きっとたぶんはじめてのともだち
――――warning!――――warning!!―─――warning!!!――――
「カマンベールちゃん……」
「うん……来る。……今度こそ」
「頑張ってくださぁーい! こちらから見てるので!」
空が薄荷色に染まる。大きな黒い月が浮かんだ。――黄泉の時間だ。
がらがら…………がらばらばら!
月から黒い瓦礫のようなものが落ちる。四角形の大きな欠片だ。がらがら、がらがら、と大量のそれはたちまちのうちに壮大な瓦礫の山になった。真っ黒な九龍城砦だ。それは日本の街並みよりも、摩天楼よりも、ずっと高い。轟音が鳴り響く。……押し潰されてしまいそうだ。
大きな虚の黒い影。
強靭な筋肉を模った鎧の塊。人型のそれが動くたびに、ギチギチと軋む音がする。
虚は犬を二頭、連れている。その犬だってもちろん黒い。虚は犬に繋いだ縄を両手に一本ずつ握っている。
薄荷色の夜の下、黒いバケモノと三人の少女。
――コアに意識を集中させる。
「エメンタールちゃん、がんばろ」
「……うん」
かちゃん、ちゃん、かしゃん、しゃん。
鳴子の音がする。瓦礫の壁がその音を跳ね返していく。
――――よし。鎌も持った。……今度こそ。
ぐぉぉぉぉぉぉおおおおお!
走る!
虚が走る!
二頭の犬が漆黒の九龍城を壊して周る。ゴロゴロばら、がしゃん! 瓦礫の雨が降る! 地面に瓦礫がぶつかる。ボロボロと黒い破片のクズになった。
鳴子、瓦礫、轟音!
虚は彼女たちに襲いかかる。
雪平コトカは瓦礫を避けながら、犬の右の方を狙う。
「壊れろ、壊れろっ!」
がちり、がちり、刃と鎧が鳴らす音。その響きも虚しい。
「もおおお! うずらちゃん! やっぱり私には無理なんじゃないかなあ!」
「そんなぁー! 結論を出すには早いですよぉー! 私がいるから死なないって!」