歯車と卵4
――――……そう、だったんだ…………。
ギアーズの誰もが、何も言えないままでいた。自分たちの生きている世界がどれほど儚くて、どれほど守られているのか、思い知ったのである。
「そんな暗い顔しないでください! 我々にはギアーズがいます! それだけで、大きな成功なのです! 交響曲から20年以上かけて生まれた魔法と、ギアーズは、国民に希望を与えるのです! まさにラプチャーの如く!」
国民に希望を与える存在、ギアーズ。
彼らはその重大さ、尊さ、責任を再確認した。私たちが、社会の動力源となるのだ、と。
「ただ、魔法もエネルギーの一つです。エネルギーには排出物も存在します。これは魔法に関しても例外ではなく、『黄泉』という別世界から、『虚』というバケモノが我々の使う魔法を嗅ぎつけてやってくるのです。国家管理局とギアーズを目がけて、ね」
「奴らがやってきたかどうかの確認は簡単。――『黄泉の時間』は、空が緑色になるのです。その時間は現実世界と隔離されますが、放っておくと我々の街にまで悪影響を及ぼす。……それを食い止めるのがギアーズの役目です」
「黄泉に入り込むことができるのは、魔法を使える人間のみ。私たちとギアーズ、という訳! これから頑張っていきましょう! ね!」
――――……なんか、大変なことになってきたな。
どれほど五味の説明する、自身の役目に難しさを感じても、ここで断れる人間などいなかった。
五味は期待に満ちた左目で、彼らを眺めた。