フラスコに詰まった凶器6
「――……とまあ、パルメザンから報告を受けましてぇ。やっとですねえ!」
「そうね。……偶然という名の、神様からのご褒美ね」
国家管理局・局長室でもまた、二人の人間が会話を繰り広げていた。相変わらず仄暗く、モニターがチカチカと点灯している。
五味うずらと、……局長、カンラク。
うずらはゴーダ・エメンタールペアには敵襲がなかったこと、パルメザンからスパイの報告を受けたことを、陽気に語る。
「まーさかギアーズ適性リストにラボの連中がいるなんて! 局長の判断は正しかったですね、これで我々も確実に潰しにかかれます!」
そう、彼女らは「知っていた」のだ。ギアーズにふさわしい者の中に、ラボの人間がいること。その人間をスパイとして送り込ませたこと。何もかも。
魔力指数を専用機器で測定した際にすでに分かっていたが、それでもカンラクは彼をギアーズにした。……あちらからの攻撃が来れば、こちらも攻撃が可能である、と。
「科学じゃ人を幸せに出来ない。FASを動かせない。……わかりきっているのに、無駄な争いは手早く済ましましょう」
「はい! ……じゃあ、そろそろ……。
私たちのスパイの出番ですねえ?」
カンラクの笑い声が、小さく空気を震わせた。「……そうね、お願い」
うずらが御伽を噛んだ。クリスマスプレゼントを開けるときのように、彼女の心が躍った。……これから始まる戦争への期待と、敵への嫌悪感が混ざり合う。
「…………あ、聞こえますか?
【ゴルゴンゾーラ】さん! そろそろこちらに戻ってきてください! ――そうですねえ……。……宣戦布告くらいはしてやりましょう! あはは!」