きっとたぶんはじめてのともだち3
「――……古代ギリシャ……まあ、ソクラテスなんだけど、彼は『美の階梯』つまり、美に階級をつくりました。
一番下が美しい肉体によって得られる子孫、これは人間じゃなくてもできる行為だからランクは下なんです。
その上が魂、職業、学問、となっていき、最終的には、『美そのもの』を考え、それによって哲学が生まれました。」
ギアーズに入っても、当然学校は通わなくてはいけないのである。
その時間帯は他のメンバーが見張りを担当しているとか。もちろん、万が一のときは雪平コトカ自身も参戦しないといけない。ギアーズの掟だ。
――――? なんでそこから哲学が出てくるの?
コンピューターパネルをタッチし、「授業質問用メール」のボックスを開き、【どうしてそれによって哲学が生まれたんですか?】と入力。その後すぐに送信する。
「ん? ……質問が届きましたね。
……ああ、哲学が生まれた理由ですね。
例えば、美しい学問は学びを得ることができる。それが業績へと結びつくんです。
これを美そのものに置き換えると、哲学によって不死へと結びつける。当時の人間の最終目標は『不死』だったんです。
もちろん、肉体から精神を切り離す作業は一度しかできない。失敗したら死んでしまいます。その練習として、『哲学』が生まれたんですよ。……わかったかな」
その後教師は、自身の鞄から何かを取り出した。紙だ。
「みなさん! これ見てください! 紙です! ちょっと知り合いにA4の紙をいただいたので、紙媒体プリントを作ってみました! 載ってるコードでPCに取り込むこともできますけど、せっかくなのでね!」
プリントが生徒の手に渡る。……表だ。
「さっきの質問、来ると思ったので、わかりやすく表にしてみました。テストに向けてぜひ参考にしてくださ…………ああっ!」
教師がいきなり声を張り上げるので、コトカの肩がびくりと跳ねた。
教師の目の先には、一人の生徒。コトカよりも後ろの席に座っている少女だ。彼女は、先程のプリントをくしゃくしゃに丸め、ぽい、とゴミ箱へ放り投げたのだ。
――――ああ……何やってんだこの人……。
「つっ……局津さん! 何してるんですか! プリントをっ……!」
その少女は、クラスでのちょっとした問題児だ。なんというか、自由極まりない。授業中いきなり途中退出したり、眠ったり……。コトカの苦手な部類の人間だ。
彼女の名前は局津 乙。空色の長い髪をサイドテールにしているが、それでも腰まで伸びている。長い下まつげが特徴的だ。……って…………。
――――あれ……? あの子どこかで見たような……。
――――……ギアーズだ!