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咒言鬼神の転生譚 ~神に請われる神殺し~  作者: TAIRA
第4章 テスラ大迷宮探索
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第59話 テスラの意向


「しかしキルアス殿下、大公陛下はこの様に唐突な謁見の申入れをお許しくださるのでしょうか?」


「殿下はやめろってば。他国のスパイ防止活動はテスラにとっても重要な話だ。謁見の理由としては十分だろ」


「何となく解りますが…すぱいとは?」


「ん?ああ、暗部の様な諜報や暗殺を含めた工作活動を行う者の意だ。ま、テスラにも暗部に似た組織はあるだろうから既に把握してるかもしれんが」


 そうこうしている内に、父上の用意が整ったと近衛が伝えに来た。

 俺たちは近衛に案内でサロンへと向かった。

 サロンへ入るとそこには父上、宰相、軍務卿、そしてグレンの四名がいた。


 ジェイドの顔を見た父上の顔が険しくなり、細めた目を俺へと向ける。


「謁見をサロンにしたいという理由が解ったわ」


 ジェイドが俺の背後で膝を突き、騎士の礼を以て口上を始めた。


「テスラ大公陛下のご尊顔を拝し、恐悦至極に存じます。此度の不躾なる仕儀、何卒ご容赦ください。私はガルダイン帝国より参りましたジェイド・フォスタ・フォン・エスタシオンと申します」


「しかもエスタシオンであるか…全く以て青天霹靂ではあるが許そう。エスタシオン殿、頭を上げて楽にするがよい」


「ははっ!有難き幸せ。私のことはジェイドとお呼び捨てください」


「よかろう。それでキルアス、お前は何を企んでいるのだ?迷宮に潜ったと聞いたばかりだが、出てくるのが早すぎるであろう」


「迷宮で魔獣に集られてるジェイドたちを発見したから助けたんだ。父上はジェイドたちの入国を知ってた様だな。帝国の暗部がうろついてるのは?」


 俺の問いに対して軍務卿のガロイドが返答をする。


「キルアス殿下、エスタシオン殿は入国記録がないものの国境の街で一泊しております。報告には“恰も自分の入国を知らせるかの様に”とありました。不可解ですが工作員の類とも思えませんでしたので、監視に留めておりました。帝国暗部については迷宮入町にて八名を確認しております」


 ふーん、やっぱテスラにもあるんだ密偵部隊。

 暗部が八人ってのは有用な情報だ。ツーマンセルかな?


 軍務卿の返答を聞いていると扉の小窓が開き、外の近衛が紙切れを中の侍従に渡した。

 侍従がその紙切れを宰相に渡すと、読んだ宰相がニコリと笑い、父上に耳打ちを始めた。

 それを聞いた父上は小さく溜息をついて口を開いた。


「お前たちは一日で八十階層まで潜って階層主を討伐したのか?相変わらず有り得ん事をするな…」


 軍務卿とグレン、おまけに侍従までがニコリと笑った。

 対して、俺の対面に座っているジェイドは『マジで!?』と驚いた顔をしている。


「まーね。四十と六十はエルとルル、八十はジェイドとフェリが片付けた。エルが強くなり始めたから、その内に第一席にするといい。今のエルならルシェと互角だろう」


「なっ!?ルシェと互角とは…どっちのルシェだ?」


「悪い方のルシェと互角って意味だ」


 それを聞いた父上、宰相、軍務卿、グレンの四人が、今度は唖然とした表情に変わった。

 まあ、その気持ちは解らんでもない。

 今のエルは、ステータス値で言うと以前の2.5倍くらいに上がってるからな。

 畏るべくは鬼神の加護か。


「そ、そうか、テスラにとっては吉報だな。エルランテ、お前が戻る日を楽しみにしている」


「はいなのです陛下!」


「ところでキルアス、見知らぬ顔があと一人と一匹いるが、どういう者だ?その淑女がフェリという名なのは判るが…」


「まだ紹介してなかったな。その爆乳がフェリ、大魔女フェリカだ。黒猫はフェリの協力で創生した俺の使い魔、名はグリムだ」


「皆さん初めまして。キルの身内だから名を明かすわ。あたしが大魔女フェリカ・アウテランタ・マギ・ウィリューロよ。あたしの名を誰かに漏らしたら呪っちゃうからね?因みにこの胸も含めてあたしはキルだけの物よ♪」


