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咒言鬼神の転生譚 ~神に請われる神殺し~  作者: TAIRA
第4章 テスラ大迷宮探索
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第58話 魅惑と悪夢

いま猛烈にオムライスが食べたいです。(話とは無関係です)

楽しんで頂ければ幸いです。


 ザックリとした今後の計画をジェイドと相談した俺は、早々に寝る事にした。

 ジェイドは道筋が見えてきた事で、多少は憂いも薄らいだらしい。


「…おい、ルルとフェリは解る。いや解りたくはないが仕方ない。しかしだ、何故エルまでそんな恰好で俺のベッドに居る?」


「そ、そそそんなに見ないでなのです!恥ずかしいのですよ…」


 こいつもバカ様か?

 見られたくないなら来るなという話だ。


 エルがスッケスケの白いワンピースだけを纏って俺のベッドに座っている。

 羞恥で全身を上気させているため、それはもう真っ赤だ。赤エルフだ。


「で?またフェリの仕業か?」


「違うわよ!今回はエルちゃんの申し出を受け入れただけだもの」


「…何だそれ?エルも俺に抱かれたいって事か?」


「だだだだだだだだだ抱くっ!?キルアス様がエルをっ!?」


「会話にすらならないのかよ…。無自覚にそんな恰好をするんじゃない。取り敢えず出て行きなさい」


「それは嫌なのです!ここに居るです!」


「あぁ…眩暈がしてきたぞ。まあいい、起きたらお前たちに話そうと思ってた事があるから、今ここで片付けるとしよう」


 俺はジェイドに関して知り得た事柄を全て話し、起きたらソッコーで八十階層の階層主を始末して、迷宮探索を一時中断すると告げた。


 ルルたちは至極普通に『はーい』と返事をして、探索中断と帝国問題への介入を了承した。


「いやいや、お前ら簡単だな?『他国への介入は良くないよ』的な意見はないのか?」


「ルルはキル様に付いて行くですぅ。何があっても何処へでも、ですぅ♪」


「私もよ。キルと一緒なら世界を敵に回しても構わないわ♪」


「エルは陛下へのご恩返しがまだですから、キルアス様の元へ行くのはもう少し先なのです。でもでも、帝国を仮想敵国としてる国は多いですし、キルアス様なら帝国を相手にしても平気だと思うです。だから止める理由がないのですよ」


 懸念していたエルからの反発がないのには驚きだ。

 てっきり『絶対ダメなのですよ!』とか言われると思ってた。


「そうか、お前たちの理解を得られて嬉しいぞ。まあ、お前たちの手を借りるとしても、常識の範囲内かつ危険度の低い事柄に止めるから安心してくれ」


「エルは宮廷魔導士ですから、帝国領土内での行動は出来ないですよ?」


「それは解ってる。エルには公都の防衛関連や父上への連絡役を頼むつもりだ。それなら責務範囲内だろ?」


「それならエルにお任せなのですよ!」


 エルはそう言って胸を張り、右手で自分の胸をポンと叩いた。


 ふむ…着痩せ説は真実だったらしい。ぷるるんっと揺れた。

 体脂肪率がかなり低い様で、手足が細くて腰もかなりくびれている。

 その体にほぼCカップの胸があるから、余計に大きく見える。

 それにしてもエルは色素が薄いな。日焼けしたら痛そうだ。


「さ、俺はもう寝る」


「ルルはキル様の右腕ですぅ♪」


「私はキルの左腕♪」


「エ、エルはキルアス様の上に…ひゃっ!?お、お、大きいのですよ…」


 エルと比べれば、大抵のヤツは大きいだろうに。

 しかしエルは軽いな。グリムと大して変わらないんじゃないか?

