あっとうてきてき!
轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟――――!
月面が轟いた。空間は、薄荷色で、黒い。
パルメザンとマスカルポーネは、戦闘の真っ只中だった。
大きく膨れ上がった黒い月。そこが今回の虚の住処だ。
二人は月面を走り、バケモノの様子を伺う。月平線は遠い。
クレーターの部分には、コロッセオのような堅く厚い壁が、輪切りの玉ねぎのように円形に重なっている。パルメザンは壁の上を走っていた。
と、同時に、虚も彼女を目がけて攻撃する。壁はがらがらと、彼女の真後ろで崩れていく。
「アハハハハハHAHAHAHA!!! 届かねえよ! 残念だねえ! キメラゴーストめ!」
笑いながら疾風のように走る。肩に担がれた、彼女の武器である緑色のモーニングスターの鎖がジャラジャラと金属音を弾ませている。それを掻き消すかのように、虚も破壊しだす。
月の虚。大きな人型の虚構。頭からは長い獣の耳が二本、生えている。大きな腕は蟹の鋏。そして獅子の尻尾が猛々しく風を切りながら揺れるのだ。
「ちょっと! お互いじっとしててよ! 空振ったらどうすんのさ!」
白い釘バットを持ったマスカルポーネが、パルメザンの向かう方向から叫ぶ。
じゃらじゃら、がらがらがら、!!
パルメザンの劈くような笑い声が黄泉を満たし、満たしていく。
「……まったくもう……。
……五秒でぶっ壊そうね」