表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咒言鬼神の転生譚 ~神に請われる神殺し~  作者: TAIRA
第3章 公都での暮らし
46/76

第45話 使い魔グリムにゃ!


 意識が徐々に覚醒していく中、俺は寝惚けた頭で記憶を辿る。


「ぅん…あ?…あぁ…魔力枯渇で…」


 未だに重い瞼を薄っすらと開けると、ラウニが俺の顔の横で気持ちよさそうに寝ていた。

 俺は体を起こそうと利き腕である右腕に軽く力を入れるが、肘を畳んだ状態で何かに拘束れていて動けない。


 腕が動かせないならと右手に力を入れれば、懐かしいような新感覚のような、やたらと柔らかい感触が伝わってきた。

 俺はそれが何なのかを確かめるように、右手で丁寧に弄る。


 ぷよん?スゲー柔らかいけど重量があるな…ん?この突起は何だ?


―――さわさわ、モミモミ、コリコリッ!


「ぁっ…ぁん…ぁんっ…ぁんっ!」


 俺の右手と連動するように、右側から艶めかしい声が聞こえた。


「なん…だと?」


 俺は自由な左腕に力を込めて上半身を起こし、声のした方へ視界を移した。

 そこには、俺の右腕を抱き込むようにして眠っている、全裸のフェリがいた。

 俺の右手はフェリの右乳をしっかりと掴んでおり、人差し指と中指の間からは、桜色の突起が己を主張するかのように隆起している。


「なんて立派な…じゃない!コラ!フェリ!寝てるのは解るが、なんで全裸なんだっ!」


「ぅん…ぅ~ん。ぁ…キル…ぉはょぉ…」


 ラウニも目を覚まし、ふわふわフラフラと飛んできて俺の膝上に着地した。

 フェリが俺に絡めていた腕を解き、目を擦りながら起き上がり、女の子座りで俺に体を向けた。

 俺はラウニなどには目もくれず、フェリの肢体に見入ってしまう。


「なんつー凶悪な…。くっ、無毛だとっ!?」


 思わず口を突いた俺の一言に、フェリが頬を赤らめながらも追撃を開始する。

 組んだ腕で両の乳房を持ち上げ、俺に差し出すようにしながら上目がちに言った。


「気に入って…もらえた?そんなに見られたら…少し恥ずかしい…かも」


「………」


 俺の脳は『何か否定的な言葉の一つも返さなければ!』と思考するが、余りにも見事なフェリの造形には抗いようもない。

 そんな俺の心中を見破ったかのように、フェリが俺にしな垂れかかってきた。

 俺の二の腕を挟み込んだフェリの乳房が形を変える。


「このまま…いいのよ?」


「フェリカはダーメッ!ムダに大っきなおっぱい禁止なのー!」


「ぬおっ!?」


 俺はラウニの声でようやく思考を取り戻し、フェリの肢体から視線を外しながらフェリの体を押しやった。


「もうっ!あと少しで計画どおりにいくとこだったのにっ!ラウニのおバカ!!」


「ほらー!フェリカは悪い魔女っ子だー!」


「計画どおり…だと?」


 俺が目を細めてフェリに視線を合わせると、フェリがヤバッ!といった風に目を泳がせた。


「ったく、普通にハニトラ食らうとこだったぜ。前世を併せたって俺もまだ三十代、ヌルいってことか…」


 俺の呟きを聞いたフェリが、シーツで体を覆いながら俺に問いかける。


「キルって死んで転生したんじゃないの?あ、元々神格持ちだから、体を失ったの?」


「ん?いや、俺の神格はちっと特殊らしくてな、体も不滅だったんだ。フェリが言うところの呪詛みたいなもんかな。俺は体が傷を負うと、周囲の生命力を吸収して復元・再生するんだ」


 フェリが『うっそーん』みたいな目で俺を見ている。

 俺だって良く解ってないんだから、これ以上の説明は不可能だ。

 ラウニはフェリの胸に特攻してはボヨンと跳ね返され、それを繰り返して遊んでいる。


「もう鬱陶しいからやめてよラウニ!私の胸はラウニのじゃなくて、キルの玩具なんだからっ!」


「ケチー。フェリカはラウニにお洗濯の恩をかえしてないー!」


 どっちもどっちで、どうでもいいやり取りを眺めていた俺は、ふと重要な事を思い出した。

 部屋の中を見回してみるが、それらしいモノもなければ気配も感じない。


「おいフェリ、使い魔はどうなった?まさか、失敗したなんて言わないよな?」


「使い魔ね…。創生は出来たのよ?でもあれって…失敗、なのかしら?」


 フェリは顎に人差し指を当てて『どうなのかしら?』と要領を得ない事を言いながら、視線を彷徨わせている。視線を彷徨わせていると言うよりは、何かを探している様でもあった。


