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咒言鬼神の転生譚 ~神に請われる神殺し~  作者: TAIRA
第1章 地球から異世界へ
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プロローグ 君が死ぬのを待ってました!

初投稿です。

投稿の仕方を把握するのが今月の目標です。

皆さんの暇潰しになれれば幸いです。

ご意見・ご指摘も歓迎です。


「運が悪かったな。明日なら、俺と出くわす事もなかったろうに。お前は、この地で俺が殺す千人目にして、最後の一人だ」


「お前が…この、バケモノめ!」


「褒めるなよ。照れるだろ?」


――ザシュ


 敵の下顎から脳へ突き上げたナイフを抜き、崩れ落ちる屍から視線を外し天を仰ぐ。

 薄紫色に白む夜が明け、地平線から陽が昇る。

 戦火で荒廃しきった市街地を、陽の光が此れ見よがしに照らし出す。


 昼夜に関係なく、しかし緩急をつけて続く遠距離爆撃。

 月替わりで列強諸国から送り込まれる特殊作戦部隊。

 世界正義を掲げる連合軍は、何が何でもこの国を潰したいらしい。


 左手にストライクガン、右手には長尺のバトルナイフ。

 こんな装備で現代兵器に抗ってきた自分が、どうにも嗤えて仕方がない。

 それでも俺はこうして生きている。

 俺が死ぬことはなかった。死ねなかった。

 そう、今日までは。


 今日という日を待ち詫びた。

 狂おしい程に。

 恋焦がれる様に。



 赤黒い血脂が粘り付くナイフを歓喜と共に握り締め、俺は半壊したビルの屋上に立ち、叫ぶ。


「グッドモーニング、連合軍の諸君!お前等は、この糞虫一匹すら殺せない!そんなお前等に教えてやろう。殺しってのはなぁ、こうやるんだよ!」


(色葉、これでお前に会えるかな…)


 俺はナイフを振り上げ、一閃のもとに己の首を刎ね飛ばした。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




《やっと来てくれた!待ち侘びたよ!》


 遠くで叫んでいるようでもあり、耳元で囁かれているようでもある。

 そんな声を聞いて、俺の意識は覚醒した。


(これは…初めてのパターンだな)


 この場所が暗いのか明るいのか、黒いのか白いのか、狭いのか広いのかも判らない。


(あれだけやっても死なねぇのかよ。終われると思ったんだがなぁ…)


《大丈夫、君はちゃんと死んでるよ!》


(ったく、俺も極まってんなぁ。再生前に幻聴かよ。鎮痛ドラッグ食い過ぎたか?)


《あははは。君はホント面白いね、神木刻斗。いや、生体兵器ゼロと呼ぶべきかな?》


(なっ!?リヴァームズの生き残りか!?…いや、それはないな。お前、何者だ?)


《ちゃんと会話が成立して安心したよ。実は少し不安だったんだ。まあ、今の君は、意識を宿した核のみの存在だから、会話じゃなくて、交信と言うべきだけどね》


(意味不明なこと言ってねーで、俺の問いに答えろ。お前は何者だ?なぜ俺の本名やゼロについて知っている?答えないなら、殺す)


《僕も君と同じで不滅の存在だから、殺すのは無理かなぁ。そんな事より、先ずは君が死んだ事実の認識と、失われた記憶の補完をしてほしいんだけど?》


(俺が死んだ?自己再生開始までのタイムラグだろ。いや、首がビルから落ちたからか?それより、失われた記憶の補完?)


《そうだよ。君は自分の首を切り飛ばして死んだ。生前に弄られた脳や身体による肉体的束縛はもうない。何より、君が長年苦労してきた呪縛からも、解放されているよ。まあ、あれは呪縛じゃなくて特性だから、解放も一時的なものだけどね》


(解放された?不死の咒のことか?状況が全く判んねぇ…)


《正確には不死じゃなくて“不滅”だけどね。取り敢えずさ、騙されたと思って、僕の言うことをやってみてよ。君って、騙されるのには慣れてるだろ?》


(てめぇ。俺はなぁ、慣れてんじゃなくて、騙されるのが得意なんだよ!そこ重要だから間違えんな!)


《え、それって…まあいいや。えーと、意識を自分の真ん中に集中させてみてよ。今の君なら、生まれる前まで記憶を遡ることが出来るからさ》


(生まれる前って、もはや記憶じゃねーだろ。バカ様か?)



 怪訝に思いながらも、俺は意識を集中した。

 “自分の真ん中”なんて抽象的で意味不明だったが、あっさりと自分の真ん中が判った。

 同時に、自分が肉体を持たない魂のような存在である事も認識できた。


 クソ科学者共に消された過去の記憶が、白黒のサイレント映画さながらに意識へ流れ込む。


(そうか…だから俺は死を切望したのか。色葉…色葉は、俺を許してくれるだろうか)


《十八年分って言うか、三十一年分の感傷に浸ってるところ悪いんだけど、今後の事を話そうよ。君にとっても、悪い話ばかりじゃないと思うんだ》


(良いも悪いも、今後の事は決まった。今決まった。俺は否応なく自己再生する。そして、今度こそ確実な解咒方法を突き止めて死んでやる。あの世で色葉に会って、謝り倒さなきゃならねーからな。今んとこ解咒の当てはねーけど)


《ああ、今の状況は記憶と関係ないから理解できないよね。余りにも君の死が嬉しくて、少し急ぎすぎたみたいだ》



 色葉の記憶を取り戻せた事には感謝してもいいが、俺は死ねないって言ってんだろ。

 こいつあれか?腐った脳の持ち主か?

