修行
序章に引き続きみてくださりありがとうございます!今回の章は世界観の説明やら呪文の説明やら修行やらで地味なのであんまり興味ないかたはとばしてもらっても構いません(笑)それでもみてくださるというかた!ありがとうございます。それではお楽しみ下さい!
「さあ、今日からここが君のおうちだよ。」
そう言われまず目に入ったのがとても大きな門だった。とても僕の力では開きそうにないほど大きな門だ。
「さぁ、入ろうか。」
黒ネコは尻尾で軽く押すとゴゴゴという音とともに鉄らしき門が開いていった。どこにそんな力が……
「あ、君……どらごにはまだネコの姿にみえてるんだよね?どんな風にみえてた?」
「えっと……尻尾で押したように……」
すると黒ネコはケタケタと笑いだした。
「あははは!そんな風にみえてたんだ!あはははははは!お腹いたい!そんなネコいないよね!でも面白いなー暇潰しのためにあんなこと言って君のこと引き受けたけどそんな風にみえるのならネコの姿のままでいいかな。」
「ネコさんは本当はどんな姿をしているの?」
「醜いよ。とても醜い。君たちエルフが本当にうらやましいよ。とっても綺麗な姿で生まれてくるんだからさ。さ、中に入ろうか。」
中に入ると赤い絨毯ときらびやかな銀の装飾品の数々が目に入った。
「さぁ、今日からここが僕たちの城さ。名義は君になってるけどね。」
「わぁ……」
僕は感嘆の声を漏らした。こんなに豪華な家を独り占め出来るなんて!
「よっと」
黒ネコは凄い跳躍で一気に最上階まで飛び上がった。
「君もやってごらん。修行はもう始まってるよ。」
修行……?これが?無理だ。跳べるわけがない。
「恐怖を捨てるんだ!落ちても僕が受け止める!」
それなら――
「えーい!」
ぴょん。自分では思い切り跳んだつもりだったのだが……最上階にはとても届かない。
「ふふふ。まあ当然だよね。まだ“刻印”が体に馴染んでないんだから。でも結構跳べてたね。もう馴染みはじめてるのかな?」
さっき魔王さまから貰った印のことだろうか?
「1日寝てみな。そうすればきっと効果がわかるさ。寝室に案内するよ。その前にご飯かな?」
「ご飯?」
「そうご飯だよ。お腹へったでしょ?」
「僕たちエルフはなにも食べないよ?」
「え?」
最上階から猫が落ちてくる。
「ふぎゃ!」
あ、キャッチ出来なかった。
「ごめんなさいネコさん!大丈夫!?」
「いたたたた……エルフってどうやって生活してるの!?食事をとらないの!?」
「うん。水分はとるけどね。食事はとらないよ。お父さんはよくお肉を食べてたけどね。」
「そんな……エルフって完全な存在だってきいてたけど食事すらとらないの!?僕たち魔族だって食事くらいするよ!?せっかく豪華なご馳走用意させたのに……。」
なんだか悪いことさせちゃったな。
「ごめんなさいネコさん。せっかく用意してくれたのに……食べられないわけじゃないんだ。食べる必要がないってだけで。」
「そうなんだ!なら一緒に食べようよ!僕もお肉が好きでさ!最上級のステーキを用意させたよ!おい!」
ちりりん。黒ネコはベルを鳴らした。そうするとどこからともなく料理が机の上にならべられていく。
「不思議かい?僕の眷属は基本的には姿をみせないんだ。視界に入ると邪魔くさいからね。」
「眷属?」
「まあシモベみたいなもんさ。この城にはざっと200人ほど来させているよ。」
200人も……まあこれだけ広い城ならそれくらい必要なのかもしれない。みえない存在がそこらじゅうにいると考えると少し不気味だが。
「さあ!食べよう!作りたてだから美味しいよ!やけどしないように気を付けてね。ナイフとフォークの使い方はわかる?」
「わからないよネコさん。どれがナイフ?」
「そっかそっか。まあ初めての食事だもんね。僕のを見て真似するといい。」
見よう見まねで使ってみる。するとナイフが勝手に空中に浮きはじめた。
「おい、貴様なにをしている?」
「我が主。こんななんの力もないガキになにを教えるっていうんですか?ましてや魔族すらでもない。こんな人間――」
「よくみろ、耳が尖っているだろう。そしてこの美しさ。見てわからんか?エルフだよ。」
「エルフ!?なら――!」
「死ね。」
黒ネコがそう呟くと首もとにあてられていたナイフがコトンと床に落ちた。そして姿を表したのは――
「ひっ」
顔が無い化け物だった。
「バカなやつめ。おい!お前らで話し合って決めたのか!力を試せと!」
「そうです我が主。ご無礼をはたらきました。我々ですら主の力の一端くらいしかみたことがございません。それをこんな子供に教えると?」
「首をよくみろ。この子は魔王様に見初められた人物だ。」
「なっ……この刻印は!?」
バッと急に姿を表したのは先程の顔の無い化け物達だった。
「ご無礼を。エルフの客人。魔王様から刻印をいただけるほどの存在とは露知らず……どうか我々にもお慈悲を!」
化け物たちは震えているのがわかった。
「あの……僕はなんともおもってませんから。顔をあげてください。」
「おお……なんとお優しきお方……本当に済みませぬ……」
「おい、そのバカをこっちにもってこい。」
「は、我が主。」
黒ネコの側に死体が寄せられる。そして尻尾の先から光が……
「う、う、うーん。」
なんと死んだはずの化け物が生き返った!生き死にすら操れるのか!?
「ご、ご無礼を。我が主……」
「ふん。貴様何回死ねば気がすむのだ?これで3回目だろ?客人を呼ぶ度にこんなことしおって。次からはもう生き返えらせんからな。バカ者め。」
「は、申し訳ありません……」
そういうと全員がすっと消えた。
「ゴメンねー!怖かったよね?魔族は基本的には友好的じゃないんだ。特に外の種族とはね。あいつは特に嫉妬深くてねー。魔王さますら恨んでるようなやつさ。自分の主は誰かにつかえるようなやつじゃないーってね。」
「ネコさん、さっきのは?」
「さっきの?いやーほんとゴメンね!ちゃんと言い付けておくからさ!」
そうじゃない。
「死ねって言った瞬間に本当に死んじゃったの?」
「あぁ、あれはただの魔眼だよ。ちょっと体験してみる?」
え?
「死ね。」
「おーい!大丈夫?起きたー?」
「な、なにが起きたのネコさん??」
「君は1度死んだ。そして生き返った。」
そとは暗くなり日がおちてしまっていた。そしてベットの上で僕は裸で寝転んでいた。
「ちょ、ね、ネコさん?僕の服は?」
「ふふふ……君本当にかわいいね……いろいろ調べさせてもらったよ。排斥する必要がないのにちゃんとおしりの穴はついてるんだ。おちんちんは当然ついてるよね。水は飲むっていってたし。生殖機能はあるのかな?気になるなぁ……」
そう呟くとおちんちんにしっぽをあててくる。
「や、やめて……くすぐったいよ。」
「ふふふ、ごめんね。服は隣の棚に置いてあるよ。着替えたらご飯の続きをしよう。」
「すっごく美味しかった!」
僕はとても感動を覚えていた。こんなに美味しいものが世界にあったなんて!