 まあ、グリムは金属だし当然か。


 自作ベッドの効果を実感しながら、俺は眠りに落ちた。




 目が覚めて時刻を確認する…06:00か。

 実は懐中時計を造ってみた。

 初めは機械式に挑戦してみたが、知識不足で断念した。だからクォーツ式。

 電子回路設計は得意だから、それを魔導回路に置き換えて水晶振動子で調速している。

 些細な事だが、この星は24時間ではないみたいだ。おそらく25時間くらい。

 自転周期とか地軸の傾きを調べるのが面倒だから放置だ。

 神核と同調すれば正確に調速できそうな気もするが、文明水準からして一時間なんて誤差の範囲だから別にいい。


 ちゃっちゃと支度を整えてテントを収納に放り込む。

 折角だから八十階層まではやっつけておくべきだ。


「はい。という事で、テスラの探索者たちが連敗を喫している八十階層へ来た訳だが…階層主の情報を持っている人は挙手!」


 エルとジェイドが手を挙げた。

 知ってるのはエルくらいだろうと思っていたが、ジェイドはここの討伐が任務だったな。


「じゃあ、実はCカップくらいある着痩せエルフのエル、答えろ」


「ななな何て事を公表してるですかっ!?お嫁に行けなくなるですよっ!!」


「心配するな。嫁の貰い手なんぞ山ほど現れるだろう。脱げばな」


「ホントにそう思ってるです?信じるですよ?」


「信じるも信じないもエルの勝手だ。いいから答えろ!」


「うぅ…。ここはクィーンサキュバスなのです。男性探索者は魅惑でメロメロ、女性探索者は幻惑でフラフラになって連敗なのです。これまで九人の探索者が死亡したです」


 サキュバスの上位種か。魔獣大全には綺麗なお姉さんって書いてあったな。

 男の探索者がメロメロになると戦いにならないか。

 しかし魅惑は魅了の下位互換だよな?クィーンなのに?まあいいか。


「よし、ここはフェリにやらせる予定だったが若干の修整を加える。先ずはジェイド、戦闘力を見たいからお前が単独でやってみてくれ。俺の合図でジェイドは退いてフェリと交代だ。フェリは手早く始末しろ。いいか?」


