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咒言鬼神の転生譚 ~神に請われる神殺し~  作者: TAIRA
第2章 公城での生活
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第23話 デモンサーチ


 予想外の出来事が盛り沢山のエレメント調査だったが、あの場所の滞在時間は一時間にも満たなかった。

 星の力については確認後に説明するとして、父上は執務室へ、俺とルルは其々の自室へと戻った。


『アイ、“冥族探知”について、概要を説明してくれ』


≪はい、マスター。冥族探知とは、冥界の始祖である冥王に連なる生命体や精神生命体を探知する固有スキルです。獲得した冥王の恩寵には、冥王の絶対因子情報が含まれており、冥王の系譜は、漏れなくその絶対因子を保有します。その絶対因子を対象とした探知や識別、照合が可能です≫


 絶対因子というのは、優性遺伝子みたいなものか?

 その冥王の系譜を探知することに、どんな意味やメリットがあるのだろうか?


『冥王と冥王の系譜ってのは、どんな存在だ?』


≪冥界の創成に伴い、冥界を統べる存在として生まれたのが冥王です。冥王の系譜の大多数は、冥界の瘴気源から生まれる悪魔ですが、極稀に、冥王の絶対因子を宿して現界に顕現する存在もあります≫


『ん?悪魔が生物として生まれるってことか?』


≪いいえ、マスター。悪魔は、冥界の瘴気源でしか生まれません。現界に顕現するのは、神獣と同等以上の位格を持つ特異存在だけです。実例としては、大精霊や竜種が特異存在に該当します≫


 ほほぅ…竜もいるんだね。どっちか言うと龍の方が好みだけど。

 それはさておき、悪魔を探知できるって事は、破壊神の隷属者も探知できるって事だ。

 上手いことすれば、隷属者に対して先手を打てるかもしれない。

 隷属者か否かの判別方法はないが、人種に憑依して悪さしてる悪魔なんざ、悪即斬の精神で構わんだろ。


『アイ、冥王召喚ってどうやるんだ?つーか、冥王なんて召喚して大丈夫なのか?』


≪冥王召喚は、神核に統合した冥王の恩寵を召喚ゲートとして実行します。但し、冥王は精神生命体である為、受肉の器、もしくは素体を生成する魂が必要になります。召喚した冥王はマスターの従属者となるので、問題は生じません≫


『受肉の器ってのは、俺でいう転生体みたいなものか?』


≪はい、マスター。しかし、冥王を宿せる程に高位な器が現存する可能性はゼロです。マスターの器であれば受肉は可能ですが、代わりにマスターが精神生命体になります≫


『色葉を助けに行けなくなるのは困るから、魂の一択だな。…ん?それは、生物を殺すってことか?所謂、生贄?』


≪はい、マスター。生贄です。召喚に必要となる魂の数は、生物の位格によって変動します。現実的な生贄は人種で、必要数は三十万前後になると予測されます。魔獣の魂でも召喚可能ですが、必要数は数百万が予測される上に、冥王の能力を十分に発揮することも出来ません。端的には、知能の高い生物の魂は、より位格が高いと言えます。生贄を高位の魔導士などに限定すれば、魂の必要数も十万程度に抑えられると予測します≫


 おぅ…ダークサイドな話だね。

 大量殺戮をしてまで、冥王を召喚する理由がない。

 そもそも、冥王が何の役に立つのかも不明だ。



 さて、星の力は判明したし、次は迷宮だな。

 七大迷宮は書物にも載ってたし、テスラ大迷宮は公都から100kmくらいの場所にある。

 深奥に在る創世真理ってのはどうでもいいが、迷宮には興味がある。

 ってことで、行かないなんて選択はない。


 あ、迷宮の前に悪魔探知を考えなきゃならん。

 ステータスプレートを確認すると、固有スキルの欄に“冥族探知”が追加されている。

 他にも“魔魂融合”と“魔咒式創造”も固有スキルとして追加されていた。


 ぶっちゃけ、スキルと魔術の境界線が判らない。

 俺的に、咒式と術式を融合した魔咒式は魔術カテゴリーの認識だ。

 まあ、俺が特殊だから深く考えても意味はないのかもしれないが。


 ともあれ、スキルとして随時発動するよりも、常時展開型の術式にする方が便利性は高いだろう。

 詰まる所、冥王の恩寵にある絶対因子情報を、回路型術式の情報メモリに書き込めばいいんじゃないだろうか?


「ほらね、創れた。ついでに、探知した悪魔を神核データベースに自動記録する機能も盛り込むか」


 うむ、問題なく創れた。固有スキルにある“術式創造”の恩恵もあるのか?

