フィルター越しの共闘9
びゅぉんっ
がら、がらばらばら。
真っ黒な布のような瓦礫が襲いかかる。踊り子の虚は、自身の衣を一枚一枚脱いでいき、こちらに向かって投げる。投げる投げる投げる。
「ショーコ。奴が投げてくるものは私がなんとかしよう、あわよくば倒す。あの隠れたバケモノは、君と後から来る子たちに任せる」
「……わかった」
スティルトンが御伽を齧った。彼女は監視塔屋上からひょいと飛び降り、そのまま飛行する。虚の衣が彼女を襲う。
風を切りながら迫りくる黒いそれは、スティルトンの白い千手によって砕かれていくが、今の彼女は砕くのに精一杯だ。両腕の赤いチャクラムを投げる隙などない。踊り子の虚は飛行する彼女を狙い、容赦なく自身の脱いだ衣を投げる。
びゅん、ひゅるひゅる、ばらばら、という音が繰り返し響いた。
――――今のうちに、早く他の奴らを……。
ロックフォールはもう一度意識をコアに集中させ、武器を出してみた、
のだが……。
――――……? これは……。…………操作台?
彼女の腰の高さほどある、緩い弧を描いた操作台なるものが、彼女の前に現れた。ボタンやレバーなどが複雑に取り付けられている。
その前には……小さい戦車が六輌、並んでいた。指扇家の名において、あらゆる武器とその名称を覚えておくのは当然だった。それは戦車も例外ではないのだ。
――――エイブラムスとシャーマンが二輌ずつ、残りはチャーフィーとパーシングが一輌ずつか……つまり?
360°操作が可能な六本のレバーのうち一本を、ぐぐっと前に傾けてみた。エイブラムスが一輌、前に進んだ。つまり彼女の武器は、ラジコンなのだ。
「……なるほど」
右足に負担をかけることなく戦闘が可能だという事実に安心を覚え、ロックフォールは操作台のレバーを握った。
――――反撃開始だ。