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フィルター越しの共闘5
……瞬く間に、右足が紅く染まっていた。彼女を構成していた肉、らしきものも飛び散っていた。
――――まずい。まずいまずいまずい!
不思議と痛みはなかった。混乱と衝撃で、痛覚が追い付かないのだろう。
彼女はその場に倒れこんだ。命が断たれるのも、時間の問題だ。
「ショーコ……。
……待ってて。僕らが行ってくるよ」
――――は……?
二人の少年が、銃を構え敵の方へと走っていく。
「ま、待て! どういう……」
「そんなんじゃ戦えないでしょ? ……僕らが、た、倒して、くるからさぁ……!」
――――……待て、待ってくれ……!
不幸な破裂音が、途切れる間もなく響く。ずっと、ずっと、永遠だと錯覚してしまうほどに。
――破裂音が止んだ。
捷子の視線の先には、かつて人間だったものの肉塊があるだけだった。……相打ちだ。
人生で一番、欲しくなかった勝利だ。