「兎に角、その使い魔をここに連れて来てくれ。成功か失敗かは俺が――っ!?」


 俺は背後に微小ながら唐突に現れた気配を察知し、反射的にその気配を鷲掴みにした。


「ぎにゃっ!バレたにゃ!?」


 俺の手には、頭部を正面から鷲掴みにされ、ジタバタともがく黒い生物が在った。

 黒い生物は『頭潰れるにゃ!凄惨なビジュアルにゃーっ!』と叫んでいる。


 俺が鷲掴みのままフェリに視線を戻すと、フェリは黒い生物を指さしながらコクコクと頷く。

 俺はその仕草を可愛いと思ってしまったが、看過できない問題だと気を取り直して尋ねる。


「フェリ、俺は黒猫タイプの使える使い魔とは言ったが、喋るオモシロ黒生物を造れとは言ってないぞ?」


「そ、そんなこと言われても、私にも解らないんだもん!勝手に行動して喋る使い魔なんて、私も初めて見たんだから!」


 俺は鷲掴みにした手を自分の眼前に持ってきて、逆の手で首を掴み直して使い魔の顔を観察する。

 その使い魔は、俺がイメージした通りの黒猫だった。

 短めでビロードのような漆黒の体毛、ピンと三角に立った耳、全てを見透かすような青く澄んだ双眼。

 ここが地球だったら“さぞ高価な血統書付きの黒猫”だと思われるだろう。


 すると、脱力してブラーンと吊られた状態の使い魔が、淡々と指摘してきた。


「なんで首をまるっと掴むにゃ。せめて首の後ろを摘まむにゃ。普通のネコなら窒息死にゃ」


 何だこの自己主張の激しい使い魔は…

 使い魔ってのは、造った主人に従順で忠実なんじゃないのか?

 俺が再びフェリに視線を向けると、フェリは肩を窄めて両掌を上に向け『わかりませーん』のジェスチャーを返してきた。

 俺は使い魔に視線を戻し、気になっている事を問う。


「さっきまで気配を感じなかったんだが…お前、ずっとこの部屋にいたのか?」


「ご主人様が寝てる時も乳揉んでる時も、僕はずっといたにゃ。ご主人様がそういう風に造ったにゃ。もしかして、ご主人様はバカにゃ?」


 俺はカッチーンときて、首を握った手に殺気と力を込めた。


「ジョークにゃーっ!?ごめんなさいにゃ!首っ!首が千切れるにゃっ!?」


「なんだお前、使い魔のくせに首が千切れたくらいで壊れんのか?」


「それくらいで壊れるわけないにゃ。気持ちの問題にゃ」


「気持ちって…クソ生意気な使い魔だな?」


「ご主人様は、自分に『クソ生意気なヤツだ』と言ってるようなもんにゃ」


「…コノヤロ」


 フェリはともかく、ラウニまでもが使い魔の発言に頬を引き攣らせている。


「ご主人様、早く僕に名前を付けるにゃ。ご主人様の最初の仕事にゃ!」


「いや、処分して造り直そうかと思ってな。フェリ、素材はまだあるか?」


「にゃ!?ヒドイにゃ!イヤにゃ!使い魔ハラスメントにゃー!!」


 今まで脱力していた使い魔が、ジタバタともがき始める。

 改良したストライクガンの動く的にでもしてやろうかと考えていたら、フェリがそーっと手を挙げた。


「ん?どうしたフェリ」


「あのねキル、主人に長年従属した使い魔が、極希に片言なら話せるようになる事例があるわ。でもその使い魔、間違いなく知性を持っているじゃない?すぐ処分するのは勿体ないかな?って…」


