令和元年5月1日0時5分
放送が終わると直ぐに画面が切り替わり元へと戻った。
人々の持つ端末も操作可能になった。
2分程は立ちすくむ者が殆どだったがそれも長くは持たず、元号が移り変わるお祝いムードが、一転した。
「おい、何だったんだ今の?」
「宣戦布告だって」
「は?マジで?ありえねーwww」
「でも画面乗っ取ってるし、これヤバくね?」
「どうせ画面だけだろ」
「でもちょっと怖ーい」
「つか、あの格好大草原。中二病かよ笑」
「おい、早く逃げようぜ」
「本気か?」
「逃げるってどこに逃げるんだよ」
……等々、当然のようにネット上で瞬く間に拡散され、SNSのトレンドは『#宣戦布告』が1位となってしまった。
一方で街中やお茶の間はというと、こちらも先ほどの怪放送の話題でもちきりだったが、それほど混乱しておらず、不思議と落ち着いていた。
「宣戦布告かー。たまげたなー。」
「冗談でもこんなバカなことをする人がいるんですね。」
「どうせ宣戦布告とか言って反応を見て楽しんでいるんですよ。」
「放っておきましょう。」
「だな。こんなの一々相手にしてたら、折角の歴史的瞬間が台無しだもんな。」
皆、手の込んだドッキリか何かだと思ったか、おかしな放送ごときで元号が変わったというその雰囲気を壊されたのがたまらなかったのだ。
そして何より、『宣戦布告』を本気で信じている者が少なかったからである。
仮にもし本当に事件が起きても、自分とは無関係なところ起こるだろうとさえ感じていたのかもしれない。
ところが、そんな一般国民とは対照的に、政府は大混乱に陥っていた。