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畢竟予兆
肌を刺激するような暑さと、梅雨入りをほのめかすような湿っぽさ。
局津乙は、国家管理局へ足を運んでいる。風のない日曜日、彼女の長い髪束を揺らすのは彼女の歩調のみ。
休日とあって、人は多い。すれ違う肩スレスレに、人混みを縫っている。
ただ、どんなに距離は近くとも、その心の距離は恐ろしく遠い。満たされていれば、他人に干渉する必要などないのだ。いいような、悪いような。それでもFASは、周る。
管理局内はひんやりとしていた。空調の在処はわからない。これも魔法なのだろうか。
「……」
“みなさんに大事な、だいぃーーじなお話があります! ちゃんと来てくださいね!”
先日聞いた、五味うずらの声。テレパシーというのは何かと便利だ。応答するにはこちらも御伽を使わなくてはならない。……一人の友人の顔が脳裏をよぎった。
きっとあの子は、返事が出来なかっただろう。自身の空虚さに嘆いていたのだろうか。
――――……何か、何かしないと。……あたしがあの子の友達なんだから。
エレベーターに挟まれた地下への階段を下った。