの物は与えよう」
なかなかに話のわかる奴である。
「わしはこの森を完全に手に入れるつもりじゃ。貴様等にはその先兵となってもらう」
「ということは、この森にはまだあなたにまつろわぬ者がいるのですか?」
「うむ、森の奥に住むアウルベアがのう。どうにも目ざわりじゃ。おもちゃどもをけし掛けて打ち倒してくれんと思うておったのじゃが」
「なんだこいつ、アウルベアにも勝てないの? 大したことないじゃん!」
吾はアウルベアがどのような怪物であるか知らないが、大したことないらしい。
「この竜、大きさも2×2マスだし、弱いんじゃね?」
「そろそろ、やろうか?」
「そういうの良くないよ!」
高貴なるエラドリンが善なる者らしいところを見せる。やはり、騙し討ちのように襲いかかるなど、高貴なる心が許さぬのであろう。
高貴なるエラドリンは白き竜に尋ねるのだ。
「ところで、あなたはアヴァンドラを信じていますか?」
「? 何じゃ?」
「ノーーーーーーン!!」
高貴なるエラドリンは絶叫し刃を抜いた。善なる神を信じぬとは不敬きわまりない。紛うことなき邪悪。そして邪悪は滅ぼさねばならぬ。大義名分もたったところで攻撃である。善なる者は大義がなければ暴力を肯定できないので大変なのだ。
竜と話している間に、こっそり挟撃できる位置に移動している吾等。ペンテルだけは森に潜み遠距離から魔法を撃てる態勢である。ほとんど万全と言えた。だが、それがまずかった。
「貴様等! わしを愚弄するか!」
白き竜が猛々しく吠えたのだ。その声は轟雷のように吾等を打つ。その響きだけで打ち倒されそうだ。白き竜の傍にいた吾等は皆、武器を取り落としそうになるくらい動揺す。
そんな取り乱したる吾等に対し、白き竜は続けて凍てつく息吹を浴びせてくるのだ。凍えてしまう。足は萎え、腕にも力が入らぬ。
皆がほとんど行動不能状態である。白き竜の咆哮の範囲内に皆が入ってしまっていたためだ。その間に、さらに白き竜はその忌まわしい鉤爪で吾等を引き裂かんとしてきた。
それに耐え、ようやく我を取り戻した吾等。だが、高貴なるエラドリンは未だ凍えてその力をうまく扱えぬ。下世話な言い方をすればセービングスローに中々成功しない。
その傍らで敬虔なるグエドベがやけに気合を入れてセービングスローのサイコロを振っているのだ。
「ここで20の目が出れば、セイハニーンの呪詛返しで……」
自分が受けていた状態異常を敵に返してしまうという恐るべき技である。もっとも、20の目は出ず普通に成功してしまったが。
そういえば、先程見た魔法の鎧の中にセービングスローの値を20にする特殊効果のあるものがあった。これとセイハニーンの呪詛返しを組み合わせたら強力なコンボ完成ということになるのだろうか。たとえば瀕死状態の時の生存セービングスローでこれを発動したら、どんな強力な敵も一撃で瀕死に? いきなりザラキ状態? 夢は広がるのであるが、今は目の前の現実をよく見るべきであろう。
というわけで、戦闘指揮官カランバが新たに手に入れたゴーグルで白き竜を見る。
「ドラゴンのヒットポイントは……100……120……バカな!? まだ上がるだと!?」 ボンッ。
スカウターは200を差したところで壊れてしまうのだった。
「よし! 先兵になろう!」
「今更遅いわ! 震えて死ね!」
白き竜がもっともなことを言った。
◆
白き竜が再び凍てつく息吹を吹きかけてくる。敬虔なるグエドベがその傷を癒し、怜悧なるペンテルは森に紛れつつ光の矢を放つ。高貴なるエラドリンの両の刃は白き竜の鱗に弾かれ、吾はライフドリンカーを振るう。
そして、決定的な一撃が加えられた。
「我に続け!」
戦闘指揮官カランバの雄叫びとその一撃に、吾等は奮い立つ。吾等の剣はその切れ味を増し、白き竜へと放たれる魔力の輝きは一層強いものとなったようだ。さすが戦闘指揮官である。その力は味方を鼓舞し、戦いの行く末を定めた。
吾等の剣が、魔法が、面白いように当たる。
白き竜としては吾等が態勢を立て直す前、朦朧状態である間に、回復役であるグエドベか大きなダメージを与えてくるエラドリンを倒しておくべきであったろう。だが、それも叶わず、しかも戦闘指揮官カランバによる支援攻撃まで受けたとなっては為す術なし。
