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咒言鬼神の転生譚 ~神に請われる神殺し~  作者: TAIRA
第2章 公城での生活
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第20話 英雄の来訪


「……父上、母上、義母上、兄上、義姉上、ルインスト、おはよう」


 ナニコレ?

 父上から『明日の朝食に同席しろ』と言われて来てみれば、王族が勢ぞろい。

 しかも、かなり久しぶりに顔を見るのが二名いるし。


「エリーシェ義母上、ルイン、久しぶり。三年ぶりか?」


「キルアス殿下、本当にお久しぶりですね。ご健勝そうで何よりですわ」


「兄上様、おはようございます。兄上様がお元気そうで嬉しいです」


「義母上、俺に殿下なんて敬称は要らないよ。ルインも俺に様なんて付けなくていいからさ。取り敢えず、二人も元気そうで何よりだ」


 エリーシェ義母上は第二大公妃でセリーの母親、ルインストは三歳下の弟、二人とも、俺が五歳の披露目で顔を合せたっきりだ。

 ルインストとは、会話をしたことすらないわな。


 しかしどういう事だ?

 俺は指定された時間に此処へ来たのに、他の面子のグラスは飲み物が減っている。

 父上に至っては、ボトルワインが半分程まで減っている。

 明らかに作為的だし、皆が俺から視線を外さないのも気に入らない。

 そして…セリーはなぜ俺に向かって小さく手を振っている?やはりバカ様か?


「それで父上、これは何の悪巧みかな?」


「お前は俺を何だと思ってるんだ?時には皆で食事を摂るのもいいだろうが。まあ、多少は企んでの事だが、別に悪巧みってわけじゃない。お前と一緒にするなよ」


「へぇ、悪巧みが俺の専売特許だと聞こえたが?まあ、どっちか言うと得意分野であるのは否定しない。ところで父上、口調が変わったね?」


「まーな。最近どこぞの次男坊が、立て続けに大層な事を、然も事無げにやってくれるもんでな。大公を気取ってるのが馬鹿らしくなったんだよ。公務以外は素に戻ることにした。まあ、Aランク冒険者然ってとこだな」


 どこぞの次男坊って、俺しかいねーだろ!

 まあいいけどね。気楽に過ごせるのは大歓迎だ。

 母上たちの苦笑いは気になるけどな。ルインなんて苦笑いが引き攣ってるし。


「なるほどね。じゃあ俺は、父上の窮屈な枷を外した恩人、ってところかな」


「言ってろ次男坊。この気軽な会話を続けるのも悪くないが、キルアス、今日はお前に伝えたい事があって、皆を集めたんだ」


「伝えたい事?」


「ああ。先ずは俺からだ。キルアス、アレイストの病を治してくれたお前に感謝を。お前のおかげで、次代のテスラは安泰だ。大公として、父親として礼を言う。ありがとう。次はエリーからだな」


「はい陛下。キルアス殿下、いいえ、キルアス殿、セリーシェの魔術の才を目覚めさせてくれた上、朗らかで優しい心根まで取り戻してくれたこと、どんなに感謝しても足りませんわ。本当に、本当にありがとうございます」


 …これは参るな。俺はそんなに感謝される程、上等なもんじゃないって。

 なぜかイヤンイヤンしてるセリーは、どうでもいいな。


「あー、もう解ったから!このまま母上、兄上、セリーって続く感じでしょ?俺は俺が出来る事を、出来る範囲でやっただけだよ。それと、別に悪徳を気取るわけじゃないけど、俺は至って打算的な人間だ。ただ、兄上とセリーは家族だからさ。何て言うか、こういうの苦手だから…勘弁してよ」


「はっはっはっ!キルアスの思わぬ弱点を発見したな。まあ、お前の気持ちは解らんでもない。俺も諸手を挙げて感謝されるのは、正直苦手だからな。しかし、功労や恩には報いねばならない。お前がテスラの将来に貢献したのは間違いないのだから、大公として考えれば尚更だ。キルアス、お前に恩賞を与える」


