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咒言鬼神の転生譚 ~神に請われる神殺し~  作者: TAIRA
第3章 公都での暮らし
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第35話 凶悪な兵器


 魔獣殲滅を決めた俺は、グレイスとリリエラを納得させるべく、二人に話し掛けようとするが…ルルが俺に抱きついたまま離れない。


「おいルル、もう解ったから離せって」


「キル様の匂いがするですぅ。この勢いで今夜ルルは、キル様に女の子から女にしてもらうですぅ♪」


「シチュエーションを無視してんじゃねぇ!」


 俺はルルに渾身のデコピンを放った。


「ぎゃっ!?痛いですぅ!キル様の愛の中指が痛烈ですぅ!」


 ルルはデコピンの威力で仰け反り、そのまま尻もちをついた。

 地面にペタンと女の子座りをしたまま、額を押さえて『オデコがお尻みたいに割れたですぅ…』と呻いている。

 見た目と発言にギャップがあるが、こんなギャップには萌えられない。


「グレイス、リリエラ、俺は魔獣殲滅を決めた。当初の想定より時間を要するだろうが、どんなに遅くても一時間以内に始末する。悪いがこの場に留まってくれないか?」


「わかったわキル。私もルルちゃんに負けてられないもの。キルのことを信じるわ」


「もぉ…何なのこのドタバタラブコメ展開!わかったわよ!私だってAランカーなんだから、ちゃんと見てるし!」


「リリエラは羨ましがってるだけなの。キル様がんばってなの」

「羨ましくないわよっ!」


「仕方ありませんね。逃げる勇気も大切だと思いますが、今は踏み止まる勇気を選択することにします」


「キルアス様、森林から出てくる魔獣はルルさんとエルにお任せなのです!エルだって、強くなる為に頑張るのですよ!!」


「皆、よろしく頼む。危険種を始末したら此処へ戻ってくる。そしたら特大の花火を見せてやるから、楽しみに待っててくれ。んじゃ、ちっと行ってくるわ」



 俺は森林の方向へ向き直り、戦闘スペックへと移行する。


「闘気解放!闘気圧縮!魔力解放!魔力圧縮!闘魔混合!魔魂融合!高速循環!フィジカルブースト!センスブースト!糸縛術式並列20式ロード!重球術式並列20式ロード!魔力波動並列アジャスト!物理シールド神核制御モード!魔咒絶式―無韻!鬼羅零式―攻鎧殻!」



