フラスコに詰まった凶器3
葦原研究所は、ビルの森の中にどんとした面構えで立地している。
その見た目は白い円柱で、まるで大きなマシュマロのようだ。その円周と平行に窓がいくつも並んでおり、入り口は真っ黒な自動ドア。ただ、それは研究所の外から見た色であって、研究所内からは透明に見える。
研究所の敷地内には、水槽のような植物園、薬品庫である大きなコンテナがあり、入り口へと続く道に沿って赤と黄色の花が咲いている。大きな門は鉄製で、金持ちの豪邸にあるようなものに似ている。
外観は、「少し豪華な研究所」といったところで特に大きな特徴はないが、内側はまた別の話である。というのも、葦原研究所は宮殿のような内装なのだ。
白と青を基調とした、絢爛豪華な廊下や実験室は他の研究所とは圧倒的に違う。これをデザインした所長のЯは「ロシアの駅内をイメージしたよ」などと述べているが、信じている研究員はまずいない。
そんな研究所にある一室、鉄と火薬と石油の香りのする、ゴシック調の真っ赤な部屋。真っ赤な絨毯と真っ赤な猫足のソファ。それに似つかない鋼の扉。この部屋には更田真打とペレストロイカが、火薬の棚を漁っていた。
「これどうかな? マトリョーシカ爆弾!」
「……趣味が悪い。」
真打がよくあるグレネード爆弾を手に取った。
「趣味悪いなんて言ったら、Яが怒るよ? 僕もそんなありがちなもの、つまんないよ。
せっかくこんな見た目なんだからさ、葉っぱを生やして、黄色に塗ってパイナップルみたいにするのはどうかな! パイナップル爆弾! 爆発するとそこは南国! 桃源郷だねえ」
そんなペレストロイカをよそに、真打は爆弾を補充した。今回の仕事は大がかりにする必要がある。それはペレストロイカも同じ。にもかかわらず彼は飄々としていて、余裕な口ぶりだ。
「……あとは、銃だな」