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咒言鬼神の転生譚 ~神に請われる神殺し~  作者: TAIRA
第3章 公都での暮らし
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第36話 領域解放と後始末


 逃走してしまおうかと思った程の破壊を創出した俺だが、どうやら無益な殺生はしていなかったようだ。


 しかしこのストライクガン、使い処が難しい武器に成り下がってしまったな。

 俺の魔素を追加供給したのが原因だろうか?

 技神の魔素だけでも、公都くらいは消滅可能だと言ってたしな。

 その例えはどうなんだ、と思わなくもない。


 あと、ビーム径も問題だ。ホモジナイザーの設定レンジを大きくしてみよう。

 直径50mくらいまで拡散させてから平行化とエネルギー密度均一化、これで試してみるか。


「ねえキル、本当にまたやるの?ちょっと賛成しかねるのだけど…」


「わかってるって。水平に撃つとヤバいから、今度は上空から垂直に撃つ。それなら光の範囲だけの破壊で済むだろ?」


「そうなの?この星に穴なんて開けないでね?」


「ちゃんと深さ方向も考えるから心配すんなって」



 とは言ったものの、深さ方向の破壊強度をイイ感じにするのは難しいな。

 こういう時には演算さんにお任せだろう。


『アイ、大凡でいいんだが、ターゲットの物性値を解析して、所望のビーム砲のエネルギー密度を計算できるか?』


≪はい、マスター。物性値は記録層からDL可能です。対ターゲットのビーム砲強度も演算可能です。ストライクガンと神核を魔力線で接続すれば、ビーム砲のパラメーターは思考制御が可能になります≫


 おぉ、それは便利だ。

 つーか、こんなモノを制御装置なしで運用する方が間違ってるよな。


『アイ、魔力線は常時接続にしてくれ。あと、網膜投影でも意識投影でもいいから、ストライクガン運用時にはターゲットスコープ的な表示をしてくれ』


≪はい、マスター。神核とストライクガンの接続および各種設定を完了しました≫



 俺はシールドを足場にして、再び上空へと駆け上った。


 試しにストライクガンを構えてみると、網膜投影式のターゲットスコープが表示された。

 ターゲットスコープは三次元マトリクス的な表示で、俺の視覚と思考情報からターゲティングする仕様みたいだ。


 これはコンピュータ制御より圧倒的に使いやすい。『これいくらいの範囲で深さ5m』と思考すると、ターゲットの直系や必要な魔素量と電気エネルギー量が数値で表示される。

 どうやら、ビーム形状は円形だけでなく、矩形やラインにも出来るみたいだ。


「上から見るとやっぱ広いな…。スゲー時間かかりそう。取り敢えず、外周から螺旋状にやっていくか」


―――ドウッ!ドウッ!ドウッ!ドウッ!ズドウッ!ズドウッ!ズドウッ!


「容赦ないのですぅ。笑いながらやってますぅ」


「エントワーズ森林が削られてるのです!わっ!?光がすっごく大きな四角形になったのですよ!!」


「星の欠片が落ちるよりも酷いわね」


「あの光って何なの?木も魔獣も、一瞬で溶けて消えてるんだけど…」


「あの武器ほしいの。ドウッ!ってやりたいの」


「キャル、貴方がアレを持ったら大変です。キルさんが二人になります」



 やっと終わった。

 直径50mのビーム径だと明日になりそうだったので、1平方キロの矩形ビームに変更した。

 それでもトリガーカウントは700発近くいっている。ザックリ東京都23区くらいの広さがあったみたいだな。


 ここを全部農地にするとか、広すぎじゅないか?

 前世でもメキシコとかアメリカの大規模農地は、地平線まで畑だったか。

 いや、それにしても広すぎだろ。生産性とかの問題だろうか?


 つーか、クレーター化したとこに大河の水が流れ込んで、超巨大な湖になっちまった。

 うーん、このままだと農地にできない気がする。いや、絶対にムリだ。


 ルルたちの元へ戻ると、グレイスが腕組みをして俺の正面に立った。

 …近い。近すぎて魔乳の先端が当たってるんですけど?デカイな…まぢで。

 確実に『これどうするのよ?』と言われるだろう。


「ねえキル、これどうするつもりかしら?」


「わかってるよ。途中から『湖になりそう』と思いながらやってたし」


「ふーん。じゃあ、対策は可能ということ?」


「当たり前だろ。俺は土の最上位、地殻魔術の使い手だぞ?」


「土系統の最上位が地殻だなんて、初めて知ったわ…」


 あら?そういう認識?

 もしかすると俺の魔術は、知られていないモノがいっぱい?