「それはよかったよ。食べるって行為も悪くないでしょ?」
「もうお腹パンパンだよ!それより……」
「ん?」
「僕、本当に死んだの?」
「死んださ。そして生き返った。」
「どうしてネコさんはそんなことができるの?」
「どうしてって……あれくらいできないと魔王軍の最高幹部はつとまらないよ。」
答えになっていない。
「どうやってやってるの?」
「そうだなぁ……まあ今日はもう夜遅いし明日教えるよ。寝室はわかるよね?さっき生き返った場所だよ。あの部屋が嫌なら変えるけど?」
「あの……寝る前に水浴びしたいんだけど……」
(水浴び!!!?!)
……?なんかきこえた気がするけど気のせいかな?
「お風呂なら1階にあるよ。火を入れさせておくから30分くらいしたらいくといいよ。」
「ありがとうネコさん。」
「いいよいいよ。ふわぁ~あ。それじゃおやすみ~。」
「ふぅ……」
いいお湯だ。むこうじゃ滝が近いから水浴びばかりしてたけどお風呂ってのも悪くないな……いや……すごくいい。
「うむうむ。すごくいい……最高じゃ!もーちょい!もーちょいでみえそう!」
「何やってんですか魔王さま。」
「うひゃあう!おどかすな!誰じゃ! ……なんじゃお前か。寝たのではなかったか?」
「あんたの思考駄々もれでしたよ。どらごくんが気づかなかったのが幸いでしたね。お目付け役と言ったでしょう。だからこうして……!」
「いたいいたい!髪をひっぱるな!あ、みえ……いたたた!わかったわかった帰るから!ほほをつねるな!いひゃい!かへるから!かへるから!!」
「ふぁーあ……」
あまりの気持ちよさにお風呂で寝てしまったらしい。少しお湯が冷めている。そろそろ出なきゃ……
体を拭いて着替えると、月明かりで照らされた1階の大広間に出た。
「綺麗……」
銀の装飾品と天窓からみえる星がとても綺麗だった。思わず手を伸ばす。
「……え?」
キラキラと光る宝石のアクセサリーが手のひらに乗っていた。
「すごく綺麗……だけどどこから?」
よくわからないまま僕は寝床についた。アクセサリーは棚に置いておいた。
なんだか凄い威圧感を感じる……
「う、ん?」
目をあけると魔王さまの顔面が……!
「うわあああああ!」
「おはようのチューじゃ!母親にやってもらわんかったか?」
「い、いつからそこに……」
「5分くらい前じゃ。寝顔を眺めてたら辛抱たまらんくなって思わずチューをな。おしかった。」
「おは……魔王さま……マジで“ゲート”で来たんですか?バカじゃないですか?」
「おう、おはよう。当然来たぞ。昨日言ったじゃろ。それよりお前損したな。さいっこうの寝顔じゃったぞ。」
「そうですか……来てもいいですけど無理に起こすのはやめてあげてくださいね……。」
「一緒に朝食をとろうと思ってな。ネロお前もどうじゃ?」
「それがですね……驚かないでくださいよ?エルフは食事をしなくても生きていけるらしいです。」
「なんじゃ?そうなのか。ワシと同じじゃな。」
「は?あんた朝昼晩あの3人につくらせてるでしょうが。食べなくても平気なんですか?」
「平気じゃよ?だってワシ神に近い存在じゃよ?つくらせてるのは完全に嫌がらせと趣味じゃな。」
「マジで信じらんねぇ……あの3人に伝えてきますわ。」
「やめろ!!ワシの楽しみを奪うでない!完全に支配してるという優越感にひたれる瞬間なんじゃから!!!あと結構不味いからあいつらの料理!!」
「それ逆に嫌がらせされてるんじゃないですか?」
「な……!そ、そんなわけなかろう!ない……ないよな?」
なんだか朝から賑やかだ。
「朝食はなんなの?ネコさん。」
「んーテーブル座るまでわからないなーお楽しみってやつ?」
「なら、僕も座る。」
「ワシも!!!!!」
「あんたはあの3人につくってもらえ。あんたの分はない。」
「仮にも魔王じゃぞ!!泣くぞ!!!」
「わかりましたよ……その代わりあの3人にはもう料理作らせないでくださいよ。かわいそうだから。」
「考えておく。」
「はぁ……まあなんでもいいですけど。はやく来てくださいよ?」
結局朝はパンとコーンスープとオレンジだった。
「おいしかった。」
「魔王さま、食べないんですか?」
「はっ!どらごが幸せそうに食べる姿をみてたら時が過ぎていた……急いで食べる。もぐもぐ。」
「それじゃー昨日の続きやってみようか」
「ジャンプ?」
「そうそう。もう馴染んだ頃だと思うから。」
「おもしろそうじゃの。ワシも見ていいか?」
「いいですけど……あんた仕事は?」
「あんなもん午後からやっても片づくわ。いつもはだらだらやって雰囲気をだしてるだけじゃ。」
「あんた本当にダメ魔王だな……」
「仕事って?」
「興味があるか!?ついてきてもええんじゃぞ!むしろついてこい!」
「修行させるんじゃないんですか?」
「いずれ夫となるなら挨拶回りはやっておかなきゃならん仕事じゃ。」
「話が跳びすぎなんだよ!修行させますからね!!はぁ……じゃあ跳んでみて。最上階まで。」
「やっ!」
ビュン!軽く跳んだつもりなのに凄い勢いで天井が近づいてくる。ぶつかる……!
ふわり。自分の体が宙に浮いているのがわかった。
「危ないのー。力の制御をおしえてからにせいネロよ。かわゆ~いお顔にキズでもついたらどうするんじゃ。」
黒ネコはばつがわるそうに言う。
「えへへ……いやぁまさかあんなに勢いよく跳ぶなんて思ってなくて……でも初めてであんなに跳べるものかなぁ?」
魔王も目を丸くしている。
「昨日与えてこれか?凄いもんじゃな。よっぽどワシと“相性”がよかったとみえる。やはり結ばれる運命なのじゃ……」
魔王さまは恍惚とした表情を浮かべているが黒ネコさんは少し呆れがおだ。それよりも――
「あの、はやくおろして……こわいよぅ……」
ふたりとも大慌てでキャッチしてくれた。
「さっきはゴメンねー!まさかあれほどとは思わなくてさー僕も“浮遊”の魔法をかけるのが遅れそうになっちゃったよ。」
「ワシがいなかったらどうなってたことやら。ワシがかけてやったんじゃぞ?」
「あらら、申し訳ありません魔王さま。僕のほうでもかけたつもりだったんですが遅れてました?」
「うむ。遅れておったぞ。ほんの1秒にもみたない遅さじゃったがの。お主人間界に長く居すぎて勘がにぶったんじゃないか?」
「そこまでいうなら勝負しますか?どちらが先に魔法をかけられるか。」
カチンとした様子で黒ネコは言った。またケンカかな……?
「ケンカはダメですよふたりとも。ふたりがケンカしたら大変なことになっちゃうんでしょ?」
「心配するでないどらごよ。ちょいとした力比べみたいなものじゃ。ケンカではないよ。魔法と言うものを少しみせてやる。」
「どうします魔王さま。術式なしで早撃ちといきますか?それとも術式を組み立てながら勝負しますか?」
「ふむ……そうじゃな。2つともやろう。どらごに説明する良い機会じゃ。派手にいくのは早撃ちで正確さを求めるのは術式の方でいこう。」
すこしワクワクしてきた。いったいどんな魔法を見せてくれるのだろう。
「ふふ、ほれほれ。どらごが待ちわびておるぞ。さっさと始めよう。合図はどらごに任せるとしよう。早撃ちはあの山でいいか?」
「ええ。いいですよ魔王さま。それじゃ――!」
僕は手をぱん。と叩いた。その瞬間――!
