学校へ
今回は学園編になっております。お楽しみいただければと思います。それではどうぞ!
数ヵ月後……
「どらご、もう息切れもしなくなったね。」
「うん、ネコさんとの訓練はまだ終わってないけど……」
「にゃはは、まあまあ時間はたっぷりあるんだから……といいたいところだけど修行は今日でいったんおしまい。」
「え!?なんで!?」
「どらごにある程度力が備わったと判断したのと僕はいったん神秘世界にいかなくちゃいけないんだ。」
「え?異界渡りの“ゲート”は数年に1度しか使えないって……」
「人間界の単位ではね。魔界とか人間界じゃ流れる時間の速度が違うのさ。人間界がもっとも速く天界がもっとも遅い。天界は人間界を監視しなくちゃいけないからね。まあ魔界や神秘世界を監視しなくていいのかっていったらまあ別の問題があるけど。それぞれ統治している存在がいるからまあいいのかなって感じだよね。人間界は1番混沌としてるからねぇ。世界によって行ける時間が違うのさ。神秘世界と魔界はわりと行き来しやすいのさ。どらごを人間界に送り出すために1度神秘世界にいかなくちゃならないんだ。前に話したろう?おなじ世界に連続でいくことは出来ない。魔界を除いてね。自分の生まれた世界には存在が安定してるのか何回も経由できるんだ。」
「じゃあ僕もいく!どんなところか楽しみ!」
「ダメ。どらごはエルフでしょ?一応昔は神秘世界にいた存在だけど自ら神秘世界を去った裏切り者としてみられてるんだ。そんな危険なところにはいかせられない。」
「じゃあネコさん1人でいくの?さびしいよ……」
「どらご……ごめんね。君のためなんだ。君には軍隊に入ってもらおうかと思ったけどいきなりこんな少年が軍隊に入るのはね……学校のほうがいいね。まあリズやロア達に勉強を少し見てもらってたらしいし大丈夫だよね?僕が戻る間だけだから。」
がっこう……どんなところなんだろうか?
「学校ってなあに?」
「みんなでいっしょに勉強したり友達を作ったりするところさ。楽しいよ?多分ね。僕は自力で術式とか解析しちゃってたけどみんなで学ぶというのも乙なものだと思うよ。あと、首の刻印は隠すように!絶対にだよ!あと魔法は無詠唱では初歩の初歩の呪文だけにすること!大呪文を無詠唱で撃てるなんてバレたら友達を作るどころの騒ぎじゃなくなっちゃうからね。あ、学園長には話はちゃんと通しておくから。将来の魔王最高幹部をよろしくお願いしますって。」
あの顔の無い化け物のことを思い出す。
「ネコさん……どんな人たちが通ってるの?僕こわいよ……」
「そんな怖がらないで大丈夫さ。みんな大体人間に近い格好をしているから。たまに……まぁ見た目がこわいやつもいるけど。僕みたいにね。まあ大人になるにつれ姿形は変わっていくものだから。大抵は変わらないで人間っぽいままだけど。始祖の姿を模して作られたのが人間だからね神も始祖を模して作られたからそんなに姿形は変わらないさ。まれに強大な魔力をもった存在や“異端”が姿が違って産まれてくることはあるけどね。昔は僕みたいなのがたくさんいたんだよ?だから人間界には昔の姿がつたわってるというか……それが徐々に人間ぽくなっていったというか……魔王さまが人間っぽいから人間っぽいほうが流行したというか。まあそんなに気にすることじゃないよ!」
にゃーとネコさんは鳴く。本当はどれだけこわいんだろう……でもみんな人間っぽいなら大丈夫かな?