「承知しました」

「任せて♪」



 都合の良い事に待機パーティーもいない。

 俺が扉を押し開くと、何とも艶っぽい声が聞こえてきた。


「くふっ…素敵な殿方が現れたみたいね。嬉しいわぁ」


 声の主は階層主、クィーンサキュバスだ。

 燃える様な赤髪に漆黒のタイトドレス。

 ルルと同等のプロポーションである事から、魅惑を掛けられる以前にメロる男もいるかもしれない。


「そっちこそ大した美形じゃないか。ただ、お前の相手をするのは俺じゃなくコイツだ」


「あら残念ですこと。でもいいわ、其方の殿方も十分に素敵でしてよ。私のお人形さんにして愛でてあげるわ」


「私は魔の者に愛でられる趣味を持ち合わせていませんので悪しからず。では、推して参る!」


 ジェイドが抜剣して走る。

 クィーンサキュバスとの距離は大凡30m。

 クィーンサキュバスは人差し指を唇に当て、余裕の表情で待ち構えている。


「はぁっ!」


 ジェイドが右脇構えから左上へ斬り上げると、クィーンサキュバスは飛ぶ様にバックステップを踏んで回避する。

 それを予測していたジェイドは斬り上げている右手首を返し、膂力を以て突きへと変化させた。


「くっ!」


 クィーンサキュバスが一瞬だけ目を細め、剣筋を見極めつつ半身になってジェイドの剣を往なした。

 ジェイドはそれをも予測しており、突き出した剣を引き戻しながら逆手に返し、左肩でショルダータックルを仕掛けながら、剣柄をクィーンサキュバスの腹部へ挿し込んだ。


「ぐっ!?」


 クィーンサキュバスはジェイドの左肩に右手を当て、ジェイドの突進力を利用して自ら後方へ弾け跳んだ。


 ジェイドとクィーンサキュバスが5m程の距離を取って再び対峙する。

 剣柄を当てられたクィーンサキュバスの腹部から赤黒い血が流れた。

 正眼に構えたジェイドの剣柄からは柄頭が外れており、柄尻から短剣の切っ先が跳び出している。

 ジェイドの長剣の柄には、魔力で動作する短剣が仕込まれている様だ。


 腹部から流れる血を指で拭ったクィーンサキュバスが、その血を唇に塗りながら口を開いた。


「なかなかやるではありませんか。だけど、騎士殿の武器にしては些か無粋ね」


「騎士の見栄など何の足しにもならぬ…と教示されたばかりなので。しかし、惑わしを得手とする魔の者に無粋などと言われる筋合いはありませんね」


「仰いますこと。その惑わしで貴方が恍惚としながら私を求める姿が…凄く見たいわぁ」


 赤色だったクィーンサキュバスの目が紫色を帯び始め、双鉾に魔力が収束していく。

 対してジェイドは初動と比較にならない速度を以てクィーンサキュバスに肉迫した。


「ほぉ、やはり魔力の直接操作が出来るかよ」


 クィーンサキュバスが目を見開き、その双鉾から紫色の光が放たれようとした瞬間、クィーンサキュバスの左腕が肘の位置で斬り飛ばされた。


「交代だ!」


 俺がそう叫ぶと、二撃目の動作に移っていたジェイドが剣を引き、大きくバックステップを踏んで退いた。

 と同時に、俺の傍らにいたフェリがクィーンサキュバスに向かって悠然と歩を進め始める。


 退いたジェイドに片腕を飛ばされたクィーンサキュバスが激高して叫ぶ。


「おのれっ!逃げるかっ!?」


「うるさいわねぇ。あたしが少しだけ遊んであげるわ、色欲のお嬢ちゃん」


「お前のような小娘が私をお嬢ちゃんだと!?」


「あら?女王然としてた口調が崩れてるわよ?まぁ、こんな浅い階層の主なんて、その程度よね」


「浅い、だと?その程度、だと?人間の女風情が言ってくれるなぁっ!」


 クィーンサキュバスの紫色だった瞳が青色に変わっていく。

 色調で効果が変わる魔眼の様だ。

 変調しなければ使えないなど、魔眼と呼ぶのも烏滸がましいが。


 クィーンサキュバスの双鉾が青で満たされ、集束した魔力と共に光となって放たれた。


「くふっ、これでお前は只の肉人形だよ、小娘」


「…何を言ってるのかしら?あたしの肉体で遊んで良いのはキルだけよ?」


「なにっ!?なぜ効かない!?おま…え…」


 クィーンサキュバスの言葉が途切れる程に、狂気の如きフェリの魔力が戦杖の宝玉に集束されていく。

 宝玉の放つ白光が黒光へと移ろい、戦杖から漏れ出した黒い魔力をフェリがその身に纏った。


「ウフフ。死して尚終わらぬ悪夢で魅せてあげる。未来永劫…楽しんでね?」


「ひっ!?ひぃっ!その魔力…破壊…神…」


「ムカつく名前を出してくれるわね…【冥狂禍】」


「ひっ!?ひいぃーっ!?いやっ!いやっ!やめっ!やめっ!いやぁぁぁーっ!」


 どんな悪夢を見せられてるんだろうか…

 クィーンサキュバスが自分の指を目に突っ込んで眼球を抜き出してる…

 うわぁ…胡坐かいて、とんでもない部分に腕を突っ込んで…なっ!?何か引き摺り出したぞっ!?

 だ誰かっ!大至急モザイクをっ!!


