ダイタイダタイナタイダ5
――――さて、どうする……。
魔法を使うか? いや、なるべく物理作戦の方がいい。この広い樹海では御伽の一つや二つじゃ足りっこない。
それに、魔力指数だって減っては困る。大きな魔法を使えば使うほど魔力指数が減るのは当然だ。ゼロになったら自己の破滅だと五味も言っていた。オーバーヒートと同じ、過剰に使い負荷を与えれば故障の原因になる。しかも不可逆なのだ。
もしかしたら三人ならいけるか? ……いや、わからない。三人分の安全を保てる魔力指数で、この樹海を消せるか否か………。
「ア~~~、うん、うんウン、ろっくほおぉーる」
「? ……なんだ、まさか策があるのか?」
「UN」
ゴルゴンゾーラがロックフォールの肩を人差し指で叩き、話しかけた。身長差が大きいがゆえロックフォールは彼女を見下ろす形になるが、存在感はゴルゴンゾーラの方が圧倒的に勝る。
彼女は葡萄色の布袋を取り出した。――御伽の入っているものだ。
右手で掴んだそれをぶんぶんと振り、左手のひらの上に御伽を落とした。黄色や桃色の欠片たちがぽろぽろとこぼれる。
「ああ、悪い、それも考えたんだがあまりにも量が……」
「A~~……NM」
手のひらの御伽の山を一気に自身の口へ放り込んだ。口いっぱいに御伽を食む。
「……おい! 使い過ぎだ、やめておけ!」
ゴルゴンゾーラはやめない。ごくりと飲み込み、左頬の宝石――オレンジ色のコアを光らせた。戦闘衣装に着替えたのだ、加えて顔に化粧も施されている。
「ン~~~~~? ………ア! みつけたーーーーA!!!!」
「えっ……まさか、今の」
ゴルゴンゾーラの目的は樹海を消すことではなかった。――この中から虚を見つけるために魔法を使ったのだ。
今の彼女の視界には、その虚の場所がマークされているのだろう。塔から飛び降り地面に降り立ったと思いきや、跳躍した。
「AHAHAHAHAHAHA!! HOI!」
「えっ……え!?」ゴーダが塔を見上げる。「ちょっとぉ! 何をしでかすのよあの子!」
「まあ待て……彼女なりの策なんだ、これは」
――――もしかすると、私はゴルゴンゾーラを甘く見ていた……?
跳躍したあと、木々の間をつばめのように風を切りながら移動する。走っているわけでも、飛んでいるわけでもない。……蔦を跳ねながら渡っているのだ。蔦から蔦へと、空中ブランコのように。
まるで黄泉ではない。――ここはゴルゴンゾーラの舞台だ。