大体堕胎な怠惰
ブーバとキキは、双子といっても性格はまるで正反対だった。
妹のキキはやんちゃ娘、姉のブーバはおとなしい少女。真逆だからこそ、中和されるかのように呼吸がぴったりなのだ。ちがうけど、いっしょ。
研究所内の武器庫に二人はいた。ギグルたちが会話をしていたあの赤い部屋だ。
「ブーバ、どれにしよう。?」「……これ。それ以外は、大きくて使えないよ、」
ブーバは壁の下側に掛けられている小さなナイフを二つ、手に取った。「うん、ぴったり、」
「あはは。」
年が同じとは言え、ブーバは姉としての責任があった。妹を守る必要がある。彼女のおてんばをセーブすることが出来るのはブーバただ一人、それならなおさら自身の役目は重い。
――――今回の任務もそう。私がキキを引っ張らなくちゃ。キキのために、家族のために。
“ホーム”の一員としてЯ(ヤー)達に迎え入れられてから、彼女らの「家族」の定義は変わった。血の繋がり? 遺伝子? 違う、違うよね。
そんなもの、双子にとってはただの「束縛」。血管という名の縄だ。縛られたいか? いやいや、まさか!
親は「子どもを産むか産まないか」の選択肢はあるけれど、子どもは「生まれるか生まれないか」なんて、選べない。生まれることすら知らない。
本当の家族は、Я達のことをいうんだ。……双子はそれを信じて疑わなかった。
金色の三つ編みがゆらりと揺れた。赤には黄色がよく映える。ナイフの柄をぎゅっと握り、かつての感覚を思い出す。まぎれもない、人を殺めた感覚。それは母親だったモノ、それは父親だったモノ。憎しみは今でも新鮮だ。あのときの赤だって、双子の髪色が映えていた。
……ただ、
――――……ただ、やるべきことは偵察。いざとなったら使うための武器だ。キキが暴走しなければ、平気。
白衣の裾を引っ張った。気を引き締めるためらしい。「……よし。」「……うん、」
これも一つの「復讐」だ。Яを苦しめた、研究所を傷つけた、科学を軽視した……。双子は復讐のために動く。穢れていたって構わない。大事な人が、家族が、自分らのせいで壊れるのはもう見たくない。
双子の呼吸は一つになる。幼き魂が黒い影を募らせる。これが私たちの、正義なんだ。
……急ごう、。
「――――国家管理局へ、。」