表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
241/253

御伽の国のコトカ


「さて、これからどうしましょうかね」とカンラクは言った。


「パルメザン……いえ、 幸木(さちき)(たけなわ)さんを呼んだ方がいいんじゃないでしょうか」


 コトカはここで初めてパルメザンの本名を知った。うずらが言い直した通り、仮の名前なんていらない気がしてくる。私たちは本当の意味で同志になったと、コトカは微かに感じた。


「そうね。どこにいるかしら」


「私が探しておきます。魔法でチョチョイですから! ……その後に作戦会議といたしましょう」


「作戦……」


 そういえば、何も考えていなかった。ただ、何をやるべきかなどこの場にいる全員が同様のことを確信していた。


「ラボに直接説得するしかないと思います。……悲しいけど、あちらも戦力は縮みかけている気がします」


「私もコトカさんの意見に同意です。今残ってるのは確か……ペレストロイカ?」


 ゴーダが救ったあの人だ、とコトカは思った。


 ペレストロイカはコアを使って黄泉にやってきて、虚に襲われかけた男だ。飄々としていて、何を考えているかわからないあの彼。しかしゴーダが突如その身代わりとなり命を落としてしまったのだ。その全てを見ていたが、ゴーダが救った理由も、ペレストロイカの感情もわからない。


 彼はあれから何か変わっただろうか。もし自分が彼と同じ立場だったらきっと敵を敵だと認識できなくなってしまうかもしれない。そうだといいけれど、人の感情とはもっと複雑な構造をしているとコトカはすでに学習していた。


「偵察が必要でしょうか?」


「そうねえ……。コトカちゃんはどう思う?」


 コトカはなるべく武力では制圧したくなかった。できるなら話し合いで解決したい。それができないから今争いあっているのはわかるけれど。


「……力で言うことを聞かせたら、勝った側と負けた側が生まれてしまいます。正直、それは嫌だなって……。なるべく仲良く、したい、です……」


 喋るうちにだんだんと自信をなくし尻すぼみに意見を述べてしまった。しかしカンラクとうずらはコトカを笑うことなく、むしろ「でしょうね」といったような反応を示していた。


「コトカさんならそう言うと思ってましたよ、そうしましょう」


「そうね。あなたがリーダーなんだから」


「りー、だー……?」


 コトカは胸の内が暖かくなって、なぜかくすぐったかった。顔が綻ぶ隙などもちろんなく、コトカは決心した。


「直接、お話をします。魔法のことを全て話して、理解してもらいます。そのためにはまず外堀から……」


「ペレストロイカを味方につけるのね」


「はい。……きっとわかってもらえるはず。なのでまずは、彼の動向をこっそりと探して、一人のときを狙って交渉します」


「随分しっかりしてきたじゃない」


「リーダーですから」


 わかっていないのはコトカの方だった。

 彼女は、ペレストロイカが既に故人となっていることなど知らないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