 そう告げた父上は、俺に目録を手渡した。

 その目録には、こう記されていた。


 一、テスラ公国立アカデミーへの入学を許可する

 一、各種ギルドへの加盟を許可する

 一、テスラ公国内に在る公的機関、施設、設備の利用を許可する

 一、テスラ公国外への自由出国を許可する

 一、報奨金として白金貨30枚を与える


「父上!これ正気!?いや、これ本気!?やっぱダメとか聞かないからな!よっしゃー!やりたい放題できるぜーーーっ!!」


「「「「「「 ……… 」」」」」」


「ん?」


「キルアス、やりたい放題はいかんだろ?自由は認めるが、お前がテスラの第二大公子であることは変わらんのだからな?解ってるか?なあ、解ってるか?」


「ああ、うん。解ってる解ってる。たぶん?」


「俺の嫌な予感は留まる処を知らんのだが…頼むぞ?」


 何はともあれ、八年越しの自由が手に入った。

 なんかもう、こうなるとアカデミーとか逆に面倒だな。

 ま、ムダだと思ったら退学すればいいか。




「なあキルアス、話は変わるんだが、お前と手合わせをしたいという人物が、国外からテスラに来ている」


「は?手合わせ?しかも国外から?」


「そうだ。お前が模擬戦でグレンに勝利したとの噂が広まったらしくてな。無理にとは言わんが、どうする?グレンに優るとも劣らぬ若者らしいぞ」


「物理戦闘ってことか。でもなぁ…グレンには悪いけど、少なくともグレンの十倍くらい強くないと、勝負にならないよ?」


「そうなんだがな。少し毛色が違っているようなんだ」


 その若者は、若干十五歳にして英雄の称号を持つ、ビートマス獣王国出身の狼人族らしい。

 一昨年にビートマス獣王国を強襲した魔族を単騎で撃退し、その際に英雄の称号を獲得している。

 また、既にAランク冒険者としても勇名を馳せており、昨年には軍事立国として名高いガルダイン帝国で開催された武闘大会にも出場し、見事三位入賞を果たした傑物だという。


「正に毛色が違うね。悪魔を単騎で撃退した狼人の戦士か…いいよ、やろう」


「お前ならそう言うだろうと思った。相手方はいつでもいいと言ってるらしいが、期日に希望はあるか?」


「いや、俺もいつでもいいよ。場所が用意できるなら今からでもいいし」


「それも予想どおりだな。場所は近衛兵の城内練武場を用意させている。これから相手方に使者を送り、相手方が直ぐに承諾するなら…最短で昼過ぎの開始だな」


「へぇ。この城って、そんな簡単に入れるんだね」


「今回は一人だけの来訪で、身元もしっかりしているからな。冒険者がBランクに上がる試験には、ギルドによる身元調査も含まれる。だから、Bランク以上の者の身元は確かなのだ。何よりも、英雄や聖人の称号を得られるのは、神々に認められた心正しき者のみだ」


 称号も神の許認可が入るのか。

 ウィスドムあたりがチェックしてそうな気がする。



 朝食を終えた後は、セリーに少し魔術の手解きをした。

 鍛錬が楽しくて仕方ないといった雰囲気のセリーを見ていたら、何故か少しだけ羨ましく思えた。


 昼食を自室で摂っていたら、英雄君が今日午後での手合わせを承諾したとの知らせが届いた。

『いつやる?』というだけのやり取りで、数時間を要する文明レベルには慣れないところもあるが、もしかすると、これくらいの方が生き物としては正しいのかもしれない。


 暇潰しに闘気と魔力の混合鍛錬をしていたら、クリスタが少し慌てた様子で部屋へ入って来た。


「キルアス様、陛下がお越しです」


「キルアス、英雄殿が入城した。練武場へ行くぞ」


「え?父上も行くの?」


「当然だろう。他国の戦力分析は、公務としての重要事案だ。大臣連中や各騎士団長も、視察という名目で観戦したいと上申してきたぞ」


 俺より余程自由だな。仕事しろっての。




 練武場は、城の裏門側に結構な規模で建てられた屋内型だ。

 内観としては、直径50m程の大型円形闘技場といった感じ。

 騎士の昇格試験や、騎士団長の承認試験なども、この練武場で行われるらしい。


 父上をはじめとした偉いさん達は、二階部分に造られたVIP専用観戦室にいる。

 俺は、手合わせの判定人を務めるグレンを伴い、練武場ゲート横の控室に入った。


 身分の高い者が戦士として出場する場合は、中二階にある専用の控室を使うらしいが、俺は『意味わからん』と一蹴して一般控室を使っている。


 グレンを相手に軽く無手稽古をしていると、近衛兵が準備が整った旨を知らせに来た。


「グレン、行こうか」


「はい、お供仕ります」


 練武場中央へ歩を進めると、片膝を突き、頭を垂れて礼を執る人物が視界に入った。



 ん? 銀髪…にしても激しい銀色だな。狼人の中でも希少な銀狼じゃないか?

 十五歳っていっても、獣人はデカイんだな。立ったら170くらいありそうだ。

 おぉっ!?耳が…耳が狼らしいポジションにあるじゃないの!

 ちゃんと尻尾も生えてるわ。体の線は細いが尻尾は太いな。毛があるからそう見えるのか?


