歯車と卵5
「――では、皆さんも、魔法を使ってみましょう! レッツマジカル!
――……と、言いたいところですが、その前にちょっとした確認事項を」
そう言って五味うずらは、ギアーズ全員に資料を配った。資料は今どき珍しい紙製だ。
ギアーズにおける規則が書いてある紙が一枚、もう一枚は、自身の住所・連絡先・生年月日・名前・魔力指数、そして――【ソウルネーム】が書かれていた。
雪平コトカのソウルネームは、【エメンタール】。
「魔力指数は、あなた方個人の魔力の強さです。どういう訳か、その数値が跳ね上がるのは思春期、とくに女性が高いのです。魔法を使うたびに数値は少しずつ下がりますが、しばらくするとまた上がります。最大値まではね。頑張ればそれすらも上げることだって出来ますよ!
そして、ソウルネームは、我々国家管理局総務課がギアーズを管理するための個人コードでもあり、ギアーズ同士のプライバシーを守るものです。ギアーズの間ではその名前で呼び合ってくださいな」
「プライバシー、か」ギアーズのメンバーである一人の少女が口を開いた。「久々に聞いた単語だね」
彼女のソウルネームは【チェダー】。空色の長い髪をサイドテールにしているが、それでも腰まで伸びている。長い下まつげが特徴的だ。
五味うずらはチェダーの発言に答える。
「そうですねえ。今じゃうちのサイバー課が頑張ってますから! 皆、守られすぎて自衛の必要なんてないですからね。……なんでも昔は、『ID』と『パスワード』なんていう面倒くさいセキュリティコードをたくさん持っていたとか。そのうち『プライバシー』なんて言葉も、死語になるんじゃないですかねえ。
――……それでは今度こそ、『うずらちゃんのドキドキ魔法講座』、始めますよっ!」