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咒言鬼神の転生譚 ~神に請われる神殺し~  作者: TAIRA
第4章 テスラ大迷宮探索
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第68話 帝国への対処:5.4秒の殲滅劇


 翌朝、『頭がガンガンしますわ…』とヘタリ気味のレイティアに解毒魔術をかけてやった。

 途端に回復したレイティアを見たアレイトスが、『わ、私にも頼む…』と言ってきた。実は二日酔いになってたらしい。

 念の為、全員に解毒をかけてから戦場へ向け出発した。


 戦場となる平原が視界に入ると、反乱軍は既に陣形を整えていた。

 両軍の対峙距離は凡そ500m。どちらも古式ゆかしい方陣形だ。


 敵軍が三十万人規模であることは出兵直後から通達されており、皇太子軍には俺が予想した程の動揺は見られない。


 しかし、末端の兵士まで平然としている状況を不審に思った俺は、『精神操作術式でも使ったのか?』とアレイトスに尋ねた。

 すると、『合流した後にキルは第一級危険種や迷宮階層主を単独で狩りまくるSランカーのAAAだという話を盛大に流布した』とアレイストは笑いながら答えやがった。

 どうりで兵士たちの俺に対する態度が余所余所しさを増してると思った…



 この世界の戦いは口上から始まる。

 副司令官ないしは参謀が二名程の護衛を伴って両軍の中間地点で面談をする。

 まあ、降伏勧告を互いに蹴り『仕方ないから戦ってやる』的なやり取りだ。


 アホらしいとは思いつつも、こういう機会も少ないだろうと考え、俺はブラッドの護衛という体で口上の場に出る事にした。

 遠視術式で敵軍の口上人員を見た俺は、『ジェイドをもう一人の護衛として連れて行こう』とブラッドに要請した。


 俺たちは騎乗して中間地点へと進む。

 敵軍の人員は参謀であろう魔導士、護衛の騎士、そして兵卒に扮している暗部の部隊長Bの三人だ。


 互いの顔が認識できる距離まで接近した時点で、部隊長Bの目が動揺の色に染まった。参謀と騎士の二人はジェイドの顔を知らない様だ。


「これはエスタシオン殿、久しぶりですな」


「なるほど、リンネイ殿が反乱軍の参謀であるか」


「反乱軍とは心外ですな。我々は帝国の悪政を正す為に集結した義勇軍ですぞ?」


「フン、帝政腐敗の元凶である公爵共の腰巾着がほざくものだな?」


「その様な妄言など聞く耳は持ちませんな。しかし、その兵力で我らと戦うおつもりか?半日と持ちませんぞ?エスタシオンの武勇も今は昔ですかな」


 リンネイなる参謀が嫌らしい嗤いを見せる。

 護衛の騎士はブラッドを見据えているが、部隊長Bはジェイドを凝視している。

 俺は弱い空気弾をブラッドの背中に当てて合図を送った。


「リンネイ殿、そちらの兵卒は我が弟であるジェイドから目を離せぬ様子であるが……何か因縁でもあるのかな?」


 途端に、リンネイを含む三人の表情が凍り付いた。


「なっ!?ジェイド准将はテスラで…」


「何ぃ?今何と?ジェイドがテスラで?テスラとは、テスラ大公国の事か?」


「い、いや、何でもない…」


 ここでジェイドが追撃の口を開いた。


「そこの兵卒、お前には見覚えがある。お前も私を見知っている様だが…会ったのは何処だったか?」


「わ、私はジェイド准将と初対面ですが…」


「ほぉ?では私の気のせいか?にしては動揺している様だが?まあ何れにせよ、私は暗部どもを断罪する為に推参した。前線にて全ての暗部を屠ってくれるわ!」


「じぇ、ジェイド准将!我ら義勇軍に暗部など存在せぬっ!」


 途端にタジタジとなったリンネイは『降伏勧告はしたからな!』と吐き捨てて自陣へと引き返して行った。



「ハハハ!キル殿の戦術は緻密にして愉快ですな!小者のくせして尊大なリンネイが、笑える程に動揺しておりましたぞ!」


「兄上の言われる通りですね。あの暗部の引き攣った顔も滑稽でした」


「戦いは始まる前に八割方が終わってるんだよ。残りの二割は不測事態への即応力だけだ。ま、これで暗部がジェイド目掛けて来るのは間違いない。俺の手間も省けるってもんだ」