 まあ、俺も果てしなく腐ってるから、人の事は言えないんだが。

 ただ、過去の再生過程に、こんな状況が生じたことはない。

 こいつの言葉にも、若干だが信憑性はある。

 こんな長時間、再生が始まらないってのは異常だ。

 それに、こいつも俺と同じ…ではなさそうだが、意識のみの存在だろうことは理解できる。


(いいぜ。再生するまで俺に出来る事はなさそうだ。お前が新手のペテン師だとしても、暇潰しに話くらいは聞いてやる。精々俺を楽しませろ)


《わぁ…この世界でまでペテン師扱いされるなんて…。最初に明言しておくよ!僕は異世界の神たる存在だからね!》


(スゴイネー。しかしペテン師の切り口としては三流以下だ。もっと斬新なストーリーを展開しろ)


《…君、酷いね。流石に悪鬼羅刹を使役した、堕神だけのことはある》


(お、今のは少しグッときたぞ。その調子でもっとよこせ)


《はぁ…じゃあ話を進めるよ。君が存在した世界より低位階だけど、僕は世界の創造神だ。君は、自分が鬼の先祖返りだって記憶を取り戻したよね。それって実は鬼神なんだ。鬼神は遥かなる昔、君の世界の闘神が、堕天した果ての存在なんだよ。一方、僕の世界が神代だった頃、僕の世界でも闘神が堕天した事があるんだ。その闘神は、禍々しい破壊神に成り果ててしまったけどね。君の宿す鬼神は――》


(ちょっと待て!筋は悪くないが、神話をネタに詐欺るのは難しくないか?)


《詐欺じゃないから!真剣に聞いてよ! で、君の宿す鬼神は、現界で生まれた邪神を討伐して、人々に安寧を齎す事を目的として、自ら堕天した。云わば、救世の堕神だね。だけど、僕の世界で堕天した破壊神は、物や命の区別なく破壊の限りを尽くし、世界を混沌の闇へと突き落とした。僕たち神は、現界に間接的な干渉は出来ても、直接的な権能の行使は出来ないんだ。だから僕は、現界に救世主と成り得る存在を求めた。そして、その人物に権能を分け与え、破壊神に対抗し得る救世の亜神を生誕させた。その亜神の前世が、君と同郷の人間、神前色葉なんだよ》


(……斬新すぎるだろ。救世の亜神とやらの前世が色葉だと?輪廻転生なんぞ信じちゃいないが、仮にあったとしても、異世界であるお前の世界に、色葉が転生する道理がない)


《道理はあるんだよ。精神世界の法則と言い換えてもいい。君の世界の概念で言えば、不滅の存在でない限り、死せる者の魂は輪廻を巡って転生する。確率的には同一の世界で転生する方が圧倒的に高いし、特別な存在でない限り、魂の情報は初期化されて転生する。けどね、極稀に、高位世界から低位世界に、魂の情報を残したまま転生する者が現れるんだ。その希な事例が、神前色葉だね》


(俺は騙されるのが得意だ。そして、戻った記憶からすると、こと色葉が絡む場合、俺の得意は特異にまで昇華される。お前の話を信じてやる。続けろ)


《君は本当に神前色葉を大切に想ってるんだね。人間のそういうところ、僕は大好きだよ。それでね、神前色葉は救世の亜神となって、破壊神の封印を成したんだ。己の器と魂を、封印結界の礎としてね。だけど、彼女の魂力は限界を迎えようとしている。魂力が限界を迎える時、破壊神は解き放たれ、彼女の器と魂は消滅する。死ぬんじゃないよ、完全に消滅するんだ》


 こいつ、俺の煽り方をよく解ってやがる。下調べは万全か?

 自称神の一人称が“僕”って時点で、こいつの方がよほど破壊的だがな。

『僕、神えもん。異世界からやって来たよ。ふーふーふ』不二雄も裸足で逃げ出すぞ。



(で、それを俺がどうにかするって展開か?)


《そう、君にどうにかして貰いたい。正確には、君に破壊神を滅して貰いたい。僕は願う、君が僕の世界に、不滅の鬼神として転生することを》


(Yes、転生だ)


《即決!?いいの!?破壊神をどうやって滅する?とか、本当に神前色葉を助けられるのか?とか、なんか色々諸々種々の疑問とかないの!?》


(うるせぇ!神なら細かいことグダグダ言ってんじゃねーよ。色葉は助ける。そして謝ったらイチャコラする。至上だろ。破壊神とやらの潰し方なんざ二の次だ。つーか、破壊神なんぞ放置して、色葉をソッコー掻っ攫うってのがベストだな。解ったらサクサク転生させろ)


《え、放置がベストって…》


(冗談だ。本音だが。とは言え、報酬は必須だぞ?前払い七割、後払い三割だ。前払い分には現物支給を含んでも構わないが、残り三割はキャッシュオンリーだ。色葉を助けた後に無一文だと、のんびりイチャコラ生活が出来ないからな)


《解るけど…神が現金を持ってるわけないでしょ?でも、どうにかするよ!なんたって僕は神だからね!それに、前払い分ってやつは、既に用意してある。君の助けになるのは間違いないから、期待していいよ。じゃあ行こうか!》


 ノリが軽くて痛いぞ僕神。

 まあ、騙し要素があったとしても、堅苦しいよりはマシか。


 そうか、色葉に会えるのか。 こんなに嬉しい事はない。


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