ハンムラビも鼻で笑うレベル5
「……よし」
――――腹をくくったぞ……。
エメンタールは大鎌をもう一度力強く握る。ここで終わってしまったら、意味がないのだ。
「頑張ってくださぁい! いざとなったらお助けするので!」
戦いに苦戦している二人などお構いなしに、五味うずらはビルの屋上から虚を眺めている。
「でっかいですねぇー、ビルよりも大きいや。あはは!」
――――足を狙うしかない。
「壊して、やるっ……!」
鎌を大きく横に振り上げ、虚の足部分を目がけて勢いよく降ろした。
がきん、と大きな音がしたが、バケモノは傷一つつかない。
腕部分を狙うカマンベールも攻撃の手数で攻めようとしているが、うまくいかない。思わず弱音を吐く。
「……ほ、ほんとに倒せるの……これ……エメンタールちゃん、できた……?」
「ぜんっぜん! だけど、ちょっとずつ足が動いて……うわっ!」
ぐぐぐ、とエメンタールの攻撃していた足部分が動いた。その反動で、エメンタールは体勢を崩し、倒れてしまった。
虚の足が大きく上に上がり、エメンタールを目がけて蹴りを入れようとしている。彼女の体の一回りも二回りも大きい影が落ちた。それはだんだんと大きくなり、同時に黒い塊がエメンタールへと迫る。ごうごうと風が唸る。よりいっそう吐瀉物が吐き出される。まるですべての憎しみがエメンタールへ振り下ろされるかのように。
カマンベールも、はっとしてそちらを見た。「……やば」
……ぴきぃん、と何かを弾き返す音がした。糸が張り詰めるような鋭い響きだった。
――――蹴られて……ない?
彼女の目の前に、オレンジ色の光が広がっていた。落ちた影すら跳ねのけるような強さがあった。エメンタールは呆気にとられ、ただその様子を眺めるのみだった。
「――エメンタールさん、あなたは私が守る」