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勇者と魔王少女たち  作者: ぴよチキ
8/123

-8- 俺、お風呂に入りました

ナラヤ:早く風呂に入りたいぜ

「風呂広っ!」


更衣室で服を脱いでドアを開けた俺は思わずそう言ってしまった。


「ふぉっふぉっふぉっ、最近の若者は元気じゃのう。」


「あ、すみませんうるさくしちゃって。」


「お主はここに来るのは初めてじゃろ?初めて来た客は結構ああいった反応をするから。ワシら常連は慣れておるのでな。気にする事はないぞ。」


「そう言ってもらえると助かります。それにしても外から見た時はこんなに広いとは思いませんでした。」


お風呂は温泉のある大浴場で、水風呂と蒸し風呂とお店を正面から見た時には想像していない広さを誇っていた。


「ここは魔法で空間を拡張しておるからな。見た目よりもかなり広く・高くなっておるよ。」


確かに、ここの高さは絶対に外からでは不可能な高さになっているな。でも空間拡張って一部の高位魔術師が使える希少魔術じゃなかったけ?


「王都では空間拡張することは普通の行為なのですか?」


「普通…という程ではないが他の地域と比べると、店が多くて土地が狭くなることから使われていることが多いといった感じじゃな。」


「確かにお店がそこらかしこに並んでますからね。納得です。」


「さてと、ワシはそろそろ蒸し風呂に行くとするかの、お主はゆっくりお湯に浸かって疲れを取るんじゃな。」


「ありがとうございます。また、お話しましょう。」


そう言って、老人は蒸し風呂に向かっていった。

……はあぁー温まるわー

外の武器を見て中は人いっぱいで結構わちゃわちゃしていると思ったが、お風呂が広いお陰でかなりゆっくり浸かることができる。

明日も来ようかな?

それからしばらくお湯に浸かり、浴場を出て更衣室に戻り着替えてると、


「ふう、今日もいい湯じゃったわい。」


さっきの老人もお風呂から上がってきたようだ。


「おお、お主はさっきの。」


「はい。先程は色々と教えてもらい、ありがとうございました。」


「ふむ…そういえばお主はここに来るのは初めてじゃったな。

すまんが、ちょっとばかし待っとってくれんか?」


ということで、老人が着替え終わるまで待っていた。


「ふぉっふぉっふぉっ、待たせてすまんのう。じゃあ、行こうかの。」


そう言ってドアを開け、さっきのロハスさんのいたところ(ロビーと呼ばれている所らしい)に来た。


「おう、ギマ爺!いつものでいいか?」


「ふぉっふぉっ、今日はこっちのボウズの分も頼む。もちろんワシの奢りじゃ。」


「ある意味それすらいつも通りだけどな。分かったぜ。ほらよ!」


「え?これは?」


「うちの名物の牛乳だ。そんじょそこらで売ってるものとは違って風呂上りに合うように作られた特別品だぜ。どう違うかは飲めばわかる!ほら、ぐいっと一杯やりな!」


そういわれて、俺は隣でその牛乳を飲んでいるギマ爺と同じように、腰に手を当てて一気に牛乳をあおった。


「うまい。」


風呂上がりでのどが渇いているところに濃厚さを引き立てつつも飲みやすい牛乳が流れ込み、最後はレモンのような酸味がさっぱりと締めくくる。普通に飲んでもおいしいが、やはり風呂上りが一番うまいだろう。


「うちが頑張って開発したもんだ、あったりめえよ!」


ロハスさんは自慢げに開発時のことを話し出した。


「大変だったんだぜこれは、お風呂上がりの名物を作ろうということになって。やっぱり牛乳となったまではいいが、工夫しようにも何にも思いつかねえし、いざ果物の、その中でも特にレモンを入れるとさっぱりさが来てうまいとなったが、牛乳の中に入れてしばらくするとボロボロと固まっちまう。それを乗り越えてできたのがこいつなんだ!」


なるほど、自慢気なのはこれに対して相当自信があるからか、確かにこれはうまい。

ギマ爺が、奢ってでも新人に飲んでもらいたかった気持ちがわかるってもんだ。


「ごちそうさまでした。おいしかったです。」


「おう、次来た時も注文してくれよな」


「ギマ爺もありがとうございました。」


「ふぉっふぉっふぉ、これの美味しさを知ってくれたようで、ワシも大満足じゃ。」


「それでは俺はこれで失礼しますね。今日は本当にありがとうございました。」


そういって、俺はゆせりぐ亭に向けて帰っていくのだった。

でも何か忘れているような……そう思いながら、持っていた木の札をトス&キャッチして考える。

うーん、なんだろうな…トス…キャッチ…トス…キャッチ…トス……


「あああぁぁ!!」


俺はさっきから投げていた札を見た!!

その札もとい番号札を…

そして俺はまたロハスに向かって戻ってゆくのだった。


ーーーーーーーーーー


「おうボウズ、戻ってきたか。おかえり。」


風呂屋ロハスに戻った俺を待っていたのはロハスさんの豪快な笑い声とおかえりという言葉だった。


「ただいまです。ちょっと忘れ物をしちゃいまして……」


「おう、これだろ?たまにいるからなこういうお客は。」


そういって、ロハスさんは俺の剣とナイフを出した。


「ありがとうございます。ここにあったんですね。どおりで外を探しても見つからないわけだ……」


一応、外で自分の剣は探してはいたが見つからなかったので、もしかしたらと思っていたがやはりここだったようだ。


「そりゃあお前、いくら本人が受け取りを忘れたとはいえ、一日中武器を外に放り出していたら、せっかく手入れした意味がないだろう。だから、受け取りを忘れた武器は基本分かったらすぐに回収してるぜ。」


なるほど、だから俺の武器はこっちにあったということか。

番号札を渡して剣とナイフを受け取った俺が、改めて帰ってきたそれらを見ると。


「すげぇ……」


思わず感嘆の声をあげてしまった。


なんということでしょう、ずっとナラヤが調理時に使っていて錆や刃こぼれの目立っていたナイフは匠の手によって綺麗に研ぎなおされ、光沢を放っている。

そして、何でもいいやと適当に購入した安値の剣は、研ぎなおされていることはもちろんのこと、ガタガタだった柄と剣身がしっかりとはまって振りやすくなっていた。


「本当に……無料でいいんですか?」


俺は確かめずにはいられなかった。それほどにすごい出来栄えだったのだ。


「おう、サービスなんだから金は取らねえよ。それよりもまたうちを利用してくれたほうが嬉しいぜ。」


ロハスさんは屈託のない笑顔でそう言ってくれたので、俺はできる限りの感謝を告げて風呂屋ロハスからゆせりぐ亭に帰るのだった。

ギマ爺:ふぉっふぉっふぉっ…

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