「あれ?」
なにも起こらなかった。
「ワシの勝ちじゃな。」
「くぅー!くやしー!」
ふたりが見てる方向を見ると――
「え……?」
山の半分が削れていた。
「「“時間逆行”。」」
ふたりがそう唱えると山がもとの形に戻っていく。信じられない。なにが起こってるんだろう?
「ふ、ふたりとも……なにが起きてるんですか?」
「今のは1番初歩の初歩。“火球”というシンプルな呪文で勝負したのよ。ワシ達ともなればそんなシンプルな呪文でも山1つなら消し飛ばしてしまうがな。」
「山が元の姿に戻ったのは……?」
「あぁ。あれは一応ニ大魔法の1つとされている時間をあやつる魔法じゃな。まあワシが開発したんじゃが。術式なしで唱えられるのはワシとネロ。こやつぐらいじゃ。魔族数万が同時に術式を組み立てなければ出来ないような魔法じゃ。数百年前に1人のものに教えたがそやつは術式込みで使えるようになっとったな。今はどこにいるのか知らんが。」
「今説明しちゃうけど、昨日のアイツを生き返らせたのもこの時間をあやつる魔法を使って生き返らせたんだ。死んだ時間を未来にえーい!って飛ばしたからなんだよね~ちょっと難しいかな?時間を進めたり戻したり止めたりできるんだよ~。」
「時間を止めてぐへへなことも出来てしまうのじゃ。対策をしていれば食らうことはないがの~。今止めてしまおうか?ぐへへ。それ!」
「魔王さま。僕がいるのにどらごくんには変なことできないでしょ……」
「あ、それもそうじゃな。くっ、忌々しいやつめ。」
なにをされそうになったのか……少し好奇心があったがきくのはやめておいた。
「もう1つの魔法は?」
「それを今から術式……そうじゃな術式というのは計算式みたいなもんじゃ。計算式ってわかるかの……なんて説明したらいいのかのぅ……ううむ……まあみてみればはやいじゃろ。やるぞ。ネロよ。」
「いいですよ魔王さま。でもこの魔法は僕が開発したんですから僕に分があるのでは?」
「いいんじゃいいんじゃ。とにかくやるぞ。」
「「術式展開。10の3の16行目まで省略。」」
その後つらつらと2人の口からよく分からない言葉が発せられていく。これが術式……?2人の目の前には同じような……いや全く同じ?模様のようなものが円のなかに描かれていく。
「70の6の3!」
「7じゅ……あ!くそ!負けたのじゃ!」
すると……2人の目の前には黒い丸のようなものが表れた。
「けっして近づいてはならんぞどらごよ。あれはこの世の全ての悪意を詰め込んで重力で固めたようなものじゃ。触れたらワシでも死ぬ。よくこんな邪悪な魔法を思い付くものよ。」
「意識と存在が完全に崩壊しちゃうからね~。昔気にくわないやつがいてそいつを殺そうと考えてたらできちゃった。」
「こんな方法でこの強さまでたどりついたんじゃから本当に性格が終わってるやつじゃよな。」
「魔王さま。今からあなたに使ってもいいんですよ?」
「ワシも使えば対消滅するじゃろが。」
「そうですね……教えなきゃよかった。」
「ワシらが初めて戦ったとき使われて本当に焦ったのじゃ。時間を止めてなかったらやられていたな。」
「お互いに切り札を持っていたって感じでしたよね~。惜しかったなぁ。」
ふと疑問に思う。
「時間を止めてその間に魔王さまがやっつければよかったんじゃ?」
「調子にのって時間を止めまくってたら魔族の1人に対策を練られてしまっていたのじゃ。だから数百年使っていなかったんじゃが……効くかどうか不安での。最後の最後に出したんじゃ。結果1秒ほど効いてあとは対策されて引き分けじゃ。」
「まさか本当に時間を止めることが出来る存在がいるとは思わなくて対策に1秒かかっちゃったんだ。そのあと何回か対戦したんだけどみんな引き分けでね~。最終的にじゃんけんで決めたのさ。」
周りの被害はどの程度のものだったのか……最終的にじゃんけんって……平和なのかよくわからないなぁ。
「今のが二大魔法?」
「そうじゃ。ワシら2人以外には使えるやつはおらん。周りに噂だけ広がって二大魔法と呼ばれるようになったがの。」
「さっきだれかに教えたって。」
「あぁあいつは多分死んだじゃろうて。もう教えてから姿をみとらんしな。時間を操れる以上生きてる可能性もあるがの。まあワシら以外にはおらんじゃろ。」
「この二大魔法、覚えてみたいと思わない?」
「ワシの時間を操れる魔法はいいがお前のはちょっと悪趣味すぎんか?」
「あんただって邪な理由でその魔法作ったんだからおあいこでしょ。」
「かわいい子にあんなことそんなことしてみたかったんじゃ~お前のせいでその夢は叶わずに終わったがの!! 」
ぎろりと黒ネコを魔王が睨む。とても憎しみがこめられた目で。
「よかったねどらご。僕がいて。」
黒ネコは得意気に笑っている。
「いきなり時間を止められるようになったりその即死魔法を使えたりするようになるの?」
「いや、先ずは術式を覚えなきゃならん。1の1からな。そうでなければ“火球”すらつかえんぞ?とても長い道程じゃ。いくらワシの“刻印”があるからといってもズルは出来んのじゃ。世界の力を借りて魔法を撃つわけじゃからな。一般的には。」
「魔王さま。どらごの魔力量からいって修行は4分の1の効率で終わるかと。」
「なに?いくら竜人とエルフのハーフじゃからといってそんなにはやく済むものなのか?」
「はい。まあどらごくんの努力にもよりますが……二大魔法を覚えるのは300年はかからないかと。」
「そうか……エルフの寿命は?」
「不老とされていますが……大人がいるということは寿命はあるのかもしれません。」
「いやじゃあ~大人になったどらごなどみとうない!」
「姿くらいなら固定は出来ますが……」
「本当か!?なら今すぐ試せ!かわいいままがよい!!」
「そうすると子作りの問題が……」
「子作りなんぞよい!いくらでも方法はあるのじゃから!ぐへへ……。」
「そうですか。ならば今の姿のままに……いいよね?どらご?」
よくない。
「僕だっておっきくなりたいよ!お父さんみたくムキムキになりたい!」
「いやじゃ!そんな姿みとうない!!やめてくれ!!」
「ではある程度……人間で言う12歳あたりまで成長を待つというのは?そこまで大きく姿は変わらないでしょう。エルフですし。」
「今のままがいいんじゃがのう……最高にかわいいんじゃが。まあ12歳も全然守備範囲内じゃがの!」
(身長はなるべく抑えての。)
(承知致しております。)
「12さいってどのくらいムキムキになれる?」
「お父さんくらいにはなれるよ。ははは。」
「本当に!?ならなれるように頑張るよ!」
「と、まぁいろいろ言ったが本当はズルが出来てしまうのじゃ。」
「え?」
「術式というのは開発者が後世に呪文を残すために作ったものなのじゃ。その術式を暗記したところで書き出さなければ結果は世界に反映されない。まあ練習に練習を重ねるか開発者から直接“コード”を受け取らなければ術式なしで唱えると言うのは無理なのじゃ。」
「その“コード”ってものを代々受け継いでいくことは出来ないの?複数人に教えるとか。」
「無理なんじゃ。“コード”は2つまでしか世界に存在することができない。死んだあとも世界に残り続けるのじゃ。術式は70の100行目まで今のところは確認されている。」
「50番台以降はだいたい僕が発見したんだけどね~。」
「どらごはその術式……普通は世界にみちているマナと言われるモノを借りて魔法を発現させるのじゃが、どらごはオド……自分の体内から魔力を使って魔法を発現させることが出来るのじゃ。ワシの“刻印”のおかげでな。わざわざ1の1から覚える必要はない。計算式の答えだけ知っていれば魔法を撃つことが出来るのじゃ。」