「死ねぇ!」
その鉤爪が遂に敬虔なるグエドベを引き裂くも、時すでに遅しである。
怜悧なるペンテルがすぐさま森から駆け出でた。ペンテルはグエドベの元へと疾走し、ヒーリングポーションでその命をつなぎとめたのだ。
そして最後を決めたのは戦闘指揮官カランバの一撃。その鋭い剣先に白き竜の首は引き裂かれた。音たてて崩れ落ちる白き竜。
「あれ? 勝ったの?」
ヒットポイント200もあった割には呆気ないくらいの最期である。なんかヒットポイントの残りがこのくらいになったらあーしようこーしようなどと想定していたもののすっかり忘れていたとかそういうのはないのである。うまいことカランバに話を持ちかけようとか企んでたり全然してなかったのである。そんなことはちっとも狙ってなかった。だから全然悔いはない。くそう。
◆
吾等はとうとう暗がり森に巣食う白き竜を倒した。竜殺しである。
「よし、とりあえず街に帰ろう」
吾等は商人達とその積荷と共に街へと戻ることにした。が、戦闘指揮官カランバが難しい顔をする。
「一旦ここで休憩しないか?」
確かにもう余力はない。街に戻るまでの間に何かに襲われたら事であろう。しかし……、
「こんな森の中で休憩取ってたら、危なくね?」
「大丈夫。いいから休憩しよう」
さ、妙においしいよ? ぎらり、と目を光らせて戦闘指揮官カランバは酒を勧めてくるような勢いだ。
そうかそうか、それももっともである。と吾等はここで休憩を取り、見張り番を立てて眠りにつくのであった。なんてことは一切しないのであった。
「では、仕方がない。もうどうにでもなーれ」
と、戦闘指揮官カランバはやにわに懐からワンドを取りだすではないか。それをピロリロリンと振るう。七色の光があふれ出て吾等を幻惑した。
「おい、いつまでも何やってやがる?」
そんな声がする。見れば、見知らぬ男達が森の奥から吾等を窺っているではないか。カランバの顔色が変わった。
「お、お前達は……! ここは俺に任されていたはず……!」
「遅すぎたんだよ、おめえは! 隊長はえらくご立腹だぜ?」
「ま、待て! 今すぐに……」
商人達が叫んだ。
「ああ!? あの男達は私どもが護衛に雇っていた傭兵!? 私達をコボルドに差し出したあと逃げ出したはず……!」
ということは血風党? まさかカランバは血風党の一員……!?
「さあ、その腰につけているゴッドクロスのパーツを寄こせ!」
戦闘指揮官カランバは高貴なるエラドリンに告げるのだ。
「それを欲しがっている方がいる」
「あなたを信じていたのに」
高貴なるエラドリンは大変傷ついたようである。戦闘指揮官カランバがここで休憩を取ろうと言った際、高貴なるエラドリンは「トランス状態で休憩中は周囲の状況見えてるんだよね? 何かあっても気づくよね?」と確認するくらいカランバのことを信用していたのだからひとしおであろう。
とにかく、ここにきて敵が大勢現れたわけで大ピンチである。と、吾等が逡巡している間に、カランバは力づくで高貴なるエラドリンからゴッドクロスのパーツを取り上げた。
「これでクエスト達成だ!」
そこで幻惑の効果が切れた。
突然現れた男達はまるで青春の日の幻影のように姿を消す。全ては我等を惑わす為の幻。残されしは戦闘指揮官カランバのみである。
「ロープでぐるぐる巻きにフン縛る」
「にょー」
戦闘指揮官カランバ呆気なくお縄につくのであった。
「ドラゴンを倒すという第1目標を達成し、しかもゴッドクロスのパーツを奪取するという第2目標まで達成したのだ。もう悔いはない」
とりあえず、一回手に入れればそれでカランバ的にはOKだったらしい。
「さっき隊長がどうとかいっていたな? そいつの名前は?」
「私も血風党のはしくれ! 言えん!」
決して、まだ名前を決めていなかったからではないのである。
「潔く終わろう」
かちり、という硬質な音。
戦闘指揮官カランバは奥歯をかみ砕き、仕込んでおいた砂糖水を飲んで自害して果てるのであった。
しかし、カランバが血風党だとしたら白き竜との同盟を望んでいたのではないのか? それがなぜドラゴン殺しを?
