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フィルター越しの共闘10

「……到着した。うわあ、こんなバケモノが三匹も……」


「大丈夫かなあ、やっぱりテレポートした方が良かったんじゃないかなあ?」


「いや、アンタ魔法使ったらヤバイじゃん。置いてけないって……」


 ロックフォールの後方から、話し声が聞こえてきた。応援に呼んだチェダーとエメンタールだ。監視塔のエレベーターに乗ってこの屋上まで来たのだろう。


 黄泉ヨミは現実世界とは隔離された世界であり、黄泉の時間は景色が別物になるが、この塔だけは現実世界でも、黄泉でも、存在するのだ。灰色のビルの街でも薄荷色の巣窟でも、象牙色の円柱であるそれは目立つ。



「悪いね、遅くなって。あたしの相棒が国家管理局の実験体モルモットなもんで」


 ――――そうか、このエメンタールというのは……。


 チェダーがいたずらっぽくエメンタールを見て笑う。エメンタールというこの少女は魔力指数がかなり低い、らしい。


「構わない、助かるよ」空中で千手を操っている自身の相棒に向かって叫ぶ。「スティルトン! 応援が来たぞ!」


 

 黒い瓦礫と格闘するスティルトンも声を張って答えた。「ええーっと! 誰だっけえー?」


「あたしとエメンタールだよ」「どっ……どうも! チェダーちゃん、すごいねあれ……」



 これで四人対三体。うち一人は少し不安だが……戦える人数は多いほうが良い。魔力指数が低いなりに頑張っているのだろう。



 ――――私も、仲間を二人失ったなりに……いや、いや、違う。


 ふるふると頭を振り、ロックフォールは再び敵に集中した。「私たちが倒すべきものは、岩場にいるあの二体だ。……頼むぞ」


 応援の二人は、真っ黒な岩場の方へ向かった。次はロックフォールが戦場へ向かう番だ。



 「――……行くぞ」


 六本のレバーを同時に前へ傾けた。それに従い、六輌の戦車は進み、塔の屋上から、



 がたん!

 

 落ちたと思いきや、それらは塔の壁を走る。重厚なエンジン音を鳴らして。まるで一つのオーケストラのように。


 戦車が岩場の虚へと向かっていく。その先には、二人の少女も一緒だった。


 ――――隠れた虚が、邪魔だな。


「なあ、二人とも! この岩を撃って壊すから、その後一気に攻撃してくれないか!」



「わかった」「……やってみます!」



 戦車の速度を上げる。履帯の回転で地面が削れるほど! 踊り子の笑い声を邪魔するほど!



 真っ赤なボタンを押す。

「撃て!」


 チャーフィー、エイブラムス、シャーマン、そして重戦車パーシングが、順に撃っていく。


 砲弾の嵐が岩を砕いた。

「……よし、エメンタール! 一気に奴らを殴るよ! せーぇのっ!」



 破壊。


 ――キャハハ! …………はぁ?


 

 赤い閃光……スティルトンのチャクラムが踊り子の首をスパンと裂いた。


 ――アト少シダッタノニィぃぃぃいいいいいいい!!! 



 ――アト少シ、アト、スコ……、

  


             死。



 ――――――!!!!!congratulation !!!!!――――――


 スティルトンがロックフォールの元へふわりとやって来る。


「ありがとう捷子。……一瞬、隙をつけたよ」


「良かった。……それと、さ。名前、もう一度教えてくれないか」


「なんだ、もう忘れたのかい? ちゃんと覚えておくれよ。



キジョー。棚畑たなばた喜丞きじょうだ」


「ありがとう。……同胞」



 ――――……なんだ、エゴにまみれた人間を殺すよりもずっと……



 ……“闘っ”ているじゃないか。


 アメノウズメ‐【あめのうずめ】

 踊り子の虚。美しかったはずの空虚。笑いながら踊り、柔らかさを失った衣を投げる。狂気を孕んだ笑顔の裏には、自分はただの偽物でしかないという諦念がある。本物になりたい。


 アマテラス‐【あまてらす】

 太陽の虚。本物。岩陰にて栄辱を知る。


 アメノタヂカラオ‐【あめのたぢからお】

 監視の虚。屈強な鎧はただの虚偽。偽物にすらなれない、ただの“飾り”。

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