 何れにしろ、探知範囲が半径1km程度なら消費魔力も微々たるものだし、常時展開術式としては上出来だろう。


 俺は悪魔探知術式を“デモンサーチ”と命名し、試用してみた。


「…え、探知したんですけど?しかも城内って…どゆこと?」


 探知座標を三次元マップに重ねてみると、そこは父上の執務室だった。

 執務室の悪魔…

 小説のタイトルかよ!などと思いながら、俺は父上の執務室へ向かうべく部屋を出た。

 自室を出ると、背後からパタパタと廊下を走る音が聞こえてきた。


「あ、キルアス殿下!待ってくださーい!殿下のお部屋に行こうと思ってたんですぅ!」


「ルル、どうした?と言うか、何故お前は完全武装なんだ?」


「えっとですね、ルルの気のせいかもしれないんですけどぉ…」


「だから何だよ。俺も急いでるんだが?」


「その…近くに魔族の気配を感じるんですぅ…」


 ちょっとビックリ。ルルは悪魔の気配を感知できるのか。

 ルルのステータスを後でコッソリ鑑定してみようかな?


「そうか。俺が悪魔を探知したのも間違いじゃないみたいだな」


「え!?キルアス殿下は魔族…悪魔を探知できるんですかぁ?」


「ああ、さっき俺がエレメントから貰った黒い結晶があるだろ?あれに悪魔探知のスキルが含まれてたんだよ」


 悪魔探知スキルという言葉を聞いたルルが、『それ欲しぃ』と云わんばかりのキラキラした眼差しで、俺を見始めた。

 やはりこいつは頭がおかしい。

 この眼差しは、『有名パティシエが限定で作ったお菓子がある』と聞いた女子のそれだ。


 しかしだ、悪魔の存在が確定的ならば、完全武装のルルを連れて行くのは得策じゃないだろう。


「ルル、お前も知ってのとおり、王族が使う階層は許可がない限り完全非武装エリアだ。俺の部屋に武装を置いて来るか、部屋で待ってろ」


「えぇ!?でも、本当に悪魔がいたら危ないですよぉ?」


「じゃあ聞くが、完全武装のルルと非武装の俺、どっちが強いんだ?」


「キルアス殿下ですぅ…。でも、ルルはキルアス殿下の護衛ですから、武装を外して付いて行きます!そう、ルルは肉壁します!」


「…そうか、ルルは肉壁か」



 余裕の自虐発言を繰り出す割りには緊張した面持ちのルルを伴い、俺は父上の執務室へと向かう。

 デモンサーチによれば、悪魔は執務室内で静止している。

 俺は悪魔を始末する気満々なので、念のために執務室の内壁を囲む隠密遮断結界を展開した。


 扉の前に立つ近衛兵に視線を向けると近衛が扉をノックし、扉の小窓を開けて俺とルルが面会に来たことを告げた。


「キルアス殿下、英雄ルルエンロード様、ご入室ください」


 扉を開けて控える近衛の前を歩いて入室すると、父上、宰相、軍務卿、宮廷魔導士のエルランテに加え、金髪の美丈夫の五名がソファに座っていた。

 父上以外の四名が立ち上がり俺に礼を執ると、金髪の美丈夫が口を開いた。


「キルアス殿下、初めてお目にかかります。私は宮廷魔導士第一席を務めております、ルシェ・マスカランに御座います。ご立派にご成長なされた殿下のご尊顔を拝しますこと、誠に以て光栄の極み」


「キルアスだ。類稀な魔術の技量を以て、瞬く間に第一席へと駆け上がった話は聞いている」


「勿体なきお言葉、恐悦至極に存じます」


 ルシェ・マスカラン。こいつが悪魔だ。デモンサーチがガンガン反応している。

 俺は皆に楽にするよう促してソファにり、ルルを横に座らせた。


「どうしたキルアス。エレメントの事が何か解ったのか?」


「父上、それとは別件で来たんだ。ルルが『魔族の気配を感じた』と言うもんだからさ」


 俺は父上の顔を見ながら喋りつつ、横目でルシェの表情を伺うが、ルシェは平然とした面持ちを崩さない。

 しかし、何食わぬ顔をしながらも、魔力遮蔽結界を自分の体表に展開した。

 こいつは、悪魔特有の魔力波動を感知されたと考えているのだろう。

 そんなルシェとは対照的に、唐突に名前を出されたルルは、盛大に動揺しながらオロオロしている。


「魔族だと!?英雄殿、それは本当か!?いや、英雄殿を疑う訳ではないのだ。不躾だが、英雄殿は魔族感知のスキルでも持っているのかな?」


「いえ、その、スキルでも何でもないです。魔族との戦闘経験から得た感覚なので…」


 ルルは『助けて!』と云わんばかりの涙目で、俺の顔をチラ見している。

 耳もペタンと伏して、尻尾まで右へ左へとオロオロしている。

 面白いから暫く見物しようと思ったら、悪魔確定のルシェが問いかけてきた。


「英雄殿、こう言っては何ですが、確証も無しに陛下をはじめお歴々のお手を煩わせるなど、どうにも感心しませんね。まさか、ありもしない作り話で、キルアス殿下のお気を惹こうとでも?」


