ラプチャー
〈育児日記12〉
久々に日記を書く。
最近はいろんなことがあって忙しく、最後に日記を書いた日から随分と時間が経ってしまった。もうすっかり秋だ。
コトカは相変わらず元気だ。特に変わったところはない。強いて言えば、乙ちゃんの話が多くなった。本当に仲がいいのだろう。
・ ・ ・
――――――!!!!!congratulation!!!!!――――――
「……ふぅ」
がらがらと黒い瓦礫が崩れ、空の緑は青に戻った。
「す……すごいねカマンベールちゃん。本当に一発で!」
エメンタールが目を丸く輝かせ、感嘆の声をあげる。
カマンベールは少し照れたように笑い、変身を解いた。
「いや……たまたまだよ。エメンタールちゃんが後ろをサポートしてくれたから」
「そ、そうかな!? ……あ! あのさ、」「じゃあ、おつかれさま。またね」
「……うん」
――――……駄目かぁ。
嘆息を漏らしたエメンタールの元に五味うずらがやって来る。
あの一件から総務課もラボに目を光らせているらしく、うずらが頻繁に監視塔へ来るようになったのだ。
正直、彼女は強い。というのも、ギアーズと違って固定された武器がないのだ。コアを持っていないため御伽による操作だが、その扱いが飛びぬけて上手い。
橙色の光を帯びた魔法陣は盾になり、その応用で剣を造り出すこともできる。ただの線が組み合わさってできたものだが、彼女が持つと大きな防御力、攻撃力になる。
「お疲れ様です! お一人ですか?」
「うずらちゃん……。さっきまでカマンベールちゃんがいたけど、もう帰っちゃった」
「ああ……なるほど」
カマンベールについて聞こうとしたが、やめた。ギアーズ内で個人情報は明かされていない。いくらこんな些細な質問でも、他人に聞くのはよくないだろう。【ソウルネーム】なんて付けられるくらいだから。
――――いや……聞きたいことは別に、ある。
「……うずらちゃんさ、この間言ってたやつ。あれは何だったの? メモ……」
「メモラジック?」「それ」
「ふむ…………」
五味うずらは顎に手を当てた。何か思案しながら、エメンタールをまじまじと見つめる。
「……うん、いいでしょう! 教えてあげます!」
「『メモラジック』、っていうのは、我々国家管理局が生み出したものです。簡単に言うと、『魔法エネルギー』。
この国は魔法によって統治されています。そのときに必要なものがメモラジック。どう言ったらわかりやすいかなあ……。
ええとつまり、ギアーズや私が魔法を使うために必要なものが御伽ですよね。それの規模が大きくなった感じです。ガードポールとか危機察知システムとか、国が魔法を使うために必要なのがメモラジックなんです。FASがそれを使うと、ガードポールやら何やらが働くってわけです」
「――しかし」
「メモラジックは、ギアーズには効かないんです。あなたたちがいくら危機に直面しても、メモラジックは作動しない。例外もありますが、それは極めて稀。
……御伽の副作用ってやつです」
だからあなたを守る必要がある、と彼女は付け足した。