 ほぉ、得物は爪付きのガントレットを両腕に装備か。

 ガントレットからも魔力波動を感じるってことは、魔装具ってやつか。

 防具は機動力重視の軽装だが、急所を覆うメタルプレートからも魔力を感じるな。

 流石は英雄君、装備に金懸けてる。


 英雄君から10m程の距離まで近づくと、後ろを歩いていたグレンが俺の前へと歩み出た。

 この距離が開始位置なのだろう。


「英雄ルルエンロード・マキシマム殿、貴殿の願いをお聞き届けになられた、テスラ大公国第二大公子、キルアス・ルスト・デュケ・テスラ殿下のご入来である。面を上げられよ」


「はいっ!この度は私の不躾な願いをお聞き届けくださり、誠に有難くお礼を申し上げます!このルルエンロード・マキシマム、戦士として、英雄の称号を持つ者として、尋常なるお手合わせをお願い致します!」


 やたらとハイトーンな声だな。獣人の変声期って遅いのか?


 口上を終えて頭を上げ、スッと立ち上がった銀狼の戦士は…女だった。

 しかも、おっそろしく可愛いくて…巨乳様!?


「いやいやいやいや、ちょっと待て、ちょーーっと待て!女だとは聞いてないぞ!何なんだ!?策略か?謀略か?ハニートラップか!?」


 俺がズバッと振り向いてVIP席の父上を睨むと、父上がフッと笑った。

 くっ、謀られた…のか?


「無礼を承知で申し上げます!種族や性別なんて関係ないです!私は戦士としてこの場へ参りました!私の半分ほどの年齢とは言え、噂どおりにキルアス殿下は強い!いいえ、噂以上の力量を感じます!どうか尋常に勝負を!」


「えぇー、ヤダよ。女を痛めつける趣味なんぞ持ち合わせてない。見惚れるくらい可愛くてプロポーションも抜群だから、仲良くなりたいなぁくらいは思うけど」


「かかかかか可愛いっ!?…私…が?」


 あら、なぜ赤くなってモジモジしてるのだろうか?尻尾もユランユランと振られてる。

 もしかして、戦闘オンリーの人生をボッチで歩いてきた系?

 前世の自分を見てるようでイタイな…

 ドイツで『ハンサムだからサービスしちゃう』って言ってくれた娼婦の子、元気でやってるかな?

 んなこと考えてる場面じゃねーな。


「ま、そうゆう事だから、俺は帰るわ」


「はっ!?ダメですぅ!待ってください!かかか可愛いと言って頂いた事は…嬉しいです。けど、私を痛めつけるなんて殿下には不可能です!私は武神様の加護を授かった英雄ですからっ!」


 いやまあ、そこそこ強いのは判るよ?

 魔力も高いし、気力の上位である勁力に加えて、発勁まで使えるみたいだし。

 実際、グレンよりも強いんじゃない?

 でもねぇ、俺と勝負するには足りないな。

 俺、自分でもビックリするくらい、日々強くなってるから。


「俺の力量が云々って言ったよな?じゃあさ、お前の戦闘力を100だとしたら、俺の戦闘力はどれくらいだと感じる?」


「えっと、えっと…80くらい、ですか?」


「はぁ…お前が俺に勝つなんて不可能だ。お前が死ぬ気で百年間修行したとしても、お前は俺の足元にも及ばない。これは事実だ」


「むぅぅぅっ!そんなことないです!私は銀狼族最強の戦士なんです!お父さんが今も生きてれば、お父さんの方が強いだろうけど…。でも、私はもっともっと強くならなきゃダメなんです!強くなって、魔族から大精霊様をお護りするんです!」


 大精霊を護る?ハイエルフを護るって意味か?

 ふむ。経緯や事情は判らんが、ちっと興味は湧いてきたかも。


「大人しく帰るつもりはないみたいだし、相手をしてやってもいい」


「本当ですか!?ありがとうございますっ!」


「但し、条件が一つある。それを承諾するなら、俺の本気を見せてやる」


「条件、ですか?何でしょう?」


「俺が勝ったら、お前は俺の旅に付き合え。俺にとっても、大精霊とエレメントは護るべき対象なんだよ。俺は守護者の血統でもあるしな。その旅の過程でなら、お前に助力するのも吝かじゃない。どうする?」


「じゃあ、じゃあ、私からも条件、いいですか?」


「言ってみろ」


「私が勝ったら、キルアス殿下が私の旅に協力してください!一緒に戦ってくれる仲間がいたら、とっても心強いですから!」


 あぁ…こいつ天然だわ。

 勝っても負けても旅じゃねーか。

 付いて行くのか、付いて来るのか、違いはそれだけだろ。

 ま、いいか。悪魔を単騎で殺れるなら、隷属者の殲滅も少しは楽になるだろうし。


「いいだろう。互いの条件を懸けての勝負だ」


「はい!勝負ですっ!」


 視線をグレンに向けて開始の合図を促すと、グレンが困った顔をしながら近づいてきた。

 グレンが俺の耳元に顔を寄せ『キルアス殿下、武器をお持ちでないのですが…』と囁いた。


 おっと、完全に忘れてたね。


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