きっとたぶんはじめてのともだち6
「雪平コトカ、だよね? 違った?」
「…………ちがくない、です」
局津乙はなんというか、怖い。
そのつり上がった目もそうなのだが、何より学校での彼女の言動だ。まさに「一匹狼」といった感じ。関わりが少なければ人はだいたいその人を警戒するだろう。コトカは今そういった状態なのだ。
もちろん、言い逃れはできない。名前までバレてしまっているのだ、嘘をついたところで意味がない。
「やっぱりね、あたしは局津乙」
「しってます……」
「……。
友達に、なろうよ」
「……へ?」
“友達”
コトカには学校にも友達はいる。けれど、どちらかというと「知り合い」のような存在だったのだ。記憶を失くしていては友情もゼロからのスタート。思い出せない、絆の記憶。
教室じゃきっと周りは彼女を腫れ物のような存在なのだろう。まだ四月、交友関係だって少ない。
――彼女の中で何かが弾けた。ホウセンカの種のように、きらめきと期待の欠片が。
「……よろしくね、エメンタールチャン」
「……よろしく!」
友達ができた。
秘密の共有ができた。
大事な記憶ができた。
これから育つ絆ができた。
それだけでも、きっとたぶん、しあわせなの。
友達‐【ともだち】
とっても大事な存在。