 ジェイドを含む全員が色んな意味で驚愕した。


 嗚呼そうだ…こいつはアホだった。

 千年も生きちゃってるもんだから、定命者の身分なんて気にしねーんだった。

 俺も人の事は言えないんだけどね…


「う、うむ、承知した。まさか大魔女フェリカが貴女の様にうら若き淑女とは…」


「あらお上手ね♪流石にキルの御父上だけの事はあるわ」


「フェリ、もういいから黙れ。グリム、お前を城へ使いに出す事があるだろうから挨拶しとけ」


「僕はご主人様の使い魔グリムにゃ!おっぱい姉さんと違って僕は呪ったりしないにゃ。よろしくにゃー」


「「「なっ!?」」」


 父上、宰相、軍務卿の三人が仰け反り、『バカな!?』という目を俺に向けてきた。

 いや知らんし。俺もお喋り猫なんて造るつもりなかったし。

 そう言えば、グレンはラッグスのとこでグリムに会ってたっけ。


「あーもういいから。驚くだけ精神力のムダだって。グリムはこう見えて金属生命体だ。水銀のように流体化もできるし擬態もできる。隠密能力も高いから、忽然と現れては消え去ると認識しておいてくれ。グリム、実演しとけ」


「了解にゃ!」


 グリムが融けて床に銀色の水溜まりを作り、そこから隆起して俺に擬態した。

 続け様にこの場の全員に擬態し終わると、気配と魔力を隠蔽して虚ろな存在と化した。


「こんな感じだ。因みに少し前の俺と同等のステータスだから、下手に害意や敵意を持って手を出すと死ぬからな?必要な範囲で周知しておいてくれ」


「グレンの報告書は読んだが、まさかこれ程とはな。お前は世界征服でもするつもりか?」


「そんな面倒な事はしないって。そんな事よりも父上、ここからが本題だ」



 俺は父上たちにジェイドが置かれている状況を話した。

 帝国の内情に皆は酷く顔を顰めたが、続けて説明した俺の計略と意図を聞いた後に多少は落ち着いた。


「キルアスの意図は理解した。いきなり帝国と友好を結ぶのは無理だが、仮想敵国でなくなる方向性は歓迎すべきものだ。ルイド、ガロイド、お前たちはどう考える?」


「先々代から今代に至る歴代皇帝は友好的な人柄だと聞いております。帝政がキルアス殿下からお伺いした状態であれば、此度の計略成就が友好を促進する善き契機となりましょう。ジェイド殿を前にして言うのも何ですが、帝国三大公爵家が諸悪の根源であるとの認識は六大国に共通したものにございます。一角なりとも崩せれば、世界情勢安定化への貢献ともなりましょう」


「某も宰相殿に同意致す所存。世界各国で暗躍を続ける帝国暗部が、三大公爵家により運用されておるは周知の事実。しかしながら、トカゲの尻尾切りに長けておる故に暗部の全容を把握するには至っておりませぬ。潰せぬまでも内部情報を得られるならば、テスラのみならず友好各国の被害も減らせましょうぞ」



