フィルター越しの共闘6
それから、彼女は本土へ帰った。……母親からの帰国命令が出たのだ。
大きな本棚とテーブルのある、重厚な雰囲気の書斎。ただ、壁に飾られた銃や鉈が、異彩を放っているのである。
彼女とその母親が、テーブル越しに会話をする。
「……捷子」大きな本革の椅子に座り、母は娘の名前を呼ぶ。「あなただけでも、生きてて良かったわ」
「すみません……全部私の、責任です。……どんな罰でも受けます」
「あら……違うのよ。今日呼んだのはそういうことじゃないの。
……これ、国からのお手紙ですって。何かしらねえ……?」
――――……?
母の手には、白い手紙が挟んであった。どうやら捷子宛で、本人以外見てはいけないものらしい。
「ありがとうございます。後ほど、確認します」
「そうね。……あなたはしばらく、本土にいなさい。
……そんな足じゃ、まだ十分に戦えないでしょう」
「…………」
ぎちり、と右足が鳴った。
彼女の足と、義足が擦れる音だった。
――指扇捷子は、今までアクセサリーなど付けたことがなかった。
ただ、あの戦争を境に、首にはドッグタグが二つ。永遠の束縛のように、金属製のそれが光を反射するのだった。
・・・