「じゃあ二大魔法もすぐに使えるってこと!?」
「それだけは無理なんじゃ。強大な魔法ほど魔力を消費する。計算式も難しい。魔力は時間をかけて育成するしかないし計算式にいたっては体に直接刻み込むか模様と順番を完全におぼえなきゃならん。どちらも難しいんじゃ。」
「じゃあ僕が使える魔法って……」
「ああ。限られてくるな。といってもその魔力量ならすぐにBランク辺りの魔法は使えるようになるじゃろう。術式無しでじゃぞ?そんなやつは珍しい。計算式を書いている間は隙が出来てしまうからな。そこをついて倒すんじゃ。まれに体術を使いながら術式を使える器用なやつもいるがな。大きな魔法ほど隙がでかくなってしまいがちなのじゃ。」
「Bランク?」
「そう。魔法もランク……そうじゃな強さの順番があるんじゃ。Fランクの“火球”からはじまり最高難易度のSランクまで。ワシらの二大魔法はそのなかには入っておらん。EXランクとでも言っておこうか。」
「じゃあBランクっていうのはあんまりすごくないんですか?」
「どらご。君が見たことのある雨を降らす魔法……あれはどれくらいのランクだと思う?」
「えーっと……Aランクくらい?」
「Cランクさ。天候を変えるほどの呪文でもCランク……人間では絶対に……いや1人いたか。まあほぼ到達できないランクだろうね。神話時代からの生き残りであるエルフであるからこそ出来るんだ。攻撃の呪文が1つでも伝わっていればよかったんだけど……」
あの大きな大きなドラゴンでも倒せたのだろうか。
「竜人……先祖がドラゴンだと伝わっている人種。君のお父さんだね。竜人はとても屈強な肉体をもつんだ。まあ時が流れて血は薄まっちゃったみたいだけど……ドラゴンもこの間話した“神秘世界”の住人だったんだよ。エルフと同じくね。そのドラゴンがなぜ真っ先にエルフを襲ったのか……これは分からないけど……神秘世界を出た裏切り者と思ってたのかな。なぜエルフが神秘世界を出たのか知っているかい?」
「ううん、知らない。そもそも人間界以外にも世界があるなんて知らなかったよ。」
「まあ世界4つ在る訳じゃなくて、4つに別れているんだ。昔の神と神の戦いがあって。争いを無くそうってことでそれで4つに分けようってことになったのさ。人間達の中や魔界のなかでも争いはあるんだけどね。それを鎮圧しようと編成されたのが魔王軍さ。平和維持のためにね。」
平和維持……魔王だ魔族だときくと怖いイメージがあるが魔王さまやネコさんはこわくない……最初目覚めたときにあったあの3人だってこわくなかった。見た目も僕に似ていたし。
「でもそもそも魔王さまが運命を操って戦争をなくせばいいんじゃ?」
「そうしてるんじゃが……どうしても小さな小競り合いや数百年単位で現れる大きな戦争はすぐにはとめられんのじゃ。始祖がそうあれと願ったのかのう。」
「始祖?」
「始祖……そうじゃな。この宇宙が出来たときからいる存在の事じゃ。まあ本当の神様ってやつじゃな。この血が濃ければ濃いほど世界に及ぼせる影響力が強いのじゃ。」
「魔王さまはどれほど強いの?」
「ワシはもともと始祖の直径である大神のその下の大天使だったからの。この世で3番目といったところか。」
「魔王さまより強い存在がいるの!?」
「僕は運命やなんだってのは操れないけど強い存在だよ。魔王さまと同程度にはね。」
「まあ、そうじゃな。まれに運命に逆らえる強い存在……“英雄”、“異端”、“反逆者”……まあいろんな呼ばれかたがあるがそういう存在がいることもたしかじゃ。こういう存在は1000年に1人いるかいないかくらいじゃな。まあワシは負けたことがないがの。」
「魔王さまはかみさまに逆らってこの魔界に来たんでしょ?負けたんじゃないの?」
「負けておらん。ワシもその“異端”だったんじゃ。それで神に勝ち運命改編の力の一部を奪い取ったと言う訳よ。それで魔界におりたったということなんじゃ。」
「どうして魔界だったの?」
「そうじゃなぁ……まだ見ぬ強者に会ってみたかったというか天界から1番遠かったからというか……あんな戦いは2度とごめんじゃからの。大神達の顔なんぞ流石に2度とみたくないわい。あっちはまだ恨みを持ってるみたいじゃがの。」
「神々の戦いっていうのは!?」
好奇心がとても抑えきれない。絵本の中の話をきいてるみたいだ。
「まあまあ、落ち着くのじゃどらごよ。ワシにもお前の話をきかせてくれんか?」
僕の話なんてつまらないものばかりだ。
「もっと神さまたちの話をききたいよ!」
「しょーがないのぉ……なら条件がある。」
条件?いったいなんだろう。
「ワシとこゆ~いキスをしてくれ!!!」
「魔王さま。」
「なんじゃ!キスだけじゃぞ!!?ちょっとちゅーっとするだけじゃ!」
「ダメです魔王さま。許せません。」
「どらごも続きをききたいよな?な??」
「どらごには本を読ませておくので。」
「なに?!直接本人の口からきかせたほうがよかろうが!正確じゃぞ!」
「本はあなたが暇潰しに書いたでしょ。それを読ませておきます。」
「え!?あれを!?いやあれは……少し盛りすぎたというか……。」
「だいたい事実でしょ。ならいいでしょ。どらご。修行に戻るよ。魔王さまも午後の仕事があるでしょう。」
「いやじゃいやじゃ!もっとどらごの側にいたい!仕事したくない!!」
「今日は魔王軍を直接訓練する日でしょ。平和維持には必要なことなんだから。さあはやく行った行った!」
黒ネコはしっしっと追い出すような仕草をみせる。
「はぁ……そうじゃな……ワシは大神とは違って平和を愛する存在なのじゃから。行ってくるの……じゃあのどらご……すぐ会いに来るからな!」
魔王さまはゲートを使いどこかへ行ってしまった。少し僕も寂しいという気持ちがわいてくる。
「さぁ、どらご本格的に訓練を始めるよ。君は弓が得意だって言ってたよね?それってどの程度なの?あそこにある樹に当てられる?」
「あそこの山の樹?」
「え!?違うよ!すぐそこにみえる樹だよ!どこに当てようとしてたのさ!?」
「だっていつもあれくらい遠くに当てる練習してたよ?」
「どんだけ目がいいの……僕だって魔法で視力強化しなきゃあっちの方の山なんてみえないよ。エルフってみんなそうなの?」
「みんな確かに弓矢を射るのはうまいけど……僕が1番だったな。」
「竜人の血が入ってるから肉体強化されてるのかな……?あんな遠くまで弓を飛ばすのは相当力が要るはずだけど……。ハイブリッドって怖いな。」
「はいぶりっど?」
「ハイブリッドっていうのは違う種族どうしの血がかけ合わさってる……まあ君みたいな存在のことだよ。ハーフエルフだよね?お父さんとお母さんの種族は違うでしょ?人間とかとまじると弱くなっちゃう事が多いんだけどね。神話時代の血が入っている竜人と存在がそもそも神話時代から続いてるエルフ……この2つがかけ合わさって突然変異みたいなものが起きたのさ。それが君。普通は純血……なにも混じってないほうが強いんだけどね。魔族なんかはそうさ。」
よくわからなかったが……パパとママが褒められてる気がしてうれしかった。
「ちょっと難しかったかな?さあ、修行に戻ろうか。じゃあ弓を射ってみて。あの山頂の1番大きな樹に当ててみて。どれくらいのものなのか僕も興味が出てきちゃった。」
そういわれネコさんから弓と矢を手渡される。いったいどこに持っていたのか……言われるがままに弓を射る。
「矢は10本ある。3本あてれたら大したもんだ。」
「ふーっ……」
集中する……弦を引いて……射つ!
