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食材と贖罪2

 アハハハハハハハ、ハハ、ハハハHAHAHA!!


 くだらない、くだらないねえ!? なあ! エメンタール!


 ほら、大事な記憶が出来たじゃないか、喜べよ。バレてないかと思ったかな? キオクソーシツ、可哀想だねえ?


 現実から目を背けるな、あのピエロは、死んだ!


 

 静寂を轟くように破る、少女の笑い声。

 ケラケラと空間を飽和させながら、一人の少女に叫んだ。


「パルメザン……黙れ、黙れよ!」


「怖いねえ、ボクを殺す気か? それは賢明じゃないよ、チェダー」



(笑)



 時間は少し遡って、数十分前。


 博物館ミュージアムに、ギアーズのメンバー全員が招集された。……ゴルゴンゾーラを除いて。

 格子柄の床、壁にそびえたつ本棚、宙にぶら下がった大きな恐竜の骨。七人の少女の前には、黒い眼帯をした、これまた少女。五味いつみうずら。国家管理局総務課に所属する、ギアーズ教育係。

 

 教育係は、淡々と訃報を知らせた



「……先日、ゴルゴンゾーラさんが亡くなりました。殉死です。葦原研究所の交戦で敗北、あちらの身元は分かっていませんが後ほど。同じ当番だったパルメザンさんとエメンタールさんは、私が駆け付けたため、運よく……」


「エメンタール……」


 エメンタール。彼女は未だ立ち直れずに、ポロポロと瞳から雫をこぼしていた。チェダーは彼女の背を撫で宥めた。その様子を嗤っている奴がいたが、無視した。



「ギアーズとはそういう組織です。異形と戦い、ときに同じ人間とも戦わなくてはならない。文字通り、命がけ。私たちができることは、亡くなった彼女の分まで戦い、戦い、戦い……この国を脅威から遠ざける。絶対的な平和を勝ち取るのです」



 ――魔法で。


 そう告げた五味うずらの眼は、決意に満ちていた。そうか、彼女も気持ちは同じなのか。ギアーズでなくとも、それを育て上げる苦労は計り知れない。全員が全員、命を懸けている。


 ならばやめてしまえばいい。見知らぬ誰か……研究所の職員まで含めた国民すべてを、命を懸けてまで守る必要があるのか。もっと利己的になっていいはずなのだ。


 しかし、誰もがそれを拒んだ。


 実際、国を守るのは二の次。ギアーズをやめ、自分のために生きるよりもずっと、彼女らは利己的なのだ。


 ある者は血筋によって定められた、無作為な殺人をやめるため。ある者はかつての復讐を果たすため。ある者はとある組織を潰すため。


 ある者は罪を償うため。ある者は……自分を変えるため。


 

 その踏み台となるのがこの組織。戦わなくてはならない。それが彼女らの人生、戦わざるを得ないもの。……いかにも人生らしい。




「では……話は以上です。くれぐれも、無理はしないでください」





 ・・・


そして今に至る。


 博物館には、エメンタール、チェダー、パルメザンのみ。


 

 あの一件で、エメンタールの魔力指数が上がった。微力だが、テレパスくらいは使えるだろう。

 魔力指数は、個性の現れ。皮肉なことに、死を目の当たりするという経験を手に入れた彼女の指数が上がらない訳ないのだ。


「パルメザン……さん、は、悲しくないの……?」


「悲しいわけあるか! 人の死は平等だ。死ぬ時期が不平等ってとこまで平等だよ。HAHAHA」


「! おかしいよ、ねえ、私たちも、たすけ、れば……! どうして……」

「行こう、エメンタール。あんな奴ほっとこう」


チェダーがエメンタールの手首を握り、博物館の出口となる上り階段を目指す。


「チェダー!」



「エゴに食われると、面倒なことになるぜ? AHAHA!」


「……。





エメンタール、どこかで休もう」


 パルメザン。



 ――――……まずはこいつからだ。


【カマンベール】

【チェダー】

【ロックフォール】

【スティルトン】

【ゴーダ】

【パルメザン】

【マスカルポーネ】→葦原研究所のスパイであったため、脱退

【ゴルゴンゾーラ】→更田真打との交戦に敗北

【エメンタール】

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