「因みに、火系統の最上位は何だ?」


「火炎ね」


「…水は?」


「水氷よ」


 …全然違ウーヨーネー。俺のは炎爆と氷冷だし。

 なるほど、こういう事もあり得るわけか。心のメモ帳に記入しておこう。


「ま、いいか。それならば、土の神髄を見せて進ぜよう」


 それっぽく見せる為に、俺は片膝を突いて屈み、地面に両掌を当てた。

 どこぞの錬金術師みたいにだ。柏手は打たないが。


「地殻改式―隆起」


―――ゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ………


 大地が震撼し、目視は出来ないが湖の範囲で地面が隆起して…いる…はず…


「全員退避ーーーっ!!!」


「いやぁぁぁーーーっ!」

「水が来るのですよぉぉぉーーーっ!」

「やめてよぉぉぉーーーっ!」

「何してんのよぉぉぉーーーっ!」

「泳げないのぉぉぉーーー!」

「装備が重いぃぃぃーーー!」


 大洪水である。ちょっと考えれば判ったであろう、大洪水である。

 俺は大きめのシールド十枚を空中に段差固定して、皆と共に上空へ退避した。


「いやー、びっくりしたな?」


「「「「「「バカぁっ!!!」」」」」」


 ヤダ酷い。

 そんなに睨みつける程の事ではないだろうに。


「このままだと湿地になりそうだな。レンコン栽培にはいいか?」


「レンコンしか作れないじゃないの。誰がそんなにレンコンばかり食べるのよ」


「ごもっとも…」



 さて、この広域に溢れ出した水をどうしようか。

 パッと思いつくのは『乾かす』だが、もっと簡単な方法があるでしょ。



「重境合式―重球」



 拳大の黒球が俺の眼前に顕現した。


 全ての術式は俺の意識とリンクしていて、発動から解除までは俺が術式にイメージを送信する形で操作している。


 重球の場合は少し特殊で、術式側からも俺にイメージマップや座標が送れるようにしてある。

 この仕様は、重球を創った動機にある。

 魔獣の頭蓋内に直接転移させて、脳髄を飲み込む事を目的としていた為、俺からでは飲み込む容積や範囲が指定できないからだ。


 俺の術式は、積層型統合回路の工学理論を基にしている為、術式にエリアセンサーのような機能を盛り込む事も出来る。

 センサーと送信機能を盛り込む事によって、術式側からの情報送信も可能にしてある。



 再び俺はそれっぽく見せる為、重球に掌を向けて、重球の操作を開始する。

 恰も俺の掌が操縦しているかの如く、重球は掌を向けた方向にスーッと移動して行く。


 上空20mくらいの位置に静止した重球が、大地に溢れた水だけを飲み込んでいく。

 竜巻を逆さにした様なビジュアルで、水が渦を巻いて重球に吸い込まれて消えていった。

 水が消え去ると、そこには一面の平地が拡がっていた。


 俺は更に術式を発動する。



「地殻改式―土壌改良」



 森林地帯だった為か土質は悪くなさそうだったが、ついでだから農地に向く土質と成分にしてみた。

 作物の種類が判らないから、取り敢えずは無機肥料の三要素と言われる窒素・リン酸・カリウムを添加して、柔らかい土質にしといた。

 有機肥料も魔術で作れない事はないが、材料が必要になるし、そこまでしてやる義理もない。



「はい終了。おつかれっしたー」


「ねえキル、土壌改良って、何をどう改良したの?」


「無機肥料を添加して、農地向きに土を攪拌して柔らかくしただけだ」


「無機肥料って何?」


 あはーん。無機肥料の概念がナッシングなわけね。

 肥料の歴史なんて知らないが、地球でも無機肥料の登場は産業革命期くらいだろうし、この世界に無機という概念がないのは頷ける話だな。


「俺がさっきやったのは、鉱物を分解して土に添加したんだ」


「鉱物が肥料になるなんて、全く知らなかったわ。キルは何処でそういう知識を得てるのかしら?」


 前世でとは言えませんね。

 かと言って、トライワンズが一緒だから禁書庫とかもNGワードだし。


 俺がグレイス以外の面子に視線を向けると、グレイス以外は俺の話なんて聞いてなかった。


 俺は耳打ちをしようとグレイスに近寄り口を耳に寄せようとしたら、グレイスがビクッと体を震わせ、胸の前で両手をキュッと握って目を見開いた。

 何を驚いているのかと思いながらも、俺はグレイスの耳元で『禁書庫の禁書だ』と告げて、後ろに一歩下がった。

 途端に、グレイスの俺を見る目が、酷くジットリとしたものに変わる。。


「何だよ?聞いたから教えてやったのに」


「はぁ…。鈍感なんだか、眼中にないのか…バカ」


 バカと言われるような事は、何一つやっても言ってもいない。