かこん!ザクッ!ザクッ!ザクッ!
「え……?」
黒ネコは唖然としている。
「そんな……全く同じ場所に4回連続で……信じられない。凄いよ!どらご!」
「えへへ、結構頑張っちゃった。」
褒められるのが嬉しい。頑張った甲斐があるというものだ。
「狩りもやってたんだよね。獲物の追跡の仕方とかおそわった?」
「少しだけね。獲物の匂いとか痕跡……気配もなんとなくわかるよ。」
「すごいな。本当に狩人じゃないか。そうすると……暗殺者向きかも知れないな……」
「あんさつしゃ?」
「いやいや、こっちのはなし。突然だけど魔王さまは好き?」
「うん!名前もつけてくれたし優しいし……魔王さまのことは好きだよ。」
「そうか……なら忠誠を誓える?魔王さまのためなら何でも出来る?」
「ちゅうせい?」
「その人に尽くすってこと。頼まれたことをちゃんとやれるかってことだよ。」
「魔王さまのことは好きだけど……」
なんでもってのは無理があると思う。
「そうか……まあおいおい決めようね。君がなにに向いてるかを今日は見極めよう。じゃあ次は魔法の適正をみよう!」
「適正?」
「そう。おでこをこっちにかして……」
そういわれ前髪をめくりおでこをだししゃがむ。
「うーむむむむむ……」
黒ネコは目を閉じなにかをやっているようだ。
「ほぼ均等……珍しいな……風に少し寄っているけど……ほぼすべてに適正がある。」
「どうだったの?」
「そうだね。どらごはなにかに秀でてはいないけど万能に魔法が使えるよ!Sランク……最強魔法は使えないだろうけどAランクの魔法までならほぼ全て使えそうだね。でも切り札がないってのがおしいな……まあ詠唱無しでCランクまで使えればほぼ負けることはないだろうけどね!いずれ僕たちの二大魔法も覚える予定だし問題ないか!」
「二大魔法は誰にでも使えるの?」
「いや、この魔法は僕たちが直接教えないと使えない……“コード”持ちとにたような感じだね。あまりにも強大だから二人で封印しておこうって話になったんだ。」
そうだったのか。
「じゃあまずは1番簡単な“火球”を教えるよ!僕の目の前に現れる魔方陣と詠唱をよくおぼえててね。」
そういわれ僕は身構える。
「六大元素の1つのはじまり……炎よ。僕に力を貸したまえ。形は丸。“火球”!」
そう黒ネコが唱えると円のなかに模様が浮かび上がり目の前の樹が一瞬にして炎につつまれる。
「今の炎よ。までが1の1行目ね~必要な魔法によって行が違うんだ~それを組み合わせて詠唱するのが呪文。魔方陣を頭の中で正確に描けるかが大事だね~。」
今の簡単な模様なら覚えられそうだ。
「どらごは“刻印”をもらってるから呪文を1度きいて、魔方陣を見るだけで大丈夫だよ~。目を閉じて今の光景を思い出しながらやってごらん。呪文は口に出さなくても大丈夫だよ。形は好きなのに変えられるからイメージしてごらん。最初は難しいかな?」
そういわれイメージをしてみる……ふと昨日のことが頭によぎった。
「おー。すごいすごい。ナイフか~。小さくて複雑なものほど練習が必要なんだけど1発でそこまでできちゃうか~。素質アリだね。そのナイフを僕に刺さるようなイメージで手を振ってごらん。」
「あぶないよ!ネコさんにそんなことできないよ!」
「まあまあ。大丈夫だから。」
そう黒ネコは笑う。大丈夫なのだろうか……?
「えいっ!」
じゅっ。と黒ネコの目の前で火のナイフは音をたてて消えた。
「僕ら魔族は魔法に強くてね~、普通のEランク以下の魔法なら勝手に打ち消しちゃうんだ。僕ら魔王軍はDランクの魔法までなら打ち消すように訓練してあるけどね。ちなみに僕や魔王さま。あの3人はAランクの魔法までなら打ち消しちゃうよ。使う人の力によってはFランクがCまで、CランクがAまで。とか強化されることもあるよ。僕らさっき“火球”で山1つ消し飛ばしたでしょ?あれはBランクまで上がってたからなんだ~。」
なるほど。練習次第じゃ簡単な魔法も強くなるのか。
「1つの魔法を極めて使おうって人は案外おおくてね。複雑な呪文も魔方陣も覚えなくていい。簡単で強いならそっちのほうがいいでしょ?だからこの“火球”は1番多く使われてる魔法なんだ。お風呂も沸かせるしね。じゃあ次は必殺!級になってくるCランクの呪文を1つ教えちゃおう!名前は“雷の槌”」
名前も強そうだ。どんな呪文なんだろう。
「あぁさっきの呪文だけど実は覚えなくていいよ。ああやって一般的には呪文を行使しますよってことを紹介したかっただけだから。魔方陣のほうだけみてて。そうすれば呪文を覚えられるから。」
そういうと黒ネコはまたつらつらと呪文を唱え出した。円のなかに複雑な魔方陣が描かれはじめる……これは覚えるのが大変そうだ。
「――始祖に帰す。“雷の槌”!! 」
5分くらいだろうか。そう黒ネコが唱え終えると魔方陣の先から稲妻が勢いよくとびだす。信じられないような爆音と共に目の前の山の一部が削れている……!