「悪夢を見てるサキュバスを見てる俺が、悪夢を見てる気分なんだが?」


「ルル銀狼なのに…全身が鳥肌になってますぅ…」


「あ、あんなとこに腕って入るのですね…なんかキュッてなったです…」


「あれはダメにゃあ。R18どころか、R人類にゃ」


「フェ、フェリ殿は何であんなに楽しそうなんでしょうか…」


 クィーンサキュバスの狂気的な絶叫をBGMに、フェリが『ルンルン♪』と軽い足取りで戻って来る。

 爆乳がタプンッ!タプンッ!と誇らしげに揺れている。


「皆どうしたの?あ、時間のかけ過ぎかしら?あと数分で終わるから待ってね?」


「フェリ、どんな悪夢を見せてんだ?」


「さあ?本人が最も嫌悪する事象を千倍に増幅して見せてるの。『何を見てるのかしら?』って想像すると…ゾクゾクするでしょう?」


「「「「「………」」」」」


 コイツは取扱注意だな。

 あ、クィーンサキュバスがやっと死んだ。

 成仏すらさせて貰えないらしいが、頑張って挑戦して欲しいと思う。


「クィーンサキュバスの素材価値って誰か知ってるか?」


「サキュバスで値が付くのは、眼球の水晶体くらいね。でもさっき自分でムシャムシャ食べてたからもうないわよ?」


「ですよね…」


 未到の階層主は討伐証明が必要なので、階層主だと特定できる部位を回収しなければならない。

 こういう時に人型の魔獣は困るのだ。いや、綺麗に死んでいるなら首を回収すのも大して抵抗はない。

 しかしあの状態だ。あれを回収するのはキツイ。


 俺はクィーンサキュバスの凄惨な死骸を遠目に見ながら、『収納したくねぇなぁ』と思いながらも勇気を振り絞って収納と思考した。


 収納直後に思わず大きな溜め息をついた俺は、牙と尻尾が生えたフェリを幻視しながら部屋を出て、階下の送還ポータルを目指して歩く。

 ルルとエルが、普段より10cmくらいフェリから離れて歩く光景が印象的だ。




 迷宮を出た俺たちは、迷宮入町の探索者ギルド出張所へ行き、帰還通知と八十階層の討伐報告をした。


 周りにいた探索者たちから称賛や質問を受けたが、『疲れているから』と包囲網を突破した。

 出張所の職員からは『討伐証明が見てみたい』と請われたが、公都の本部に引き渡すと告げて退散した。


「こう注目を浴びると瞬間移動も使い難いなぁ…」


「ですよねぇ」


「後を付けてきてる新人ぽいのもいるし、このまま雑木林へ向かうのは得策じゃないな…」


「どうするです?」


「歩きながら術式を創るから人目を避けられる場所へ向かって歩いてくれ」


「わかったわ」


「じゅ、術式を作れる…のですね。そうなんですね」


 辛うじて疑問形で問うのを堪えたジェイドを心中で褒めつつ、俺は姿を消す術式を造った。


「よし、ここでいいな。重境合式―不可視迷彩」


「皆が消えたですぅっ!?」


「バカ!遮音はしてねーんだから大声出すな!」


「ごめんなさいですぅ…」


「このまま飛ぶぞ。ゲーティング」



 転移を済ませ、俺は不可視迷彩を解除した。

 ジェイドがポカーンと口を開けて周囲を見回しているが放置だ。


「ねえキル、さっきの不可視迷彩ってどういう意味?幻術じゃなかったわよね?」


「あれは人間の目に見える光だけを遮断する術式だ」


「ああ、意味が解らないわ…科学ってヤツね?」


「そういう事だ。暇な時に教えてやるよ」


「楽しみにしてるわ!」


「すみませんキル殿、此処は何処ですか?」


「ここは公城の俺の自室だ」


「なっ…なるほど。『討伐したら公城へ直行する』と言われたのは、こういう意味だったのですね…」


 俺は『そうだ』と答えながら自室の扉を開け、廊下の突き当りの定位置に立っている近衛兵に向かって手招きした。

 ガシャガシャとプレートメイルの音を鳴らしながら、近衛兵がダッシュでやって来る。


「お帰りなさいませ、キルアス殿下」


「ああ、俺が客を連れて来たと父上に伝えてくれるか?父上の時間が取れるまで此処で待っている」


「畏まりました。侍女を呼びますので暫くお待ちください」


「気が利くな。頼むよ」


「ははっ!」


 息を切らせてやって来た侍女にお茶と軽食を用意して貰い、俺たちは父上からの声掛かりを待った。


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