 口上を終えた後は、一時間前後で戦闘が開始される。

 何とも悠長な話ではあるが、対峙してから陣形や戦術を決める将も多いらしい。


 本陣へ戻った俺たちは、人払いをして戦術確認を行う事にした。


「先ずはジェイドからだ。昨日も伝えたとおり、暗部は百人規模の中隊が二つで総勢二百だ。部隊長Bが指揮する中隊は左右に五十ずつ展開していたが、さっき配置を変更して前衛中央にいる重装歩兵部隊の背後に……ん?ちょっと待て」


 俺は暗部が装備している簡易通信用魔道具が発する魔力の探知を継続していた。

 さっきまで二個中隊に分かれていた暗部が、一個中隊として終結しつつあるのを感知した。


「どうされました?」


「ああ、より都合のいい展開になったぞ。部隊長二名を含めた暗部二百二名が、重装歩兵部隊の背後に集結するのを感知した。ジェイドを見て余程慌てたらしい。抹殺完了の報告した後でのジェイド生存確認だから当然だがな」


「キル殿、私が最前線に姿を晒してはどうでしょうか?」


「だな。俺もそれが良策だと考える。暗部の配置からして、こっちの前衛と重装歩兵がひと当たりした後に展開する腹づもりだろう。ライフルの弾丸は大盾の五十枚くらいは軽く貫通する。ジェイドは開戦と同時に暗部を殲滅しろ。俺はライフルの弾道を全て感知できるから、射線上に俺がいても構わずに撃て」


「はっ!お任せください!」


「次にブラッドとフェリだ。ブラッドは開戦と同時に全軍を終結させて密集陣形を取れ。フェリは自分の術式範囲内に全軍が入ったと同時に結界を展開しろ。バリスタやカタパルトは大したことないが、中衛に二千人規模の魔導士部隊が存在する。念の為にデカイ合成魔術が飛んでくると想定して、魔術結界を厚めにしておけ」


「はっ!委細承知!」

「任せて♪」


「最後に俺とルルだ。ルルは俺の背後をついて来い。ジェイドの射線を外しながら歩くからピッタリと付いて来い。被弾なんかしたらデコピンだからな?俺は敵との距離が50mになった時点で暗部とガディウス、それと三卿の手勢を対象から除外した大規模術式を発動する。簡単に言うと、俺の術式が発動した後に立っている敵は除外対象者だけになる。ルルは前衛後方にいるガディウスを片付けに行け」


「はぁい!殺ってやるですぅ!キル様とガクトさんに作って貰った新ガントレットでクソ熊を挽き肉にしてやるですぅ!!」


 挽き肉に決定ですか…

 うん、エスタシオン兄弟もルルも闘志十分といった表情だ。

 フェリは自分の出番が少ないから、ちょっと不満そうだな。

 フェリでも三十万くらい殲滅できるだろうが、今回は殲滅時間が重要になる。


 ジェイド生存を確認した暗部が、さっき伝書用の召喚獣を十体ほど飛ばした。

 全て潰してもいいんだが、召喚獣を潰すと術者に感知されてしまうからな。

 全ての召喚獣を潰されたとなれば、最悪は一時撤退を決断される可能性が出てくる。

 こっちはのんびり付き合ってやるほど暇じゃないんでな。

 悪いが一瞬で殲滅させて貰う。



「ハッハッハッ!皇太子軍と言うよりはキル軍であるな!」


「む…アレイトスも出番が欲しいか?」


「いやいや、そうではない。一人の将でこうも軍や戦術が変化するものかと思ってな」


 アレイトスの言葉を聞いたエスタシオン兄妹が気まずそうな表情をした。

 確かにアレイトスを少し蔑ろにしている戦術だが、皇帝、アレイトス、レイティアの三人には帝城で頑張って貰う必要がある。


「アレイトスとレイティアの出番は帝城に帰還した後だ。俺には不可能な政治闘争で実力を発揮してくれ」


「わかった。任せよ」

「私もガツンと言ってやりますわ!」


 ガツン?レイティアは何を言うつもりだろうか?