「ふう。長い詠唱は疲れるな。一字一句覚えるのも大変だし。やっぱり詠唱ないほうが楽だよね~。なれてくれば行数を省略出来たり詠唱しなくてもよくなったりするんだ。練習だね。まあ複数人でわかれて1つの詠唱をするって手もあるんだけどね。」
「すごい……これでCランク?」
「うん。1人でCランクの魔法まで使えればもう大魔導師と呼ばれても良いくらいだね。じゃあお次はSランク!Sランクの呪文は数えるほどしかないんだ。使えば天地がひっくり返るとも言われてるよ。伝説級の魔法なんだ。」
そんな呪文唱えてしまって大丈夫なんだろうか。
「心配いらなーい!1000分の1程度の出力でいくから!うーんなにがいいかな……さっきみせた雷系統の方がいいかな?詠唱めんどくさいし詠唱無しでいくね?長く待つのも大変だし、言うこっちも大変だから。じゃあ行くよー。僕から100メートルは離れてね。……よし!“神殺しの暴雷”!」
そういうと辺りが暗くなり、黒ネコのまわりにはいくつもの魔方陣が展開される。そして――さっきとは比べ物にならないほどの衝撃と音が発せられた。こんなに離れてるのに……!目を開けるとそこにはまっすぐにぽっかりと大きく穴があいていた。見渡せないほど遠くまで……
「ヤバいヤバい。この辺生き物とかいなかったよね……?“時間逆行”。」
ぽっかりとあいた穴がみるみる塞がっていく。
「おーい!もうこっち来ても大丈夫だよー!こわかったー!?ごめんねー! 」
すると目の前がぐんにゃりと歪む。
「おい!キサマなにをやっとるか!Sランク級の魔法使ったじゃろ!?おかげで演習どころじゃないわ!軍のやつらもビビっとったわ!」
「あはは、魔王さま……つい調子にのっちゃって。ちょっとすごいところみせようかなーって。」
「アホか!そんな理由で伝説級の魔法を使うんじゃない!!いくらどらごの経験になるからってやっていいことと悪いことがあるじゃろ!ネロさまがお怒りになったと民たちも怯えておったわ!」
「はぁ……どらごくんをことあるごとに襲おうとするあなたが常識を語りますか。どーもすみませんでしたぁー。」
全く反省した様子をみせない黒ネコ。怒る魔王さま。なんだか微笑ましい。
「すっごかったよ黒ネコさん!僕はあれくらい出来るようにならないの?」
「んー。そうだなぁ。Aランク級の魔法ならこの程度の威力なら簡単にだせるから大丈夫だよ。Sランク級は本当に規格外の威力をもってるんだ。1000分の1の威力でもこれくらいなんだから。本当はCランク級の魔法ですら普通の軍を滅ぼすのには使えるんだよ。」
「どらごよ。ここまでの呪文は覚えなくてもよい。徐々にゆっくりと覚えていくのじゃ。」
「でもBランク程度なら数ヶ月で使えるようになると思いますよ?」
「はぁ……あんまり狂暴な子に育ってほしくはないんじゃがのう。どらごよ、魔法は悪用しないと誓えるか?」
「大丈夫です魔王さま。僕はみだりに生き物を傷つけたりしません。誓えます。」
「ならよいが……力に溺れるものも少なくないからのう……ほどぽどにな、ネロよ。ワシはもどらにゃならん。くれぐれも無茶はさせるでないぞ。」
そういうと魔王さまはまた“ゲート”で帰っていった。黒ネコはクックッと笑っている。
「あんなに焦った魔王さま久しぶりにみたよ。どらごの事が心配だったんだろうね。Sランク級の魔法なんて魔王さまとの戦い以来だからね。悪いことしたな。じゃあ次は体術だね!身体強化の魔法も教えよう。僕を捕まえられたら合格ね。」
身体強化の呪文を教わるとさっそく唱えてみる。
「“脚力強化”。“筋力増加”。“バランス能力上昇”。ねぇ、ネコさん。バランス能力を増加させるのはなんで?」
「んー?動いてみればわかるよ。いずれ必要なくなるかな。前におもいっきりえいって一歩踏み込んでごらん。」
「えいっ!」
風景が一瞬で変わる。風圧で体がもってかれる……!なんとか踏みとどまった。
「ふりかえってごらーん!」
遠くでネコさんの声がきこえる。振り返ってみると――一気に200メートルは進んでいた。すごい!こんなことが出来るなんて……
「魔王さまのねー!“刻印”とねー!魔法の相性がねー!よかったんだと思うよー!ふつーは1発でそこまでできなーい!まずは制御出来るように練習だね。普通の状態で僕を捕まえてごらん。そしたら“身体強化”の魔法を使って次のステップに進もーう!」
普通の状態で踏み込んだらどうなるんだろう。少し時間を待ってやってみた。
「やっ!」
おお!それでも20メートルは踏み込める!ていうことはさっきの呪文は大体10倍くらい身体能力を向上させてくれるということだろうか。
「“刻印”のおかげだね。ふふ。じゃあ僕を捕まえてごらん。さぁ!スタート!」
すると目の前からふと黒ネコの姿が消える。
「ネコさーん!どこー!?」
「君の上だよ上。」
「やっ!」
「ふふーん。つかまらないよーだ。」
その後3時間ほど格闘したが全く触れる気配すらない……
「ネコさん……素早すぎるよ。」
「にゃっはっは。まだまだだねどらごくん。」
「暗くなってきたし今日は終わりにしようか。続きはまた明日ね~。さぁ帰ろうか。“ゲート”」
ネコさんはゲートをひらくとすっと中にはいっていった。僕も続く。
「さぁ!今日も修行だよどら……魔王さま。また来てたんですか。」
「おう。これは毎朝の日課じゃ。あぁどらご……とてもかわいい……今度はちゅーはしないで眺めてるだけじゃったがな。起こすのはやはりかわいそうじゃ。」
「そうですね。昨日は頑張ってましたし……少し長めに寝かせておきましょうか。」
「すー……すー……」
「「(それにしてもホントにかわいいな)」」
「ん……」
起きるともう日がとても高くのぼっていた。もうお昼か……?
「おはようどらご。昨日は魔力やら体力やらをつかったから疲れたでしょ。よく眠れた?」
「うん。ごめんねネコさん。こんなに寝ちゃって。ねぼすけさんだ。」
僕は恥ずかしくなり寝癖のついた髪をぽりぽりと掻く。
「いいんだよいいんだよ。ゆっくりやろうね。顔をあらっておいで。そのあとお昼にしよう。そして昨日の続きだ!洗面所の場所は2階にあるからね。あと……まあ大丈夫か。じゃあ後でね~。」
「うん!」
僕もやる気はじゅうぶんにある。頑張るぞ!ネコさんがなにか最後いいかけてたけど……
僕は洗面器の前に立つ。鏡が寝癖のついた僕をうつしている。それにしても不思議だ。この蛇口……というものをひねると水が出てくる。なんでもあーてぃふぁくととやらで水を吸い上げているらしい。僕たちは井戸から直接水をくんで使っていたからとても便利だということがわかる。村の外に出たことはなかったからわからなかったけど、人間たちも僕たちとは違う生活をしていたかもしれない。すると――
「あれ?」
鏡にうつっているのは僕……じゃない!?誰!?
「くすくすくす……驚いた?」
誰かと思ったらあの3人の内の1人の……えーと。名前をきいてなかったな。
「私の名前はリズ。金髪の娘がロア。最後の片方眼帯してたのがミリヤよ。」
「リズさん。どうして鏡の中にいるの?」
「私はね、鏡の中の世界を行き来できる能力をもっているの。魔王さまや他の皆は“ゲート”を使えるけど私はあえて使わないで鏡を使って移動しているの。」
「どうして?」
「鏡の中っていうのは案外広くてね……隠れたりプライベートなことをするのに最適なのよ。気が向いたらだいたいの場所に出られるし。たまーに人間界とも繋がることがあるわ。」
「え?!異界渡りが出来るのはネコさんだけだって……」
「そうね。魔王さまも他の皆もしらないのよ。たまに人間界に行って遊ぶこともあるわ。あっちの生活も楽しいものよ。天界や神秘世界にはまだ繋がったことはないけど……そもそも鏡というものがあるのかしら?このことはナイショにしてね?」
いたずらっぽくリズさんは笑う。
「それより気に入ってくれたかしら?あのアクセサリー。“転送”の呪文であげたのだけれど。」
あ、あの夜の……
「リズさんがくれたんですか?あんなにキレイで高そうなもの……」
「ふふ。私もあなたが気に入っちゃった。魔王さまにバレたら殺されてしまうだろうけど……人間界でみつけてきたとっておきの品物なのよ。あなたに似合うと思って。」
うれしいけど……明らかに女性が着けるような品物だった。
「気が向いたら着けてみて。魔王さまにはナイショでね。それじゃ、特訓頑張ってね!」
そういうとリズさんは目の前から消えてしまった。好意を抱いてくれるのは嬉しいが……出来れば今度はかっこいいものを用意して
もらおう。
「どらごー?大丈夫ー?ずいぶん長いけど……ってまだ寝癖もなおしてないの?なにやってたのさ?」
「えーと……ちょっとぼーっとしちゃって。」
「本当に大丈夫?今日は修行お休みにしようか?」
「いや!全然平気!ごめんねネコさん、すぐ用意するから!」
「どらご、本当に大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。それより昨日と同じ修行をするの?」
「そうだね。僕を捕まえてごらん。どうしても無理だと思ったら“身体強化”の呪文使ってもいいよ。」
「え?でもネコさん“身体強化”は次の段階だって……」
「うーん。そうしようと思ったんだけど昨日のみてるかぎりだと永遠に捕まりそうにないから……」
ショックだ。才能がないのかな……?
