会談崩壊ともう1人の乱入者
「そもそも今回の事件については、我が国も被害者です!!」
「それは是非とも詳しく聞きたいですな。」
T国国家主席、周孔明が当たり前のように仲介する。
「なるほど、李氏を招いたのはあなたでしたか、周国家主席。」
笑顔の裏で眼光を鋭くするレオナルド。
「…まあ同じ画面に映っている時点で今更否定する気はないですが、しかしNSK国の言い分も聞いてみるのもアリだと思いますよ?」
「…そこまで言うなら聞いてみましょう。議長、よろしいですね?」
「うむ。では李統合元首、発言を許可します。」
「ありがとうございます。それでは…」
NSK国統合元首、李重安。
NK国とSK国に分かれたK国の中立レジスタンスによって祭り上げられた、旧K王朝最後の末裔とされる人物。
13歳の少年でありながらその圧倒的カリスマ性でNK・SK両国政府を"無血開城"させたと言われている。
ただし『防衛のため』と称し、無許可で核兵器を保有している、中々侮れない人物でもある。
「今回、日本中の公共電波やコンピューターがジャックされている間、我が国に対してもハッキング行為がありました。」
その言葉に、各国首脳たちはざわついた。
「そして全ての中距離核ミサイルが勝手に発射され、恐らく日本に向けて飛翔したと思われます。」
「質問ですが、何故最後の方について、ミサイルの行方が曖昧なのでしょうか?」
「それは、日本上空に差し掛かる直前に、ミサイルがレーダーから消失し、行方不明となったからです。」
G国のペンドラゴン首相の発言に対して李氏が答えた。
続けて、
「それは私よりも皆さんの方がお詳しいと思うのですが、違いますか?」
少年らしい無邪気な笑顔とは裏腹に、大勢の首脳相手にケンカを売るかの如く毒を吐いた。
「…たしかに、我がA国のレーダーからも突然消失しました。G国だけでなく、世界中のレーダーから消失したのではないでしょうか?」
一触即発ムードを無視し、あくまで冷静に会談を進めようとするレオナルド。
しかし…
「どうせNSK国の新型技術か何かでステルス機能でも付けていたのでしょう?」
「ハッキングされた、というのも疑わしい話ですな!!」
G国ペンドラゴン首相とB国ツィクロン大総統がケンカに乗ってしまった。
それからは話の脱線を繰り返した挙句、罵詈雑言の応酬会場となり、首脳会談が崩壊してしまった。
周主席も怒号を繰り出していたが、その横でこの状況を作り出した張本人である李統合元首はガクガクブルブルと震えていた。
どうやらここまでの事態になるとは思っていなかったらしい。
一方しのはというとどうしたらいいのか分からず口をパクパクさせていた。
レオナルドとラスオーディンはこの状況に加わるべきではないと判断したのか傍観…もとい静観していた。
すると突然――
「……愚かな。」
全ての首脳たちの画面が切り替わり、その向こうには仮面の男『R』が映っていた。
そして同時刻、世界中のモニター画面に首脳会談の様子と『R』の姿が映し出されていた。
「人類のトップに立つ人間がここまで愚かで、醜く、腐っているとは。もはや救いようがありませんね。それでは、全人類にお知らせします。私は、この世界全ての人間達に対し――」
そして、それが予定調和の決め台詞であるかの如く、再び宣言した。
┐
宣
戦
布
告
し
ま
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※次回は明日9月1日0時に予約投稿しております。