「ち、違います!ルル…私は、そんな事しませんっ!」


「キルアス殿下、英雄殿はこう言っておりますが、殿下までもが荒唐無稽な作り話をお信じになられた、という事でしょうか?」


 ほう、俺にも矛先を向けてくるか。暗に『与太話を簡単に信じる大公子など、その資質が疑われる』と言ったところか?

 ま、内心恐々としている裏返しと見るのが妥当だろう。悪魔のくせに気の小さいヤツだ。


「ルシェ、逆に聞くが、お前がルルの言を作り話だと断定する根拠は何だ?お前は、悪魔が存在しない事を確認したのか?それこそ“悪魔の証明”だぞ?」


「これは手厳しいご指摘でございますね。悪魔の証明という言葉は存じませんが、私もテスラ大公国の宮廷魔導士第一席として、日々研鑽を重ねてきた自負がございます。しかも、私の得意魔術は陛下と同じ暗黒魔術にございます。その私が、悪魔の波動を見逃すような事はない、と断言させて頂きます」


 はん、その文言には『自分の波動を除いて』と付け加えるべきだろう?

 しかしなんだ、このやり取りも飽きてきたな。ルルも未だに涙目だし。

 取り敢えず、こいつのステータスでも見てみるか。


=====================================

 【名前】ルシェ・マスカラン(憑依状態)(真名:ラルゴ)

 【種族】偽:人間族(悪魔族) 【性別】男 【年齢】偽:27歳(347歳)

 【クラス】偽:魔導士(上級悪魔・破壊神の隷属)

 【称号】偽:国守の暗黒魔導(愉悦の殺戮者)

 【レベル】偽:66(105)

 【体力】偽:480(820)  [気力循環+50]

 【魔力】偽:990(1585) [魔力循環+700]

 【魂力】偽:770(0)

 【耐久】偽:210(570)  [気力循環+50]

 【敏捷】偽:200(410)  [気力循環+50]

 【物防】偽:100(240)  [気力循環+50]

 【魔防】偽:650(980)  [魔力循環+700]

 【スキル】略式詠唱・気力循環・魔力循環・魔力回復(大)・杖術(暗殺術)

 【固有スキル】暗黒魔錬・呪縛(憑依・魔封・呪殺・屍毒生成)

 【魔術】火炎・暗黒・時空(屍毒)

 【加護】なし

 【罪科】偽:なし(大量殺戮・火の守護者血統への魔封)

=====================================


 こらこらこら、ステータスって偽装できるんじゃねーか!どこが偽れない証明だっての。

 つーか、ツッコミどころ満載だが…弱くね?

 悪魔だけに魔力特化みたいだが、レベル105の上級悪魔でこの程度か。

 おっとぉ、こいつがセリーに魔力封印を仕掛けた犯人なのか。何か納得だ。

 しかしこれを見ると、悪魔を警戒してた自分がアホらしく思えてくるな…。

 よし、始末しようか。


「なあルシェ、お前は悪魔に会ったことあるか?」


「はい、ございます。討伐経験もございますが、それが何か?」


「いやな、俺も悪魔に会ったんだよ。上級悪魔ってやつに」


「畏れながら、キルアス殿下は城外へお出になられた事がないと聞いておりますが?」


「ああ、出たことないな。でもな、347歳でレベル105、おまけにセリーシェに魔封を仕掛けた悪魔がいたんだよ」


 俺の言葉を聞いたルシェの顔が、ほんの一瞬だけ歪んだ。

 父上たちも俺が何を言っているのか理解できない様子で、訝し気な表情を浮かべている。

 唯一人、ルルだけはルシェが悪魔である事を悟っているようだ。


「そ、それは…俄には信じられないお話でございますね…」


「信じられないことはないだろう。なあ、ラルゴ?」


「っ!?」


 瞬時にソファから跳び退いて攻撃姿勢を取る悪魔に対し、俺は何をするでもなく、ただ視線だけを送った。


 悪魔を退治という名の、簡単なお仕事の始まりだ。


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