「あんたイイコト言うにゃ!ムダにおっぱいが大きいだけかと思ってたにゃ!」


「キル、その猫は今すぐ処分するべきだわ」


「にゃっ!?軽いジョークにゃ!ご主人様はそのおっぱいにメロメロにゃ!ご主人様と繋がってる僕が言うから間違いないにゃ!もっとイイ情報も教えるにゃー!」


 フェリがピクッとその言葉に反応し、鋭利に細めていた双眼を柔和なものに戻した。

 次の瞬間、フェリは俺の手から使い魔を掻っ攫って部屋の隅へ移動すると、使い魔と何やら話を始めた。


「―――――わかったわね?」


「わかったにゃ!」


「―――――絶対、だからね?」


「僕に任せるにゃ!これでご主人様はおっぱい姉さんのモノにゃ!」


「おっぱい姉さん言うな!」


 フェリと使い魔がニコニコしながらベッドに戻ってくる。

 俺は頬を引き攣らせながら、間違いなく結託したであろう一人と一匹に問いかける。


「なかなかファンキーな真似をするじゃないか。あれか?魔女も使い魔も消滅願望持ちか?」


「ちょっ、ちょっと待ってよキル。処分はいつでも出来るでしょ!?その前に、この使い魔がどれくらい使えるか、試してみてもいいじゃない!ね?ね?」


「そうにゃ!なるべく難易度の高い命令がいいにゃ!ご主人様の度肝を抜いてみせるにゃ!」


 結託した一人と一匹に上手く乗せられているのは解っているが、まぁ性能評価をしてみるのも悪くはない。

 しかし難しい命令ねぇ、何かやる事あったっけか…


 使い魔としての性能評価が出来る事柄を思案していた俺は、父上から受けた依頼を思い出した。


「おい、テスラ大迷宮に潜って、深めの階層に落ちてるルシェってヤツの遺品を回収してこい。但し、回収履歴が残る正規ルートでだ」


「キルぅ、それは難しすぎるわよぉ。使い魔が正規ルートで潜れる訳ないじゃない」


「わかったにゃ!そんなの簡単にゃ!」


 俺は正直なところ驚いた。

 この使い魔は、迷宮の事を何もきかないままに“簡単”と言った。

 もし聞かれても答える気はなかったが、使い魔は知ってか知らずか、正規ルートで遺品を回収できると考えている。


「ご主人様、早く名前を付けるにゃ!名前がないとご主人様から離れられないにゃ!」


「キル、使い魔は主人が名前を与える事で、主従が魔術的に固定されるの。だから名前を付けてお上げなさいな」


「名前か………タマ?」


「却下にゃ!前世の都市伝説的なネコ名でやっつけるのはダメにゃ!僕の性能と尊厳がダダ下がりするにゃ!!」


「お前…そんな事までわかるのか?」


 俺は再び驚き、フェリに視線を向けた。

 フェリは『わかんないわよ!』とばかりに首をフルフルと振っている。


「わかるに決まってるにゃ!名前はよ、にゃ!」


「そうだな…グリム、ってのはどうだ?」


「イイにゃ!不吉な響きがカッケーにゃ!今日から僕はご主人様の使い魔、黒猫グリムにゃ!」


 グリムがそう言うと俺とグリムの意識が接続され、グリムの意思や思考が俺の中に流れ込んできた。


『これでご主人様と僕はいつでも一心同体にゃ!』


『なるほどな…お前は俺の記憶や知識まで含む力を創生の時に受け継いだのか。迷宮の事を聞いてこないのも納得だな』


『そうにゃ!じゃあ僕は迷宮に行ってくるにゃ!』


 グリムが俺にそう告げた瞬間、グリムの気配と魔力が掻き消えた。

 この現象だけでも、グリムが高性能であろう事は明白だ。


「ネコ消えたー!?」


「ホントびっくりね…」


「俺もちっと驚いた。使い魔って記憶や魔術系統に、スキルまで受け継ぐんだな。オマケに念話まで使えるし」


「えっ!?そんな訳ないじゃない。使い魔は、主人となる者のイメージを魔術的に物質へ固定したモノなのよ?主人の記憶や力を受け継ぐなんて非常識…あぁ、キルの使い魔だものね…」


「キルのネコすごいー!」


 そういう事らしい。まあ、言われてみれば当然か。

 魔力を注ぎ込む事と魔術系統やスキルが受け継がれる事を、合理的に説明できるとは思えない。


「考えるだけムダだな。そうだフェリ、俺に魔装具の製造技術を教えて欲しいんだが?」


「いいわよ。何か造りたい装備があるの?」


「ああ、仲間がガントレットを両手装備で使ってるんだが、俺が改造したら収納庫に収納できなくなったんだ。それをどうにかしたくてな」


 俺はフェリに収納できなくなった予想原因を説明した。

 フェリが『それなら収納庫の術式仕様も教えて』と言うので、俺は収納庫についても説明する。


「なるほどねぇ。キルの魔力波動がその人の収納庫に干渉してるのね。その人の収納庫を、キルも使える仕様に変更すればいいんじゃない?」


「それが一番簡単で早いんだが、ガントレットの性能向上も併せてやりたいんだ。今のままだと下級悪魔をシバクのが精々だろうから、戦力不足が否めない」


 小一時間ほどフェリから魔装具を錬成するコツを聞いた俺は、魔装化する元の武器性能も重要なファクターだと理解し、腕の良い鍛冶師を探すことに決めた。


 フェリに『今夜は仲間を連れて来るから、引っ越しの準備をしておけ』と告げ、宿へ戻ることにした。


 ラウニを肩に乗せて宿へ戻ると、女将に『ルルさんが荒れてましたよ?』と言われた。

 俺は『そう言えば朝帰りだ』と思い至り、面倒だなぁと思いながら、重い足取りで部屋へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