あっとうてきてき!4
「…………。
断る」
パルメザンは答えた。狂気に満ちたあの笑顔とは裏腹に、蔑視とも無感情ともとれる表情で。
「なっ……、ハァ? お前、ラボだぞ?」
「そんなことしたって、このボクになぁーんのメリットがあるっていうのさぁ? 答えてみろよ。ボクはあのバケモノ倒して好き勝手やるね、キミらのような組織は好かん」
「テメェ……」
ギリリ、と歯と歯が軋む音がした。
めらめらとマスカルポーネの瞳に黒い炎が募った。
そこに対峙する少女もまた、漆黒の眼で彼を見る。
「科学だかなんだか知らないけど、ボクはね、」
釘バットの衝撃で抉れた地面に落ちた、土の小さな破片を右手で拾い、左手で御伽を取り出し、
噛み潰した。
破片が飴玉に変わった。菓子の代表を名乗る、生意気な砂糖の塊。
「“使える”側に立つのさ」
キミではこれを噛み砕けないんだろう? と、御伽に光をちらつかせ、パルメザンは不敵な笑みを浮かべた。
「……殺すぞ?」
「おお! 怖い怖い! 確かに魔法で人を殺そうなんてしたら、魔力はスッカラカンになるに決まってるもんねぇ。叶える奇跡の重さによって、対価だって重くなる」
小さな舌打ち。マスカルポーネは、変わらず鋭い目つきで睨んだ。
「殺害命令は出てねえ。……だから真打の野郎の言うことなんざ聞きたくなかったんだ! クソ、覚えてろよ。科学が全てだって、今にわかる。そして後悔しろ、じゃーな!」
「バイバイ、裏切りサイエンティスト、マスカルポーネ」
「その名前で呼ぶんじゃねえ!
オレは安名茉莉也だ! お前を殺す人間の名前だ。……死んでも覚えてろ」
怒りに任せた足音が遠のいていった。
「……クソガキが」
飴玉が奥歯で砕かれた。嵐の過ぎたような空模様の下で、黒い雰囲気を纏った少女がただ一人、口角を上げているのだった。