「落ち込むことないよどらご!まぁ捕まえられないだろうなとは思ってたし。いい線いってたよ!昨日の特訓で自分の体にはなれたでしょう!今日は呪文を使った状態の自分になれてみよう!さぁ呪文を唱えて!」
いわれた通り昨日と同じ呪文を使ってみる……!
「おー、よしよし。準備は出来たね……じゃあよーい……スタート!」
思い切り足を黒ネコにむかって踏み込む。
「お!?」
よし、近づけた!手をのばす……!
「おしいおしい!初めてにしてはよく使いこなしてるよ!さあ、こっちだよん。」
二時間後……
「あれ?」
体が思うように動かない。なんだろう。
「あー。魔力切れかな。一気に3つも呪文をかけた状態で動いてたからね~。まだ体が魔法を使うのになれてないんだ。」
体の力が抜けていく……めの、前が……くらく……
「……らご!どらご!」
はっと目を開けると魔王さまとネコさんとあの3人が僕の横にいた。
「よかった……目を覚ましたのじゃ。おいネロ!お前魔力の説明すらしてなかったのか!?」
「いやー体験してからの方がはやいかなーって。」
「命を落とすところだったんじゃぞ!?」
「まぁまぁ魔王さま。我々には時間を操る魔法があるじゃないですか。」
「そういう問題じゃない!蘇生させるといってもリスクがあるじゃろ!未来に飛ばすといったって“死んだ”という事実は世界にのこるのじゃから!なんてったってかわいそうじゃろうが!」
「まあだんだん負債はたまっていきますけど……2、3回程度どうってことないでしょう。それこそ100回とかならわかりますけど。まあ確かにかわいそうだったかな?死っていうのはこわいらしいですからねぇ。僕はまだ体験したことないからわかりませんけど。どらご、ごめんね?こわかった?」
「ううん。こわくはなかったけど……なんだか悲しい気持ちにはなったよ……」
「ほれ!!どらごが悲しがってるじゃろうが!もう無茶な訓練はやめにせい!もっと地道にやらせるんじゃ!いきなり“身体強化”系の魔法を3つなど……まだ体がなれてないんじゃから!もっと1つに絞るとかあるじゃろ!」
「あはは、そうですね~。なら“脚力強化”だけで今度は訓練してみようか。才能はあると思いますよ。どらごくん。」
「だからのう……はぁ、もういいわい。とにかく無茶はさせるなと言ったじゃろ!?スパルタすぎるんじゃ!もっと優しく接してやれ!」
「僕を捕まえるってだけだから別に傷つけたりはしてないんだけどなぁ……」
「お前を捕まえる!?何年やらせる気なんじゃ!本気で逃げたら絶対に捕まらんじゃろ!ワシでも苦労するわ!」
「いや、もちろん手加減はしてますよ……じゅうぶんに力は抑えてるつもりです。姿もネコのままですしね。」
「なんじゃ。ネコのままだったのか。“変化”した状態ならそこまで心配いらないかの……どらご、頑張るのじゃぞ!お前ならすぐに捕まえられる。ちょっとこっちにこいどらご。」
そういわれ魔王さまの近くまで寄る。
「こしょこしょ……」
「なに話してるんですかー?」
「ふふ、なんでもないわい。まあ明日を楽しみにしておくんじゃな。」
「さぁ!どらご!今日は僕を捕まえることが出来るかな?今日は“脚力強化”だけでいってみようか!“筋力増加”とあわせると2倍の効果が現れるんだけどね。まあバランスのほうは昨日さんざんやったから大丈夫だろう!」
「ううんネコさん。僕は“脚力強化”は使わないよ。生身で行く。」
「え?でもそれじゃあ一生かかっても捕まらないよ?いくら魔王さまの“刻印”があるからって言っても……。」
「(“魔力探知”)」
「ん?なにしたの?」
「気にしなくていいよネコさん。さあ始めよう!」
そうして僕は目をつぶる。昨日の夜魔王さまに教えてもらった呪文だ。この魔法は相手の魔力を感じることが出来るらしい。Cランク……結構難しい魔法らしいけど、魔王さまのおかげで覚えることができた。
「目をつぶるなんてにゃまいきな……それ!」
目をつぶっていてもとても膨大な魔力を感じることが出来る……ここだ!
「はい!」
「にゃ!?」
僕めがけて突っ込んできたネコさんをがっしりと……キャッチ……あれ?
「あぶないあぶない……今時を止めなかったら捕まってたよ。魔力探知だね?魔王さまもいじわるするなぁ。この修行はどらごくんの身体能力を高めるためであって僕を捕まえることが目的じゃないのに。」
「時を止めるなんてずるい!」
「にゃはは、まあどらごの勝ちってことで。よく“魔力探知”なんて使えたね?Cランク級の魔法だよ?」
「昨日一時間くらい魔王さまに特訓してもらったんだ。それで出来るようになったんだよ。」
「一時間!?そんなにはやく使いこなせるようになるなんて……魔王さまも驚いてたでしょ?」
「いや?魔王さまは10分で終わらせるつもりだったらしいけど……。」
「どんな特訓したんだ……?魔王さまも大概スパルタじゃないか……。まあ魔法操作の方の訓練が省かれたと考えていいかな。その“魔力探知”の感覚を忘れなければ大体の魔法は使えるようになるよ。“魔力探知”の魔法は魔力もそこまで消費しないし相手の位置も大まかに感じることが出来るから結構使える呪文だよね。僕らレベルの戦いになると必須さ。じゃあ今日からは走って城まで帰ること!これが身体能力の向上に繋がるからね!」
お城まで……?とっても遠くに微かにみえるけど……
「じゃあとりあえず修行のほうは合格ってことで。じゃ~ね~。ちゃんと走ってくるんだよ?歩いたらちゃんとわかるからね~。 」
黒ネコは“ゲート”を使って帰っていった。
はぁ、はぁ……あんなに遠くにあったなんて……魔王さまの“刻印”で身体能力が上がってなかったら3日はかかっただろう。なんとか夜までに帰ってこれた……
「おかえり~。どらご。偉かったねぇ、ちゃんと走ってきたんだ。僕の“千里眼”でみてたからよくわかったよ~。」
「はぁ、はぁ、ネコ、さん。つ、疲れた……よ。」
「スタミナは大事だしね~。今日のご飯はウナギだよ!疲れただろうと思って用意させたんだ。さ、はいってはいって。その前にお風呂かな?汗だくだよ?疲れなくなったら本当に修行は終わり。 」
そんな日は来るのだろうか……
「帰るまで暇だろうし僕と模擬戦でも明日からやろうか。」
「模擬戦?」
「戦闘訓練ってとこかな。今度は僕にさわられないようにするんだ。その間は僕になにをしてもいいよ。簡単な魔法もいくつか教えよう。それで妨害するんだ。」
明日からも大変そうだ……
「ふぅ……。」
やはりお風呂は気持ちがいい。うなぎっていってたけどどんな料理なんだろう。
「はぁはぁ……どらご……かわええのう……」
「魔王さま。」
「お主か。邪魔をするでない。こんどこそ!こんどこそみえそうなのじゃ!」
「そんなにみたいなら“千里眼”でもなんでも使ってみればいいでしょ……」
「バッカお前な……生でこうしてこっそりとみるのが最高にイイんじゃろうが!わからんか!?」
「わかりません。行きますよ魔王さま。まあ僕が魔力妨害かけてるんで“千里眼”だろうと“透明化”だろうと使うことは出来ませんがね。」
「だから髪をひっぱるな!帰るから!!だから頬をひっぱるな!!いひゃい!」
なんだか外が騒がしいような……気のせいかな?
