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フィルター越しの共闘4

           

           ・・・


 ――骨に沁みそうなほどの、火薬と血の香り。砂埃が視界を曇らせる。


 『カマドウマ』軍と『グラス』軍の宗教戦争だ。


 カマドウマ……彼らは漢徒羅カンドラ教におけるカルト教団だ。――交響曲シンフォニーを起こした最凶最悪の組織。彼らは教徒として「死こそ冥加なり」という言葉を掲げているのだ。対してグラスは「生」そのものを信仰している教団だ。戦争が起こるのも納得がいく。


 ロックフォール――指扇捷子は、そのグラス軍に雇われた兵士なのだ。


 交響曲。たった一人の少年を発端にして起こった、東日本中が怯えた事件。捷子自身も詳しくは知らない。ただ、これがきっかけでFASを始めとした国家管理局、及びその施設が完成した。現代でも彼らはより安全な日本をつくるために日々を費やしている。


「ショーコ、敵はあと何人だ」


「三人……いや、二人か?」


「ショーコ、弾はあといくつ?」


「十分だ。……すぐに終わらせてしまおう」


 砂岩でできた大きな岩に、三人の軍人は隠れている。二人の少年と、一人の少女。……微かに、敵のやってくる足音がする。


 指扇家。この家系は先祖代々、雇われ兵士として戦争に参加してきた、強力な軍人一家だ。ゆえに、この家自体が軍隊を組織することはない。彼女らも、その一家生まれなのだ。だから、「グラス」とかいう教団には何の思い入れもない。それでも、戦わなければならない。



 ――――すぐだ、もうすぐ奴らが来る。


 チャキリ、と捷子は銃を構える。戦いはもう終盤に迫っていた。あとは残りの敵を殲滅させればいい。……早く、終わらせてしまおう。こんな、無意味な、命の虱潰しなど。


 靴と砂の擦れる音。エゴにまみれたこの戦場で、捷子は敵に銃口マズルを向けた。彼女もまた、エゴの化身なのである。



 ――――え……?


「ねえ……ショーコ……」


 敵は二人や三人などではない。


 五人だ。


「……いや、いい。――撃て!」


 乾いた破裂音がこだまする。捷子自身も、混乱の中砂埃の中で目を凝らし、敵を狙う。


 ――足元で、爆発音がした。



 ――――足元で?



「ショーコぉぉぉお!」


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