「僕、学校いってみるよ!ネコさんがいないのは寂しいけど魔王さまや他のみんながいるし!」
「うんうん。僕も寂しいよ。けどどらごが友達を作る姿を想像するだけで僕は頑張れるよ。それじゃーいってくるねどらご。入学用品やそこらへんは魔王さまにまかせてあるから。じゃーねー。」
目の前がぐんにゃりと歪むと“ゲート”がひらいて黒ネコはその中へと入っていく。
「おーいネロよ……と、もういってしもうたか。学校のことで相談があったのじゃが……まあいいか。どらごなら大丈夫であろう。」
「あ、魔王さま。」
「おおどらごよ!今日も一日お疲れ様じゃ。ワシも疲れたが……ネロもいない……ふふ……い、いいい一緒に風呂に入らんか?」
「魔王さまから変な気配を感じるのでやめておきます。ごめんなさい魔王さま。」
「がーん!そんな……そんな気配まで読み取れるまでに成長してしまったのかどらごよ……朝はワシが近くまで“ゲート”で送ってやるからな?いつも通り起きればよい。それと、これと、これじゃ!」
「カバン……と服?」
「そうじゃ!学園の正式なカバンと制服じゃ!これをもってこれを着て!毎朝学校へいくのじゃ!」
なんだか不思議な気持ちだ。不安とわくわくが入り交じった感情が胸に渦巻いている。入学が楽しみだ。
「それと……この杖じゃ。仕込み杖になっていていざというときはこれで身を守るのじゃ。あと頭で描いた術式を勝手に投影してくれるという能力も持っている。どらごは“答え”だけを頭に浮かべればその通りに術式が投影されるからの。術式無しで呪文が撃てたら大騒ぎになるからの。一応保険というわけじゃ。」
「ネコさんも言ってたけど無詠唱でCランクの呪文を撃っちゃだめなの?」
「ダメじゃ!いくらエリートコースだからって大呪文を無詠唱で撃てるなんてバレたら……」
「バレたら?」
「大変なことになる。退学じゃ。よくてEランクまでの呪文じゃな。無詠唱で使ってよいのは。」
なんだか不便だ……
「わかりました魔王さま。気を付けます。杖を使えばいいんですね?」
「そうじゃそうじゃ。それとまあ使う機会は無いと思うがCランク以上の魔法は使うなよ?学園で教えてくれるのがCランクまでなんじゃ。ネロが戻る数ヵ月の間とはいえその間にCランクまで習得してしまったということになれば大騒ぎじゃ。まあ先生方には伝えてあるから生徒だけには気を付けるようにな。」
「わかりました魔王さま。気を付けます。」
「それじゃーおやすみじゃどらご。明日に備えてしっかり寝るんじゃぞ~。」
「あれ……なんだかこの制服すそが短いような……こんなもんなのかな?」
「おはようどらごよ!あぁ~やはりワシが選んだ制服!とっっってもよく似合っておるぞ!その帽子なんてキュート!あぁ……白くやわらかそうなふとももがまぶしい……朝ごはんを食べたら早速出発じゃ!」
「“ゲート”……よし。いってらっしゃいなのじゃー!楽しんでくるんじゃぞー!」
僕は魔王さまに手を振り“ゲート”をくぐる。
「うわぁ……!」
ここが学校!大きい!えーと、手元の地図をみる。
「ねぇ……あのこかわいー!でも男の制服着てるよ……?まさか男の子なの……?なんてかわいいの!」
「ねえ!君君!私が案内してあげよっか!」
「あっずるい!ワタシが案内してあげるよ!」
「えーと……高等魔法学課に行きたいんですけど……」
「え?そんなとこいってどうするの?お兄さんにお弁当届けるとか?おにーさんエリートなんだ!」
「いえ……僕が転入しろって言われたんですけど……」
「「ええー!!!?」」
とりあえず案内してもらった……途中で色々きかれたけど魔王さまとかとの関係はしゃべらなかったから大丈夫だろう。ドアがある。からからから……
「失礼しま……うわっ!」
いきなりなんだ?“魔力感知”の呪文を一応唱えていたから当たらなかったが……
「チッ今日も外したか……って先生じゃない!ごめんね!誰?小等部の子?なんでこんなところに……ってなんで私の魔法外れたわけ?ていうかかわいい!すっごくかわいい!!」
そういって僕のほうをみたのは翼が生えてるけど……見た目はそんなに変わらない女の子だった。ざわざわと6人ほどがこっちもみる。
きーんこーんかーんこーん。なんだ?この音は?
「はい静かに。この子は今日転入してきたえーと……?」
びっくりした。魔力も気配も感じなかった。なんだこの人は……?
「どらごっていいます。」
「はい。どらごくんね。こうみえても立派に魔法を使えるのでここに配属になりました。みなさんと一緒に勉強する仲間として仲良くしてあげてくださいね。」
そういうと白髭と白髪を生やした……この人が先生かな……?