 かなり独特な感性の持ち主だよな。


「戦術確認は以上だ。これより状況を開始する!」



 俺たちが配置につくと、反乱軍側から嘲笑の声が聞こえてきた。


 まぁ、笑いたくもなるだろう。

 俺、ルル、ジェイドの三人は、自軍前衛から200mも突出して横並びに立っている。両軍のほぼ中間地点だ。

 騎乗しているわけでもないから、敵の騎兵部隊に突撃されたら撤退できる距離ではない。

 死にたがり、と思われるのが普通だな。


 敵兵の笑い声が小さくなっていき、敵軍中央から空に向かって火弾が打ち上げられた。

 それと同時に、拡声術式で『進軍開始!ファランクス隊、槍構え!』との指令が敵軍に響いた。


―――バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!


 ジェイドがライフル速射を開始した。

 射撃音が鳴る度に、数人の重装歩兵がフルプレートが破壊される金属音だけを残して崩れ落ちていく。

 ある者は右肩を吹き飛ばされ、ある者は腹部を丸ごと爆散されている。

 大盾には直径50cmの真円が穿たれ、突き出された長槍は小枝の如く寸断されていく。


 重装歩兵のフルフェイスで口籠った阿鼻叫喚が周辺を支配し、目に見えて進軍速度が落ちていく。

 フルフェイスは左右の視界が狭い為、被弾者を視認していない者たちは『前進しろ!』と怒号を上げている。


―――バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!