 今日はよくバカと言われる日だなぁと思いながら、俺は皆に号令をかけた。


「はい注目!想定外な事はあったものの、当初予定していた事項は全て完了した。皆もご苦労だった。さあ、公都へ戻ろうか」

「「「「「「お疲れ様でした(ですぅ)(なのです)(なの)」」」」」」



 毎度グレイスの執務室から大人数で出て行くのも変な話なので、今回は宿の部屋へ瞬間移動した。

 時刻的には、昼食時には遅いがおやつの時間には早いといったところ。

 色々あって昼食をすっかり忘れていた俺は、数日前にその辺の屋台で買って収納庫に放り込んでいた、串焼きやらシシカバブみたいな食べ物をテーブルに出した。


「あ!ルルも色々あるですぅ!」


 ルルも買った食べ物を収納庫に放り込んでいたらしく、バゲットサンドやらソーセージとジャガイモの炒め物やらを取り出した。


「収納庫って…本当に時間が止まっているのね。串焼きが湯気を上げてるわ」


「ほんとだ。魔道具の拡張バッグって、時間は止まらないよね?」


 グレイスは感心し、リリエラは魔道具との違いを聞いてきた。


「魔道具の拡張バッグは知らないが、俺たちの収納庫は時間軸を除去してあるからな。制限があるとすれば、呼吸をしたり動いたりするモノが入れられないくらいだ」


「ほんと君って非常識の塊だよね。それ売ったら、一生どころか何世代も遊んで暮らせるよ?」


「リリエラの言うとおりだけど、収納庫を売るのはダメよ。経済的にも軍事的にも、世界のバランスが崩壊してしまうわ。キル、無暗に造るのもダメよ?」


 教師が生徒を諭すようにグレイスから釘を刺された俺は、『解ってるさ』と返答した。

 すると、リリエラが何とも微妙な表情で俺に問いかけてきた。


「ねえ…収納庫って、そんな簡単に作れちゃう物なの?」


「ゲートを固定するだけの魔力を内包できる素材があれば、数分で造れるな」


「そうなんだ…」


「なんだリリエラ、欲しいのか?」


「作ってくれるのっ!?欲しい!超欲しい!!」


 まあミスリルも残ってるし、造ってやるのは吝かではない。

 問題は、リリエラ…と言うか、トライワンズが保持可能かという点だ。

 俺がそれを問う前に、グレイスがリリエラに問いかける。


「リリエラ、仮にキルが作ってくれたとして、貴女は収納庫を守り通せるの?リリエラが収納庫を使っているところを見た者は、貴女から収納庫を奪おうとするわよ?冒険者、探索者、商人、貴族、傭兵、誰もが収納庫を欲しがるに決まっているもの」


「うっ…そう言われると、守り通せる自信はないかも…」


「そういう事だな。まあ、俺も造った当初は深く考えてなかったが、ルルとエルにもその危険はある。魔力波動に合わせてあるから他人には使えないが、奪いに来る者たちは、そんなこと知らないからな」


「それは私も初耳ね。使用者制限まで付けられるの?」


「この収納庫は、逆に使用者制限を付けなければ使えないな。むしろ、使用者制限のない拡張バッグ…だったか?それの方が魔道具としての汎用性は高い代物だな」


 なるほど…拡張バッグってのは時空間拡張か。

 領域拡張には限界があるものの、それなら造るのは更に簡単だな。

 ここはリリエラたちのモチベーションを高める意味で、ちっと煽ってみるか。


「なあリリエラ、拡張バッグなら造ってやってもいいぞ?もっとも、俺のランクアップが叶った場合の追加報酬としてだがな」


「ほんとっ!?」


「ちょっとキル、そんな安請け合いして大丈夫なの?」


「グレイス、拡張バッグってのは、名称のとおりバッグの内部空間を拡張した物のはずだ。正確には時空間拡張だな。それなら拡張できる広さも知れてるし、時間軸を除去する必要もない。時と場所に気を付けて使えば、拡張バッグだとバレる可能性も低いだろ?」


 グレイスは『まあ、そうね』と答え、リリエラたちは気色の声を上げた。

 俺が『例え友人や家族でも、俺が拡張バッグを造ったと言うな』と釘を刺すと、リリエラたちは『もちろんだよ!!』と元気に返答し、彼女たちのモチベーションは鰻登りに高まった。


「じゃあ、成功報酬を目指して俺のランクアップを猛プッシュしてくれ。勿論だが、グレイスにも拡張バッグはプレゼントするぞ」


「リリエラにああは言ったものの、貰えると聞くと嬉しいわね。私もキルたちのバックアップをしなくちゃね。それじゃあ、ギルドへ行きましょうか」


 宿の玄関で女将から『あら、お戻りだったんですね。気付かずに失礼しました』と言われてしまった。

 咄嗟の言い訳で『俺たちは隠密行動が得意な冒険者だから』と言ってしまった。

 部屋の扉が内鍵式で良かった…と初めて思った。


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