きっとたぶんはじめてのともだち2
「そんなこと言ったって……へ?」
ひゅんっ
黄色の稲妻のようなものが走った。
「カマンベールちゃん……?」
その黄色は、カマンベールの髪色だった。黒い和服を纏った金色の閃光。
長い前髪が揺れる。巨漢のような虚と、対峙。武器である鋏がギラリと妖しく光った。
「……壊す。……絶対に、壊してみせる」
かちゃん、ちゃん、かしゃん、しゃん。
がらがら、ぎゃちゃん、ぐらぐら、どすん。
淡い緑の空に浮かぶ黒い月、城。黒い瓦礫の雨の中に、少女は立ち向かう。
「……頭」
カマンベールは呟き、御伽をその小さい口に放り込んだ。
地に脚をつけ、御伽の魔法が彼女を包み、
翔んだ。
髪や服が風にぶつかる。一切の音を脳内から除外し、虚の頭だけを狙う。
「…………んっ……よい、しょッ……!」
ぐり、がらがら……がしゃぁん!
鋏の刃で、虚の頭を横一文字、ちょん切った。
とたんに虚の鎧は裂け、バラバラと一気に崩れた。それと同時に鳴子の音は止み、犬も、瓦礫の山も、壊れて消えた。
――――――!!!!!congratulation!!!!!――――――
「すごい…………」
「おおっ、お見事!」
カマンベールはふわふわと地面に降り立ち、戦闘衣装を解除した。
「なんか……できちゃいました。えへへ……」
「いやーすごいですよ! カマンベールさん、魔力指数チョー高いですもんねえ! 根暗だと思っててゴメンナサイ!」
「じゃあ、これで……」と、カマンベールはそそくさと帰ってしまった。任務が終わったらいつもすぐに帰ってしまう。
たった二回目で、これほどの実力を得たカマンベールが、雪平コトカは遠い存在に感じてしまった。彼女が攻撃したのはただの黒い犬。対してカマンベールは、そのリーダー的な“核”である巨漢の虚を倒しにかかった。
……彼女の方が、戦いの本質をよく見抜いていたのだ。
「……やっぱり、私には無理だよ、うずらちゃん」
「……。
何言ってるんですか。たった一つの“サンプル”を見ただけでしょう? それなのに、無理って決めつけて楽しい? ……ひとりぼっちの犬がキリンを見て、『僕は首が短いから駄目なやつだー』なんて言ってたら笑えるでしょう。猫も亀も、羊だっているんですよ!」
「……ありがとう」
「いいんですよ。……次の当番は明日です、二日続きで申し訳ない。学校が終わったら、博物館に来てください」
「うん……またね」
――――比良坂までの定期券、買わなきゃだな。
タケヨリワケ‐【たけよりわけ】
巨漢のような虚。大きな犬を二頭連れている。
この虚がやってきたときには鳴子の音が鳴る。
弱点は頭。