見渡すとそれぞれ席に座っていたのは……とても大きい角が生えた怪物!と一人の男の人とあとは女の子達だった。
その大きな怪物が言った。
「こんながきんちょが俺らエリートの仲間だぁ!?どれほどの力があるかみせてもらおうじゃねぇ……かッ!」
すごい速さ!!!……でもない。簡単にいなせるスピードでこっちに跳んでくる。僕はさっとよけた。
「ほぉ……なかなかやるじゃねぇか!おらッ!」
すごい速さのパンチ!じゃない。ネコさんのほうが何百倍も素早かった。僕は円をえがいて相手の力をいなしてパンチしてきた方向にとばした。
「うぉぉぉっ!」
どんがらがっしゃーん。机に体当たりだ。
「てめえ……俺を本気にさせやがったな?」
「ちょっと!もうやめなさいよ!ていうかこの子スゴいわね……って先生!あんたも止めて!」
「ほっほっほ。まあまあみておれ。」
「“爆火球”!」
「ちょ!死んじゃうわよ!」
「“風の盾”」
どごおん。と音はしたが僕は無傷だ。この魔法はネコさんに教えてもらったDランクの魔法だ。
「え……?」
「な……?!確かに当たったはずだ!なぜ傷ひとつついていない!?」
「それは僕が――」
「もうよいじゃろゲド。お前の敵う相手ではないわい。」
そう先生がいうとゲドと呼ばれた怪物はすごすごと席を直し座った。
周りからはおおーと拍手喝采。いったいなんだっていうんだ……
「改めていうがこの子はどらご。魔王軍から推薦で入ってきた子じゃ。将来有望なんじゃよ。」
「軍から……?だからそんなにつよいのね……しかもかわいいし。」
「「「うん。かわいい。」」」
「まったくみんなして……はじめまして。僕はラウ。うちのゲドがごめんね?あと女どもも。」
「あ、は、はじめまして!僕はどらご!ヨロシクね!」
「(うっ……かわいい……だが男だろ?この制服ってことは。なんか短パンだけど。キレイな脚して……ってどこみてんだ僕は!)よ、よろしくどらご。歓迎するよ。こっちの女どもは……」
「ハァイ!よろしくどらご!私はレイア!さっきは“火球”いきなり撃ってごめんね?先生かと思ったの。(それにしてもかわいいわね……私のお古とか着させたらそれはもうかわいいんじゃないかしら?今のふととも丸見えな制服もかわいいけど……ハァハァ)」
「私はイサ。よろしく。(かわいい……お人形さんみたい。お人形として飼ってみたい……)」
「私はリン!君かわいいね!いくつ?家はどこなの?」
「アタシはシーラ。あんた強かったわね!でも私だって負けないんだから!(かわいい!こんなかわゆい子がこの世に存在したなんて……ああ魔王さま。感謝します。)」
「私、は……シネル。よろ……しく。(かわいい……)」
「俺はゲド。てめえは強かったよ。よろしくな。」
「はい!みなさん宜しくお願いします!」
僕がにっこりとわらうと歓声が起きた。なぜだろう?
授業が始まった……教科書?とやらをわたされてそれを読んでいるが……難しい字が多すぎて読めない!どうしよう……そうだ!
「“解析”」
おお!読める!読めるぞ!意味はよくわからないが読める!これは昔のお話かな?ちょうど魔王さまとネコさんの戦いの話だ。なになに……?大体あの3人にならったのとおなじだな。
きーんこーんかーんこーん。またこの鐘だ。
「はい。では今日の座学はおしまい。次からは実戦練習に入るぞー。」
みんなからわっと歓声があがる。やはり座っているのは退屈なのだろうか。
「さあ、あのまとに向かってなんでもいいから各自魔法を撃ってごらん。無詠唱で撃てるものは無詠唱で撃ちなさい。そのほうが評価があがるよ。」
無詠唱……ここは軽く“火球”で様子をみておこう。
どごぉん。的は木っ端微塵だ。
「爆火球!たいしたもんじゃ。この中で無詠唱で爆火球をうてるのはゲドとどらご。お主らだけじゃ。」
「え?いや今のは“火球”ですけど……」
「なに?明らかにEクラスの威力はあったぞ。“火球”、そんなに研鑽を積んだのか?」
「まぁ、はい。2ヶ月程度ですけど。いろんな魔法をつかってきました。」
「ほ。2ヶ月!2ヶ月で毎日“火球”を使えばこの程度にはなるかもしれんが他の魔法もつかってじゃと?スゴいなどらごよ。しかも無詠唱でじゃ!」
おおーと歓声があがる。照れるな……
「(先生、僕の“刻印”のことはしってらしゃるのですよね?)」
「(うむ。もちろん知っておる。Bランクまで無詠唱で撃てることもな。じゃがスゴいものはスゴいし、なにより周りに合わせなければいけないじゃろ?演技じゃ演技。)」
「どらごくん、本当にすごいわね……あのゲドとも渡り合ってたし……」
「逆、らえない。」
「かわいいだけじゃないのね……」
「けどこれで偉そうにふんぞりかえってたゲドも形無しね。」
「あぁ、いいきぶんだぜ」
「みんな……ゲドだって悪いやつじゃないだろ?いいところだってあったじゃないか。どらごくんを素直に認めたところとかさ。なにより生まれつきあれだけの体と魔力と才能があればだれだってあんな風になるさ。」
「私達だって遅れをとってるわけじゃないわよ?」
「まあ、そうだね。いっちょどらごくんにいいとこみせますか!」
不定期更新となりますがよろしくお願いいたしますm(__)m