「おいしかったー!なにあのピリッと辛いの?かかってたタレも最高においしかった!」
「あれは山椒っていって僕が人間界から持ってきたものさ。タレはわが一族秘伝のタレ!おいしかっただろう?」
「すっごくおいしかったよ!」
「ふふ、満足してくれてなにより。作らせがいがあるというものさ。僕ら一族は食事にはうるさくてね。」
「そういえばネコさんの家族は?」
「僕はひとりだよ。そりゃあ両親はいたけど……魔族の中では短命な一族でね。そこまで長く生きることは出来なかった。寿命っていうのは先延ばしには出来ないからね……その頃は不老不死の方法も伝わってなかった。僕は“異端”だから死という運命に逆らえるけど……」
そうだったのか……寂しくないのかな?
「寂しくないの?」
「寂しかったさ。でも僕は復讐心によってその心を保ってた。憎い相手がいたのさ。そして殺すことに成功した。あのときの気持ちは忘れない。ぽっかりと心に孔があいたような感じで……魔王さまと出会わなかったら僕は廃人になっていただろうね。お主、強いらしいではないか……って声をかけられたんだ。」
「それで勝負したの?」
「うん。もうかれこれ……何年になるのかな。本を読めばわかるよ。何種類も僕たちの戦いについて書かれた本があるから。なんだかしんみりしちゃったね。僕はもう寝るよ。おやすみどらご。 また明日。」
「うん。おやすみネコさん。また明日。」
「どらご。今日からは模擬戦にはいるよ。僕にさわられたら負けね。まずは風の呪文を教えよう。“暴風”。Dランクの魔法さ。僕は今“変化”をつかった状態だから普通の魔族と同じくらいの魔法抵抗力しかない。つまり通じるってこと。やってみるね。“暴風”。」
魔方陣が展開されその先からズゴゴとすごい音をならして風が吹いていく……!周りの木々は根っこから飛ばされてしまって周りはほぼ平地になってしまった。すごい威力だ……!
「これ覚えるのに午前中使っちゃうかも知れないね。まあ頑張って覚えてね。」
本当にまるまる午前中を使いきってしまった。
「あはは、しょうがないよ。普通の人なら何年とかけて覚える魔法なんだから。どらごは特別なんだよ?その“刻印”あってのことなんだから。なかったらどらごの才能からいっても1年はかかっただろうね。」
そんなに……本当に魔王さまには感謝だな。そうだ……!
「これに“火球”をまぜたりできないの?
「いい発想だね!そうして新しく呪文が出来上がっていくのさ……術式を組み合わせてね。もちろんこれに炎をまぜることだってできる。そうなるとCランクの魔法になるね。やってみな?」
さっそくやってみる。まずは“火球”……を風にのせるイメージで……次に“暴風”!
「あれ?」
「そう簡単にはいかないさ。なんてったって術式も魔方陣もしらないんだもん。イメージだけでは出来ないさ。ちゃんと“答え”を知らないとね。じゃあ魔方陣をみせるよ……僕の後ろにいてね。“爆熱の火炎”!と“水の竜”!」
まずは魔方陣の先から勢いよく炎が燃え広がった。あのときのドラゴンの吐いた火の数倍の範囲だ……!そして次は水がどばっと洪水の如く飛び出した……すると……目の前が爆発した。
「“風の盾”」
どかぁん。ゴゴゴと目の前では音をたてているだが不思議と吹き飛ばされることもなく振動も来ない。
「水蒸気爆発が起こっちゃったね。ごめんごめん。ただ火を消すつもりだったんだけど。とっさにシールドを出せてよかったよ。どらご。大丈夫?」
「うん。大丈夫……今の魔法は?」
「どっちもDランクの魔法さ。魔法はおなじランクじゃないと組み合わせることが出来ない。だからどらご。君にはこの2つも覚えてほしい。この2つを覚えることが出来れば、“暴風”と組み合わせることが出来るのさ。そして組合わさった魔法が――!“爆炎の風”!」
ゴウゴウと音がなり辺り一面は焼け野原になってしまった。すごい。本当に炎と組合わさってる……!
「“時間逆行”」
そう唱えると辺りはさっきまでの木々が戻ってきて炎も消えていた。
「はじめからこれつかっとけばよかったね~。えへへ。」
「ネコさんと戦うにはこれくらいしないといけないの……?」
「いやいや。この呪文の威力を抑えればいいのさ。魔法制御はもう出来そうだから、さっき覚えた“暴風”でやってみて?こう、穴をぎゅーっとしぼる感じで!」
いわれた通りにやってみる。ぎゅーっ!
「にゃーっ!」
ネコさんが吹っ飛んでしまっていた。大変だ……!と思ったらネコさんはフワフワと浮いて戻ってきた。
「目もいっしょにつぶらないでよ……僕のいる方向に飛んできちゃってたよ。次からは気を付けてね?もっと弱く!」
ぎゅーっ!目はあけたまま。
「そうそう!そんな感じ!上手いね!魔王さま……いったいどんな訓練を……。」
目の前の木が倒れるくらいの威力には抑えることができた。
「こんなに強くでいいの……?」
「いいのいいの。僕の行動を止めなきゃいけないんだから。はい、始めよう!よーい、ドン!」
ネコさんが視界から消えた……!
「はい、僕の勝ち。」
頭の上にネコさんがのっていた。そんな……魔法をかける暇すらなかった。
「続けるよ~。せめて魔法は1発くらいは撃ってほしいな?そうそう。“魔力探知”。こんなときに便利だと思うな。」
そうだ……!魔王さまも戦闘向きって教えてくれたんだ!
「“魔力探知”」
「いいね。じゃあ次いってみようか!」
結局ネコさんには1回も勝てなかった。魔法は何回か撃てたけど。
「いやー上出来上出来!後半は魔力制御もうまくいってたしね!じゃ僕は“ゲート”で帰るから、走って帰ってきてね~。」
そういうと目の前がぐんにゃりと歪み、ネコさんはそのなかに入っていった。そうか……また地獄がはじまる。
ここまで長々とみてくださりありがとうございましたm(__)m
次回からは少し間があいてしまい1週間後くらいになると思います。お待たせしてしまい本当に申し訳ございません!では!改めてありがとうございました! ブックマーク、レビュー等が私のやる気となります!もしよろしければ押したり書いていったりしてください!