大体堕胎な怠惰7
国家管理局・エレベーターホール。
中に入ったブーバとキキは、見知らぬ声の方を見詰める。
地下階段からだんだんと足音が聞こえてきた。暗闇から、ゆっくりからからと。
姿を現したのは……双子と同じ年齢ほどの、少女。
「……誰ですか? ――白衣…………葦原の人ですね、そうでしょ?」
あっさりとばれてしまっている。目の前に対峙したその少女はゆらゆらと、揺れながらこちらの様子を窺っている。武器を持っているようには見えない。嘘をつくか……?
「……そうだよ。」「臨時会議に呼ばれたんです、研究員として。あなたはここに所属する人ですか、?」
「――会議、ねえ。ご苦労様です。
…………嘘がバレバレなんですよ、研究所は私たちにとって、圧倒的敵」
――――……、!?
「まさか、」
「意外と愚かなんですね。普通正面から入りますか? 確かに扉はここしかないけど、もっとバレない方法とかあったんじゃない? 科学の力でさぁ!」
「馬鹿にするな、殺すぞ。」「……お前は誰だ、答えろ、」
双子はナイフを片手に忍ばせた。もう取り繕うことは出来ないだろう。対象を削除し、偵察を再開する。殺害命令は出ていないが、仕方ない。全ては自分らを守るためだ。
少女は辺りを少し見渡したあと、嗤った。
「カメラがつけられた様子も……ない。盗聴器も。……まあ、あったら壊せばいい話か。
国家管理局機密部隊ギアーズ、【カマンベール】です。局内の見張り業務真っ最中。
ああ、私の名前なんて覚えなくていいですよ!
…………あなた達はここで死ぬんで」
カマンベールが帯飾りのコアに意識を集中させる。黄色の光に包まれたあと、戦闘衣装に着替えた。変身前も和装だが、戦闘衣装はそれとは違い、黒い十二単のようだ。もちろん、動きやすいように実際の十二単とはかなりの相違点があるが。
ブーバとキキは潜めていたナイフの刃を彼女に向ける。二対一、それに自分らは双子。息が合わないわけがない。ブーバは口角を上げるキキをちらりと見やった。
――――あとでЯに怒られちゃうかな……、
「ブーバ、やろう。」「……そうだね、」
「ご愁傷様です、あははっ……」
鋏。
カマンベールは自身の武器、大鋏を装備した。長い前髪のせいで隠れてしまっている瞳は、獲物を捕らえる眼をしていると髪越しでもわかってしまう。まるで獣。それくらい強い、黒い瞳だ。
二枚の刃同士がギラギラと殺意を纏う。ホール内の気温がぐっと下がったように感じた。
どちらかが勝ち、どちらかが負ける。
“さっさと済ませてしまおう”
お互いがそう思った。