なんだかよくわからないままカランバが自害して関西方面へ帰ってしまったので、吾等はもやもやしたものを抱えつつ次回へ続く。
◆
雑魚コボルド(経験値25)×3=75。
コボルドの遊撃兵(経験値100)×1=100。
竜鱗盾のコボルド(経験値125)×1=125。
コボルドのスリング兵(経験値100)×1=100。
雑魚コボルド(経験値25)×6=150。
コボルドの遊撃兵(経験値100)×2=200。
竜鱗盾のコボルド(経験値125)×2=250。
コボルドのスリング兵(経験値100)×2=200。
コボルドの腕きき剣士(経験値175)×1=175。
落とし穴(経験値100)×2=200
ヤングホワイトドラゴン(経験値750)×1=750
クエスト(商人解放)達成による経験値750。
1人当たりの経験値は615。
手に入れた財宝等
商人達より、クイックヒット・ブレイサーズ、メディックス・メイス、ストーンスキン・ローブ、ライフドリンカー・ロングソード+1
ドラゴン&コボルド達の隠し金、金貨100枚、真珠3個
◆
〈補足〉
ピッコリトリコッピトンデケタンダケさん(カランバプレイヤー)への無茶ぶりのお便り要約
~略~
というわけでピッコリさんにお願いしたいことがあります。
今回、ピッコリさんにプレイしてもらうゲストキャラについてです。
今回限りのキャラですし死んでください。もしくは憎たらしく逃げてください。
ゲストキャラは表向き普通の冒険者ですが、その実は血風党に雇われている傭兵隊の一員です。
ゲストキャラはマガンテのためではなく、この傭兵隊長のために動いています。
ゲストキャラが傭兵隊長から受けた使命は2つあります。
まず1つ目の使命は血風党と暗がり森のドラゴンの同盟阻止です。その理由は~略~
ゲストキャラは暗がり森のドラゴン(&それに従うコボルド達)を倒すことでその目的を達成できると考えました。
丁度、ドラゴンを退治に来た冒険者達がいるようなので、彼等に協力することにしましょう。
そして使命の2つ目。
それはゴッドクロスのパーツを手に入れることです。その理由は~略~
そんなゲストキャラの元へインプが現れて囁きました。あそこにいるエラドリンがゴッドクロスのパーツを持っている、と。
以上のことを踏まえて、ゲストキャラを動かしてくださるとありがたいです。
高貴なるエラドリンからゴッドクロスのパーツをスリとるか、倒して気絶状態にしてから強奪するか、パーティ内の誰かを人質に取るか、そこら辺はピッコリさんのアイディア次第で。
パーティを全滅させかねない、かなり難しい役どころですがきっとピッコリさんなら大丈夫!
あと、ゲストキャラは隠し玉として一回だけ使える魔法のワンドを持っています。色々な閃光を発して相手を幻惑状態にするカラースプレーという魔法を使用できるワンドです。いざというときはこれを使用してください。
もちろん、これらに拘束される必要はありません。
普通にプレイヤーキャラ達と協力してドラゴンを倒したところで終了してもいいと思います。
何かいろいろ突っ込まれたらピッコリさんのアドリブで切り抜けて!




