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ハンムラビも鼻で笑うレベル6

 ――――……え?


「よし、さっさとやっつけますよ」


 大きな橙色の魔法陣でできた盾が、虚の攻撃からエメンタールを防ぐ。


 五味うずらが御伽オトギを噛んだ。

 すると彼女の右手に、大きな光の結晶が姿を現した。あたり一面を煌々と照らす。


「あ、そうそう。魔法の使い過ぎは魔力指数を下げます。ゼロになったら自己の破滅ですから、今の間はむやみやたらに魔法を使っちゃダメですよ――……っと!」


 光の球が、虚を目がけて一直線に走った。ひゅうひゅうと風を切る。



 がら、ば、ぐらぐら、ばらばらばら



 攻撃を受けた虚が、瓦礫の山のようにがらがらと壊れる。


 ――――――!!!!!!congratulation!!!!!!――――――


 緑色の空が消え、青い昼の色が広がった。倒せたらしい。



「ふぅー、危ない危ない。あの光ボール、なんて名前にしよっかなあ。……ビリビリボール! ――うん、だっさい」


「あ、あの、五味さん……?」エメンタールが戸惑いを隠せずに五味に話しかける。遠くにいたカマンベールがパタパタと駆け寄ってきた。


「え、エメンタールちゃん……大丈夫……?」


「うん、平気……五味さんが助けてくれた」


「あっ、お二方! 今日はもう解散ですね。虚もきっともう来ないです。まだまだですけど、実践を積めば必ず! 倒せますよ! ワンパンだって夢じゃない!」


「……はい……頑張ります……私なりに……」


 カマンベールはすぐにここを後にした。相当疲れていたようだ。


「あ……エメンタールさん」


「え? はい」


 五味とエメンタールは対面する。風がひゅうと吹いた。

 髪を風に任せながら、五味は微笑む。


「実はですね、魔力指数っていうのは、“その人間の精神的な密度”で決まるんですよ。良い経験、悪い経験、どちらでもね。簡単に言えば『個性』です。一般人は約1000から6000程度。で、ギアーズに選ばれるような人は、10000以上。――何を言いたいかわかります?」


「いや、それって……」


 ――――私がギアーズになるって、おかしくない?


「あなたの魔力指数って、めちゃくちゃ低いんですよ。なんと119。ほぼゼロ。不思議なんです、見たことない。――なので、勝手ながら調べさせていただいたんですが……記憶を失くされているんですってね」


「はい……それが原因ですか」


「そうです。本来ならギアーズなんて絶対に無理。――我々総務課は今まで、『空っぽの虚には満たされた存在を』って思ってました。それをもとに魔力指数が測られている訳ですから。…………でもね、ふと思ったんです。




目には目を、歯には歯を。ならば……『空っぽには空っぽを』だったら、いったいどうなるんだろう。ってね」


「……うん」


 ひゅう、とまた風が吹く。


「つまりエメンタールさんがギアーズに選ばれたのは、我々の実験です。きっと危険。絶対危険。……それでも、これが成功すれば大きな進歩です。だけど、実験の中あなたに何かあったら、結果なんてわからない。総崩れ。そのために私がいる訳です。万が一ってことでね。



――ねえ、それでもギアーズになる?」


 ――――……そんなもの、


 ――――答えはひとつ。



「……もちろん、やるよ。私は自分を変えに来た。私がいることで何かが変わるかもしれないってなったら、引き受ける以外ないよ」


「……いいの?」


 びゅう。

 風が強く吹く。桜の花弁が嵐のように舞った。嵐の中、エメンタールは五味の目をまっすぐと見た。



「――よろしくね、うずらちゃん」


「……ありがとう。――――絶対に守ってみせるから」




 雪平 コトカ‐【エメンタール】 13歳

 1月19日生まれ。高天原中学校二年生。

 魔力指数は119。


 半年以前の記憶を持っていない、記憶喪失少女。マンションで独り暮らしだが、親戚に金銭的援助をしてもらっている。

 ギアーズ変身時の武器は大鎌。コアの色はピンク色。

 余談だが、未だに「おろそか」と「おごそか」の区別がいまいちできていない。


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