 国政の上層部ってのは、色々と考えてるもんだな。

 文明水準からして自国益が最優先なんだろうけど、この世界には文明水準に見合わない世界規模の連携が在る。

 神だの魔術だの魔獣だの、環境や国力に左右されない特殊な共通項が存在するからだろう。


 ま、世界規模の共通危機が存在すれば、どんな世界でも連携が強化されるのは必然か。

 それを考えると、帝国の豚共は盲目とさえ言える。

 欲望ってのは、ともすれば厄介極まりないな。



「よし、父上たちの理解も得られた事だし、先ずは八人の暗部を捕獲して情報を引き出すか」


「キル殿、暗部は口を割る前に自害するような者どもです。奴らの監視から逃れる方が得策かと」


「ジェイド君、俺を相手にして逃げる、口を噤む、自害するなんて不可能なのだよ。俺はフェリほどサディスティックじゃないが、『喋らせてくれ』と言わせるくらいは容易い」


「…失言でした。あの惨状を生み出したフェリ殿を従えるキル殿ですからね…」


「ちょっとジェイド、あなた認識不足も甚だしいわよ?あたしに突っかかってきたサキュバスが戦闘モードのキルと対峙してたら、秒速で泣いて漏らして命乞いをしてるわ」


「お前らは俺を何だと思ってるんだ?」


「だってぇ、ステータスのクラスに“凶”が付いてる魔導戦闘士なんて、あたし見た事も聞いた事もないわよ?」


「凶魔導戦闘士、ですか。それは出会いたくありませんね…」


「くっ…神々め、余計な文字を足しやがって…いつかぶっ飛ばしてやる」


「キルアス!?神々をぶっ飛ばすなど言わんでくれ。本当にやりそうで胃が痛くなるわ」


 敬虔な信徒である父上たちが顔を引き攣らせていると、化け猫でバカ猫のグリムが爆弾を投下した。


「ご主人様は次の進化で五柱神を超える、って神核が言ってたにゃ!」


「キル様が神殺しになるですぅ!?」

「殺さないで上げて欲しいのですよ!」

「ウフフフフフッ!クソ破壊神は終わったも同然ね♪」

「キル殿!公爵家はともかく、帝国を消滅させるのだけはご勘弁をっ!!」


「余計な事を言うなグリム!ややこしくなるからお前らも黙ってろ!」



 父上たちは三白眼となり、侍従はガクブル震え始め、運悪く茶を淹れに来てた侍女が腰を抜かして尻餅を突いた。


 俺は蟀谷が盛大にピクつくのを抑えながら、この鬱憤を暗部の八人で晴らすべく、瞬間移動で屋敷の玄関へ飛んだ。



「お帰りなさいませキルアス様。お早いお戻りですね」


「キルおかえりー」


「ああ、ちょっと野暮用が出来てな。クリスタ、ラウニ、コーヒー牛乳スゲー美味かったぞ。また作っといてくれ」


「はい。喜んで頂けて嬉しいです」


「ラウニも嬉しいー」


 二人にジェイドを紹介したが、ジェイドにはラウニが見えない様だ。

 ラウニは妖精でコーヒー担当者だと教えたら、ジェイドは明後日の方向に頭を下げて『究極の美味でした!』と礼を述べていた。


 それを見たラウニが『フッ』と嗤った顔は黒かった。

 ラウニは自分が見えるか見えないかで、その人間に対する評価が多大に変わるみたいだ。



 俺はリビングで一息ついて、皆に暗部捕縛に関する段取りの説明を始める。


「なあジェイド、八名の暗部が来ているという話だが、その人数を妥当だと思うか?」


「はい。通常の派遣人数と比較すれば多過ぎますが、私が標的である事を考えれば妥当かと。キル殿はどうやって暗部を特定するつもりですか?」


「暗部みたいな連中を誘き出すなら囮を使うのが常套だろう。さっき迷宮入町で瞬間移動をする前に暗部らしき気配を二つ感知した。あいつらジェイドを見失ったもんだから今頃は慌ててんじゃないか?」


「キル殿の言う囮とは…グリム殿ですか?」


「当然だ。グリムの擬態は外見や癖だけでなく魔力の波動や量、生体波動まで偽装できるからな」


「波動まで偽装できるのですか…」


「って事でグリム、お前は迷宮入町へ行ってジェイドの姿でウロついて来い」


「了解にゃ!お仕事にゃー♪」


 ジェイドに擬態したグリムが普通に宿へ泊り酒場でメシを食い、『これからどうすべきか…』みたいに悩んでる素振りをすれば食いつくだろう。


 そうだな…任務遂行を諦めてないって体で、ギルド出張所へ行って臨時パーティーの募集をするのもいいな。

 グリムが暗部八名と拠点、帝国への連絡手段を特定したら状況開始だ。


 俺は万全を期して、ジェイドの筆跡までグリムにコピーさせた。

 グリムは友達の家へ遊びに行くかの如く、嬉々として迷宮入町へ向かって行った。



「さて、暗部がジェイドを探して公都へ来ている可能もあるから、皆は屋敷でのんびり待機してろ。外出禁止とは言わないが、迷宮入町で暗部に俺たちの顔を見られた可能性がゼロじゃないって事は認識しておけ」