 ジェイドは快調に速射を続けている。

 ちょっと恍惚とした表情になっているのは見なかった事にしよう。


 重装歩兵の足が止まった事態に業を煮やしたのか、暗部が歩兵を蹴り越えて突進して来た。


「ジェイド、後は任せたぞ?」


「はっ!問題ありません!」


「ルル、行くぞ」


「はぁい!」


 俺とルルはゆっくりと歩き出した。

 猛然と襲来する暗部どもが、俺に眼前で次々と爆散していく。

 ジェイドに銃口を向けられた者が吹き飛ぶと理解した暗部たちが散開した。


「ルル、お前の反応速度じゃ弾丸を回避できないから来い」


 俺は人差し指をクイックイッと曲げてルルを招き、そのまま横抱きにした。


「はうっ!?ご、ご褒美ですぅ!お姫様抱っこですぅ!幸せですぅ♪」


 回避できないからと言ったのに、何のご褒美だ…

 ごついガントレットで完全武装したお姫様なんぞいないっての。


 俺はライフルのスコープが照準を合わせた射線を外しながら歩く。

 ヒュッ!と弾丸が空気を切り裂く音の直後に風圧を感じる。


 開戦から五分程しか経っていないが、暗部の残存数は既に三十を切っている。

 ジェイドは俺の予想を超えた射撃能力を身につけた様だ。

 いや、射撃そのものではなく、ターゲットの選択能力が高いと言うべきか。


 スコープには視野角内に存在するターゲットの距離が近づくと、そのターゲットを赤色表示する機能を付けている。

 ジェイドはスコープを覗いている目と肉眼の両方で巧みにターゲットを選択している。

 この瞬間的な判断力は天性の才だな。


「お、部隊長Bの反応が消えたな。残り十か…頃合だな。ルル、降ろすぞ」


「えぇ?もうちょっとだけぇ…」


「アホか。魔力と闘気を解放するから、俺の後ろで気合い入れて耐えてろ。ブルったらデコピンだからな?」


「はぁい…」


 唇を尖らせて渋々と俺の背後に回るルルを横目に、俺は魔力と闘気の解放を始めた。


 俺を起点に突風が波紋を広げる様に走る。

 闘気と魔力を融合圧縮した青白銀の奔流が、轟轟と響きを上げて身体から噴き上がる。

 大地には無数の亀裂が走り、大気が震撼する。


 闘魔魂融合

  神核フルリンク

   領域マッピング開始

    ターゲットマーキング開始

     マルチブースト発動

      並列演算開始

       次元間接続開始

        次元間座標固定

         多次元マトリクス補正開始

          並列術式起動


「逝け…魔咒絶式【絶裂】」


 258273箇所の空間が、直径30cmだけ水平方向に断裂した。

 反乱軍二十五万余の頭部が重力に引かれて落下し、ゴトリと地を転がる。

 完全なる静寂の後、首から噴水の如く血を噴き上げる胴体が崩れ落ちてゆく。


―――ドドドドドドドドドド………


 二十五万人余りの胴体がドミノの様に倒れて地響きを上げる。


 それは闘気解放から術式発動完了までの、僅か5.4秒間で起きた出来事だった。




《マスター、神核第二層の解放条件を満たしました。解放を開始します》


 え…ええっ!?


―――キィイイイイイイイーーーッ!


 ぐおっ!

 問答無用かよっ!?その仕様はダメだろっ!


《闘気路拡張を開始します。完了しました》

《魔力路拡張を開始します。完了しました》

《魂力を限定解除します。完了しました》

《不明神格の解析を開始します》

《解析可能領域64%に拡大 不明神格を異界の鬼神と断定しました》

《一次統合済み鬼神格を神核に本統合します。完了しました》

《鬼神格の解放率は53% 鬼神格が初期覚醒を開始します》


―――ドクッ! ドクッ! ドクッ! ドクッ! ドクン!


 ぐぅぅっ…これは…きつ…いっ…体が…脳が…焦げ…るっ!


『久しいな我が末裔よ。ほぅ…未だ脆弱なれど、以前より資質は高いか』


『ぐっ…鬼神…かよ』


『是。我が末裔よ、己が咒羅を以て門を開け。されば我が権を得られよう』


《鬼神格の初期覚醒が完了しました》

《覚醒に因り能力統合が可能になりました》

《統合を開始しますか?》


『ぐっ…アイ、今は、ダメだ』


《はい、マスター。能力統合は任意に実行可能です》

《258273の魂を神核内に獲得しました》

《冥王召喚が実行可能になりました。実行しますか?》


『それも…今は…ダメだ。ぐぉっ…』


《はい、マスター。冥王召喚は任意に実行可能です》

《生体進化が可能になります。生体組織の変改を開始します》

《変改完了まで残り14591秒です》

《神核第二層解放を終了します》


「――様!キル様!キル様!キル様ぁっ!!」


 神核解放の終了と同時に苦痛から解放された俺は、必死の形相で俺の名を絶叫しているルルに目を向けた。


「ふぅ…ルル、もう大丈夫だ」


「うぅ…びっくりしたですぅ!心配したですぅ!キル様が一気に強くなったと感じたら、急に凄く苦しそうになったですぅ!」


「そうか、悪かった。神の加護がより強力になった反動でな」


「そぉだったんですかぁ!?あのキル様ぁ、闘気と魔力がダダ漏れですよぉ?」


「え?…マジだな。通常循環じゃ追いつかなくなったか。えーと…これくらいか?まだ足りないか…よし、これでOKだな」


「キル様ってどこまで強くなるんですかぁ?」


「知らん。んな事はいいからルル、あそこでボーっとしてる熊野郎を挽き肉にして来い。あ、待て。首から上は残せ。いや、ステータスプレートもだ」


「了解ですぅ!次はルルが頑張るですぅ!!」


 ふんすっ!とルルは鼻息を荒くしてガディウスに向かって歩き出した。

 俺もルルの後を追うように歩く。


 リアルに血の海となった戦場は、歩を進める度にバシャリと音を立てる。

 視界には無数に転がる頭部と胴体。

 それは前世でも目にした事のない凄惨な光景だった。


冥王召喚…するべきか迷います。

キャラを考えてないので…

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