 戦闘スペックへの移行を完了させた俺は、強固な物理シールドを足場として、神速の初動に入った。

 機動力は電光石火の如く音を置き去りにし、大気の壁を突き破る。


 闘気を圧縮して只管強靭に物質化する鬼羅零式の攻鎧殻を全身に纏い、進路に蠢く数多の魔獣を粉微塵に砕いて突貫する。


 危険種どもの強弱など意に介さず、近い順に糸縛で拘束し重球で脳髄を強奪する。

 俺を察知せぬままに死骸と化した危険種どもを、視覚で捕捉して収納に飲み込む。


 奇しくも最強たるフェンリルが最後に残る危険種となり、俺は瞬間移動でフェンリルの眼前に姿を晒した。


「よお、デカイ犬っころ。そんな怯えた目をすんじゃねーよ。地球の神話じゃ、フェンリルってのは最高神を喰った巨狼なんだからよ」


『グルッ…グルゥォ…』


「はっ、興醒めだ。お前よりも、俺の銀狼の方が万倍は強いぜ。だが喜べ、お前には特製の拘束を提供してやる。魔咒絶式―グレイプニル!」


 漆黒より尚ドス黒い、グレイプニルという名の縛鎖が無数に顕現した。

 無数のグレイプニルは縦横無尽に空間を錯綜し、空を切る音はそれだけで確実なる死をフェンリルに幻視させた。


『グロォォォォォ………………』


 その儚い断末魔を最後に、フェンリルは木々の切れ間に転がる、只のドス黒いオブジェと化した。


―――重球


 俺は声も無くその術式名を呟き、骨肉の塊となったフェンリルを次元空間に消し去った。


「ふぅ、ちっと筋断裂痛を感じるな…。この程度で済んでいると喜ぶべきか、未だ脆弱だと憂うべきか…。さて、仕上げに戻るか」


 俺はルルの魔力を目標に定めて瞬間移動で戻った。

 森林の境界近くにいるかと思ったが、六人とも元の場所から動いていなかったようだ。


「キル様!?…あれ?早くないですかぁ?」


「ルルちゃんの言うとおり、早すぎるわね。また何か想定外が起きたの?」


「キルアス様、お怪我はないのです?」


「魔獣どもは出て来てないみたいだな。大丈夫、俺は問題ない。危険種どもは全て始末して土産にした。売れば一財産になるだろ。宿に風呂でも造るか?」


「「「「「………」」」」」

「混浴ですぅ♪」


 バカ一匹は除外して、この無言で唖然とされる件にも飽きてきたな。

 もっと斬新なリアクションが出来ないのだろうか。


 俺は斬新なリアクションを期待して、収納に居れたフェンリルの死骸を取り出した。


「うわぁぁぁっ!?なにこれデカっ!?…フェンリル?」


「大きいの。牙がレイラの大盾より大きいの…」


「特級危険種まで無傷で回収できるのですね…」


「キル様すごぉーい!だから今夜はルルを女に――ぎゃんっ!?痛いですぅ!!チョップは禁止ですぅ!!」


「フェンリルって、本当に存在したのですね…。これ、いくらで売れるのです?」


「本当に驚きね…。フェンリル丸ごとなんて、ギルドの資産じゃ払えないと思うわ。値付けの基準も判らないし」


 フェンリルは目測で体長30m超、体高10m超はある巨体だ。

 超絶レアな魔獣であるため、相場どころか売買の前例すらないらしい。

 前例がないということは、素材として加工されたこともないのだろう。

 収納庫に死蔵するなんてオチだけは、是非とも勘弁して欲しいところだ。


 大したリアクションも得られないまま俺はフェンリルを収納しつつ、逆にストライクガンを取り出した。


「さあ、品評会は終わりだ。最後の仕上げとして、水平に走る花火をお見せしよう」


「キラキラピカピカのカッコイイやつですぅ!」


「それで花火をするです?あの…花火って何なのです?」


 え?…火薬ってない感じ?最初に言った時に指摘して欲しかったな。

 俺の発言は、結構な割合でスルーされてるんだろうか?


「キル、それは何?話の流れからすると武器らしいけど、魔装具なのかしら?」


「なんだろう…ちょっとカッコイイと思っちゃってるんだけど、なんか悔しいんだけど…」


「クフッ…殺しの臭いがするの。ショータイムな気がするの」


「精巧で重厚な造りですね。その様な武器は見たことも聞いたこともありませんが」


 キャルレインの背後にスタ●ド的な黒い人影が見えるのは…俺だけか?

 保管はこの子の手の届かない場所にしよう。


「これはストライクガンという、撃って良し殴って良しな漢武器だ。どうだ?浪漫を感じないか?意味も無くワクワクしてこないか?」


「キルが凄く悪い顔をしている様に見えるのは、私だけかしら?」


「悪い顔なの。グググッとくるの。鷲掴みなの。メチャクチャにして、されたいの」


 ヤバくね?キャルレインがヤバくね?

 こいつも脳がお腐りになられておられる系?

 快楽殺人者属性とか、前世でお腹いっぱいなんですけど。



 キャルレインからスッと視線を逸らした先で、右手に握ったストライクガンを見て、ふと思った。


 ストライクガンを技神テクノロジェから受け取った時、ヤツは超重イオンビームの素となる融合原子核を『自分の虚無空間から自動転送供給する仕様だ』と言っていた。


 融合原子核とは、俺が広域探知に利用した魔素のことだ。

 融合原子核の量は、内包魔力の量と相関関係にある。つまり、魔力量が多ければ融合原子核量も多いわけだ。


 俺の内包魔力量は神々よりも多い、と魔神ディア先生は言っていた。何故なら、神々には権能があるから、魔力を高める必要性が薄いのだ。


 であれば、俺が自分の虚無空間から融合原子核を追加供給すれば、更に強大な超重イオンビームを撃てるのではないだろうか?

 俺の予想が正しければ、チャージタイムも短縮できるはずだ。

 これは試さずにはいられないテーマだ。


 俺はその場に胡坐をかいて座り込み、ストライクガンに融合原子核の召喚術式を刻印した。

 刻印が定着した途端、ストライクガンが仄かに発光し、バレルが伸長して口径も大きくなった。

 流石は神鋼、謎すぎる可変金属だ。



「試し撃ちするぞー。皆さん注目。ストライクガンに刮目せよ!」


「キルアス様!刮目すべき点が判らないのですよ!それくらいは教えて欲しいのですよ!」


 出たな、教えてちゃん。だがしかし、エルの言うことにも一理ある。

 要は直進するビームの破壊力を見ろという事なんだが…どう説明すべきか。


「よし、説明しよう。水を口の中に含んで、口先を細めてピューっと吐き出す。いや吹き出す?兎に角、そうすると水は線を引くようにして前方へ飛ぶだろ?」


「はいです」


「ストライクガンのココ、銃口と呼ぶ部分が口先だ。ここからビームと呼ばれる、水に相当するモノが出て前方へ直進する。そのビームが魔獣と森林を消し飛ばす光景に刮目せよ、という事だ」


「…そんなもので、魔獣が倒せるのです?」


「想像できないか…。いいだろう、初撃は弱めに撃つ。そうだな、全力の三割くらいにしよう。百聞は一見に如かずだ。いいか?」


「わかったのです」



 俺はエントワーズ森林を中央で分断する方向に銃口を向けた。

 チラリと左右を見やり、全員が注目していることを確認する。


「被爆防止シールド展開、魔素召喚術式起動、雷纏術式起動、粒子加速開始、円形ビームホモジナイズ設定完了、出力30%固定………狙い撃つぜっ!!」


 直径5mの超重イオンビームが線を引き、音も無く直進した。

 ビーム線上の大気が超高熱膨張して一帯を震撼させる。


―――ドゴォンッ!!!!!


