食材と贖罪7
――――warning!――――warning!!――――warning!!!――――
高い青空が緑色の夜に覆われる。見慣れた、見飽きた、戦闘の始まりだ。
国家管理局監視塔・西区屋上。そこにはロックフォールとスティルトンが敵襲に目を光らせていた。
「スティルトン……」
「ああ、これは二体の可能性が高いねえ……頼めるかな」
「任せてくれ」
轟くような風が吹いた。
コンクリートだった地面に野原が広がる。その草一本一本は黒く、ナイフのように鋭く細い。
風が吹けば吹くほど、草原は暴れた。黒い竜巻がうず高く育った。
その軸には瓦礫で覆われた細く長い人型……風の虚。風で剥がれた瓦礫を草で修復しながら、渦に合わせて不気味に揺れる。
もう一体の野原の虚は、地を駆け回る小さな鎧の塊。餓鬼のように走り、その道筋に沿って草たちが舞った。
揺れる空虚と、駆ける虚。ロックフォールは風で乾く目を凝らしながら虚を確認した。
「……動き回るのが厄介だな」
「私が奴を捕えよう。そしたら、よろしく」
「ああ」
二人がコアに意識を集中させる。青と赤の光が塔を照らした。
ロックフォールはラジコン、スティルトンはチャクラムと背後に現れる無数の腕。それぞれの武器を装備した。
ロックフォールのラジコン戦車は全車輌六輌が前進し、塔の壁を伝い地に降りた。本人は塔の上で操作を行う。
スティルトンは塔から飛び降り、浮遊しながら野原の虚を追跡する。
車輌は風の虚を囲んだ。ここで捕えた野原の虚と共に四散させる算段だ。
びゅお、と風が唸り葉が踊った。鋭いそれはロックフォールの眼前に迫る――。
が、彼女には切り傷一つつかなかった。
コアに意識を集中させれば、バリアも張ることも可能なのだ。彼女の濃紺色のバリアは次々に葉を弾く。
戦車の履帯が外れそうになったのを見かねて、ロックフォールは冷静に整えた。武器とバリア、意識が二つに散漫していた証拠だが、彼女は慌てない。目的は、このバケモノを倒すだけ。
一方スティルトンは、野原の虚を追っていた。背後の無数の腕――千手が伸び、小さなバケモノを難なく捕えた。
袋の鼠。風と野原の虚は戦車に囲まれ、ギチギチと鎧を軋ませた。
――――……撃て。
砲弾が空を切り裂き、鎧を貫いた。絶え間なく続く攻撃音は黄泉を震わせた。
まだ、続く。
たった二体に、次々と砲弾がめり込む。
鎧は砕け、金切り声のような断末魔も聞こえる。
がらがら、ぐら、ばらばらばら、
砲、砲、砲
――――――!!!!!!congratulation!!!!!!――――――
「…………はぁ」
「おつかれ。手ごたえはまあ……微妙だったね」
「雑魚だ」
「私たちが強くなったのさ」
「そうか?」
空間は現実世界に戻り、元の青空が広がった。
「おおぉおっ! お見事です! いやはや、見事に上達しましたねぇ!」
塔に五味うずらが現れた。仕事済ませ、こちらにやってきたのだろう。
「実はラボの件もあり、私も見張りをお手伝いした方がいいかと考えてたんですが……、余計なお世話でしたね!」
「ああ、五味。そのラボについて、少し聞きたいことがあるのだが」
「? なんですロックフォールさん」
「……本当に彼らを殺さなくては、いけないのか……?」
冷えた風が空気を漂う。屋上の芝と花が揺れた。
「……もちろん、仕掛けなくては意味がないじゃないですか」