フィルター越しの共闘7
「――つまり、【ロックフォール】なんて名前があると怖いのか、違う自分みたいで」
「……ああ。免罪符みたいなものはいらないんだ、一生背負い続けるしかない」
詰襟で隠れていたドッグタグを取り出す。ちらりと哀しくそれは光った。
ただ、今はドッグタグが三つある。二つは変わらず、かつての『同胞』のもの。あと一つは……彼女自身のコアだ。長方形の銀のプレートに、藍色の宝石のようなそれが埋め込まれている。――なんとも皮肉なことだ。それが彼女の“核”だなんて。
「義足ねえ……まだ慣れないのかい? ズボンに隠れて見えないけれど」
「見るか? 確かにまだ慣れてはいないけれど、これはすごい技術だぞ」
ブーツを履いたまま、右足を覆っていた黒いズボンの布をたくし上げる。そこには、白い棒、のようなものがあった。プラスチック製のように見えるが、実際そうなのかはわからない。その細さは、まるで節足動物の肢のようだ。
「スティルトン……私はきっと、戦い続けるしかないのだと思う。それが人間でも、バケモノでも。それが彼らへの償いなんだ。償うのは指扇捷子、ロックフォールじゃない」
「…………。
“キジョウ”だ」
「えっ……。……ああ、キジョウ……、どんな字?」
「喜ぶのキに、ええと……カタカナのフと水と漢数字のイチで書くジョウ」
スティルトンは空中に自身の名前を書いてみせた。初めてロックフォールが彼女の姿を視界に入れた瞬間である。
「キジョウ……喜丞か。よろしく」
「まあでも、他には言わない方がいいだろうねえ? お互い」
「五味や総務課の考えもあるしな。……ありがとう」
ハリボテの草原で、二人の少女は静かに笑った。
ロックフォールは嬉しさを感じると同時に、失くしたはずの右足が棘のように痛んだのだった。
指扇捷子‐【ロックフォール】 17歳
魔力指数は24989。
さしおうぎしょうこ、と読む。
軍人一家に生まれた、優秀な軍人。その優秀さゆえなのか、完璧主義的な人間であり少しでもミスをしてしまうと混乱してしまう。……普段は本当に優秀なんだ、ポンコツではない。たぶん。
『カマドウマ』軍と『グラス』軍の宗教戦争でグラス軍として戦っていた際に、自身の分析ミスによって同胞二人、捷人と風身を犠牲にしてしまう。
同じ戦争で、彼女は右足を失い、現在は義足。そのデザインは、「シンプルをよりシンプルに」をモットーにしている企業が製作したもの。やはりシンプルで、細くて白い。
コアの色は藍色。武器はラジコン。
――……ラジコン??