「はーい!ルルはお風呂に入ってくるですぅ♪」


「あ、エルも一緒に入るですよ!」


「あたしは工房で役に立ちそうな魔術薬を調合するわ」


「いいだろう。俺はちょっと鍛冶屋へ行ってくる。ジェイドはクリスタに屋敷を案内して貰って好きに寛いでいてくれ」


「承知しました。ありがとうございます」



 俺は屋敷の玄関から、ガクトの店の裏庭へと瞬間移動した。

 念には念を入れて、表ではなく裏口から鍛冶屋へ入る。


「よおガクト」


「うおっ!?…なんだキルかよ。どこから入って来やがるんだ」


「ちょっと事情があってな。今はあまり目立ちたくないんだ。神鋼の方はどうだ?」


「絶好調だぜっ!神鋼ってのはすげーな!熔かして鍛えされ出来れば、どんな金属とも抜群に馴染む。キルの刀剣は仕上がってるから具合をみてくれや」


 そう言われて作業台に視線を向けると、そこには帯刀用の金具が付加された俺の刀が鎮座していた。


 刀を手に取り確認する。相変わらず重い。

 鞘の背に二箇所と差裏に一箇所、穴の開いた金具が打ち込まれ、リング状の金具で固めてある。


「注文どおりだな。いい出来だ」


「そりゃ良かった。その刀剣は鞘までバカみたいに硬いな?鉄に鉄を打ち込むくらい苦労したぞ」


「何から何まで特殊な刀剣だからな」


 俺はそう言いながら一本の紐と象嵌細工を収納から取り出した。

 紐を三つの穴へ順に通し、紐の両端を象嵌細工に噛ませて魔術で相対位置を固定する。


「ほぉ、そういう目論見だったのか。変わった帯刀の仕方だな?」


「俺は格闘戦もやるからな。動いてる時に鞘が暴れるのは嬉しくないんだ。まあ、刀剣を使う時だけ収納から取り出せばいいんだが、腰に提げて歩きたい時もあるだろ?」


「ガハハ!違ぇねぇ!刀剣ってのは見て善、斬って善じゃねぇとな!」


 刀を腰に提げたままクイックな動作を取ってみる。

 鞘の鐺が多少フラつくが、通常戦闘なら問題にならないだろう。


「重くて持てねぇから吊り合いを心配してたが悪くはなさそうだな。しかし…そんな細い紐で大丈夫なのか?」


「ああ。この紐は古代竜の髭を割いて撚り合わせた物だ。切ろうと思っても切れる物じゃない。象嵌細工の方も古代竜の牙だしな」


「ハハハ…世界一の商人でもそんなモン持ってねぇぞ…」


「だろうな。これも貰い物だが、自分で見つけるのはムリだろう。ところでガントレットと戦杖はどうだ?」


「ああ、戦杖は明日にも完成する。ガントレットは注文された構造が複雑だから…明日から数えて四日後ってとこだな」


「それでも早いな…俺の注文に付きっ切りじゃないのか?」


「まぁな!だが、こんな注文を受ける機会なんざ普通は一生待ってもねぇよ。俺ぁ楽しくってしょうがねぇんだ!」


 漢臭く笑いながらそう答えたガクトの目は、鷹が獲物を狙うかの如き鋭いものだった。

 俺はそんな職人気質を面白くも頼もしいと感じながら、再び裏口から出て屋敷へ瞬間移動した。


もう章題から逸れる気まんまんです…

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