ダイタイダタイナタイダ6
空中ブランコが揺れる。その度に、木々が姦しくギイギイと鳴った。不気味で暗い、夜の森。そのはずなのに、小さな少女は笑う、嗤う。
ここは彼女の独壇場、サーカスだ。
――……そして。
――――――!!!!!congratulation!!!!!――――――
森林の中の樹木、一本。ゴルゴンゾーラはそれを片手で引っこ抜き、武器のジャグリングクラブで殴った。オレンジ色の爆発の末、黄泉の時間は終わった。
「……ハァ、ロックフォールの判断は賢明だったわね。軍人の勘?」
「……どうしてそれを」
ロックフォール――本名・指扇捷子。彼女はギアーズ加入前は雇われ兵士として戦地で残酷な闘いばかりしてきた。仕方ない、「家」がそうなのだから。しかし、それを知っているのはスティルトンのみだったはず……。話したのか? 彼女が? そんなやつだったのか?
「アラ、私たちの間では有名よ? 深い深い、蒼色の髪と瞳。そんなの、サシオーギファミリーしかいないじゃない」
「マフィアみたいな言い方をするな。……いかにも、私は指扇家の人間だ。“私たち”っていうのはあれか? この平和裏に残虐行為をする組織のことか? 『私たち』みたいに」
「さあね」
「……仮敷島か」
「違うわよ、もう。私はハーフ」「どこの?」「イ・タ・リ・ア」
「…………そうか」
「――――……ちょぉっとしつれーい」
「!?」
ロックフォールとゴーダが話していた、管理塔の屋上に二人の青年。二組は対峙する。――間違いない、研究所の奴らだ。
そのうちの一人が――臙脂色のゆるい髪がかかった、猫のような金色の瞳――こちらを見て薄く笑っている。彼の服は黒い。ロングブーツが光を反射し、妖しくきらめく。ゴーダは鋭く睨んだが、効果は無かった。もう一人の青年は……
「マスカルポーネ……!」
見知った顔だ。第一印象はおとなしい少年だったのだが、今は真逆だ。野蛮で生意気な、敵。服装もギアーズ時の洋装とは打って変わって、黒いタンクトップに作業着のようなズボン。腰に巻いている白衣が風になびいている。
「その名前で呼ぶんじゃねえよクズ共。オレは安名茉莉也様だ、クソが」
「ペレストロイカです、よろしくね」
腹の立つニヤニヤとした笑いと、人畜無害そうな柔らかな微笑み。笑いの質は違うが、二人は明らかにこちらに悪意を持っていた。ここへ来た目的は……大方予想はついている、信じたくもないが。
「どうやってここへ来た。セキュリティロックがされているはずだ」「どんなロック?」「扉にコアを……あ!」
「……そーゆーこ・と! オレが持ってんだよ、そのゴミをよぉ!
――ほら、さっさと死ねや」
――――……!
チャキリと冷たい金属音。安名が取り出した銃がこちらに向けられている。そして……引き金が引かれた。