 耳が壊れる程の轟音が大地を揺るがし、光線が糸を引いて消失した。


 円弧を描いて抉られた大地が、只管に真っ直ぐと地平線まで続いている。

 森林はカッターナイフで切り取った様に直線的に消え去り、その両端面に残る木々は焼け焦げ、燻りながら白煙を昇らせている。

 目に映る破壊痕は、非現実的ながらも美しいとされ思える人工的な残景を晒していた。



「ななななななな何なのよぉこれぇぇぇえええええっ!!??」


「クフフフッフフフッ!キル様が造った地獄なの。体の真ん中が熱いの」


「………」


「ふわぁ…キル様は凶悪ですぅ。あそこの魔獣、縦半分になってますぅ」


「…キルアス様、エルはお家に帰っていいです?あ、お買い物しないとですよ…」


「ダメよ……これはダメ。地平線の先まで何も無いんじゃないの?この先に村や町があったかしら…あったかしら?ねえ、あったかしら?」



 マズイ…。水平照掃射したらイカンやつだ。

 マジで村とか町とか街とか城とか消えてたらどうしよ。

 コレ、宇宙戦争用兵器だったっけ?


 全員が俺を見てる。俺がやったから当然だけど…

 技神のせいにしとくか?

 製造者責任の概念くらい、この世界にもあるよな?


 ここは明るく朗らかに。うん、そうしよう。


「ゴメンゴメン!ちょっと失敗したな!次は上手く出来るから!ね!」


「何かあったのかしら?三百年も生きてると視力が落ちちゃうのよねぇ」

「ルルは微風を見てましたぁ」

「ルルさん、エルはどこか知らない町に行きたいのですよ?」

「馬車を買いに行かなきゃ。何で馬車がないんだろ?ここ数日の記憶がないな?」

「キャルレインはキル様の奴隷になるの。黙示録の奴隷なの」

「リリエラ、馬車は必要ですね。旅に出ましょう。かなり急いで」


 こいつら日和りやがった…


「わーったよ!俺が悪いですー。全部俺のせいですー。ほら、続きをやるぞ!」


「ちょっとキル、もうやっちゃダメよ。また村や町を消滅させちゃうでしょ」


「消滅させたの確定かよっ!?つーか、消滅してねーから!超長距離探知で確認した。かなり際どい街はあったが、直撃したところはない。何人か消滅したかもしれんが、それは知らん!」


「キル様のステータスにぃ、罪科ついてないですかぁ?」


「おぉ!ルルはバカだけど頭いいな!見てみよう」


「バカじゃないですぅ!」


=====================================

 【名前】キルアス・ルスト・デュケ・テスラ

 【種族】人間族 【性別】男  【年齢】偽:16歳(8歳)

 【クラス】凶魔導戦闘士・マスタージャッジメント・極大魔導

 【称号】神権執行者・エレメントの盟友・悪魔殺し・魂魄の支配者・魔獣の天敵

     神獣の天敵・領域解放者・破壊専従者

 【レベル】220

 【体力】18000  [闘気解放+20000][闘魔混合+40000]

 【魔力】650000 [高速融合+90000][魔力圧縮+130000]

 【魂力】72000  [魔魂融合+80000]

 【耐久】16000  [闘気解放+20000][闘魔混合+40000]

 【敏捷】17000  [闘気解放+20000][闘魔混合+40000]

 【物防】12000  [闘気解放+20000][闘魔混合+40000]

 【魔防】430000 [魔力循環+30000][闘魔混合+40000]

 【スキル】無詠唱・術式並列制御・闘気解放・魔力圧縮・闘魔混合・次元制御・

      魔眼

 【固有スキル】咒式創造・咒刻・解咒・魔力直接制御・術式創造・生体進化・

        神眼・神化・魔術解析・魔魂融合・魔咒式創造・冥族探知・冥王        召喚・魔素制御・鬼羅式創造

 【魔術】炎爆・氷冷・暴嵐・霹雷・地殻・冥王・神聖・境界・刻印・錬成・錬金

     合成・複合・召喚・重力

 【加護】創造神・智神・技神・魔神・武神・慈神・???・死滅のエレメント

 【罪科】なし

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 おぉ、罪科なし。レベル200超。

 破壊専従者って…そんな職人いねーし。

 あ、罪科はなしのままだ…助かった?



「罪科なしだったぞ。罪科の定義ってどんなだ?」


「罪科に明確な定義はないわ。罪科は神々の御心によって与えられるの。ただ、罪科のない人を理由なく殺すと、殺人の罪科が付くのは判明しているわね」


 神々の御心ねぇ。神の胸先三寸ってやつか。

 ま、無関係な人間を消し飛ばしてなかったのは僥倖だな。

 精神的に疲れたし、早いとこ森林を吹っ飛ばして帰ろう。


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