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フィルター越しの共闘8

           『ショーコが凱旋するとき』



 ショーコが再び行進しながら帰ってくるときには


(Hurrah! Hurrah!)


 私たちは心からの歓迎で迎えるだろう


(Hurrah! Hurrah!)


 それが善か悪かなんて


 彼女も、私も、


 しらない


 しらないよ


 わからないの


(Warning! Warning!)



           ・     ・     ・



 ――――warning!――――warning!!――――warning!!!――――



「……ほら、ショーコ。私たちが倒すべき敵が来たよ?」


「……本当だな、キジョー。


――行くぞ」



 意識をコアに集中させる。ロックフォールのコアが力強く光を放つ。その色はまさに群青色。監視塔に咲いた花が、その花弁を大きく揺らした。

 それと同時にスティルトンも、彼女のコアである赤い数珠を光らせた。神々しい、深紅の光。

 

 ロックフォールの戦闘衣装。黒を基調とした軍服は金色の装飾が施されており、ブーツとマントは白い。ただ、本来長くあるべきはずのズボンの丈は膝上までしかなく、少し折り込んである。ブーツとズボンの間に、彼女の肌と義足がその姿を露わにした。

深く被った帽子が、彼女の表情に影を落とす。厳かな軍人は、薄荷色に染まっていく夜を見つめる。



 ――真っ黒な月が浮かんだ。淡い緑色に、ぽっかりと黒い穴の空いたような満月だ。

 


「んっ……おお、すごいなあ、これ」スティルトンが小さく呟く。「腕がいっぱい生えてる。……これで戦うのか?」


 赤と白を基調とした、袈裟のような戦闘衣装を着ている彼女の背にはいくつもの腕、があった。それは乳白色で、ぼんやりとした淡い光が包んでいる。その姿は、まるで千手観音だ。彼女自身の両手には、赤いチャクラムが一つずつ装備されていた。



 ……闇。

 

 突如、黄泉ヨミの空間が闇に包まれる。自身の輪郭も確認できないほどに。


「スティルトン、いるか!」


「もちろん。何がいるのかねえ?」


 ひゅひゅひゅ、と空気を切る音がする。おそらく、スティルトンが千手を操り、周りに何か変化がないか確認しているのだろう。



 ……光。

 暗くなったと思ったら、光が眼に刺さってきた。ロックフォールは思わず目を瞑る。


 だんだんと瞼を開くと、そこには大きな女体の黒い影。夜の空に、高く高く浮かんでいる。

その虚はタライのような、桶のような、大きな容器の上に立っている。天女が身に纏うような、黒く柔らかい何かを何重にもその体に纏っていた。美しさを取り繕ったような虚構は、無意味そのもの。


 先程目にした黒い満月が、ミラーボールのように妖しい光を放っている。そこからは黒く太い枝が生え、勾玉のような黒い宝石が装飾されちらちらと月の光を反射しあう。



 ――キャハハハ!


 虚が踊る。不気味な笑い声をあげながら。ここは“彼女”のステージだ。


 その虚は、自身の衣装の一番上に着たものを掴み、



 脱いだ。


 柔らかかったはずの黒い布はたちまち鎧の如くギチギチと音をたて、風を切りながら、二人のいる監視塔屋上へと向かってくる。


 びゅんっ、


 がらがらがら。


 スティルトンの千手が、鎧を砕いた。おかげでお互い無傷だ。


「ここからじゃ低いな……。ショーコ、君の武器は?」


「ああ、出してみる…………ん?」


 

 黄泉の空間の奥に、岩場があった。ぎらつくステージとは裏腹に、そこは暗い。


「ん……? あれ、あっちにも虚がいるねえ」


 岩場に隠れた虚がこちらを見ている。そしてもう一体、隠れている虚と、ギアーズを交互に見ているのだ。


「踊っている奴は高すぎる。岩の方から先に仕留めよう」


「そうだね……うわっ」


 踊り子の虚が投げた衣を、スティルトンはとっさに避けた。地面にぶつかったそれはバラバラと瓦礫のように崩れた。この虚の攻撃はこの上なく、邪魔だ。


「仕方ない……応援を呼ぼう。二対三はどう見たって不利だ」


「そうだね。北区のあの子たちは大丈夫かなあ?」


 カリ、とロックフォールは御伽オトギを口に含んだ。北区の二人組と連絡を取るためだ。


「――CQCQ! ……なあ、聞こえるか。



……こちら監視塔南区、【ロックフォール】だ。応援を頼む、敵襲だ。――――大きな虚構のバケモノ、三体だ」



『……チェダーだ。すぐにエメンタールとそちらに向かうよ』



「……すまない、よろしく。……五味がいないんだ」






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