表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/253

メモラジック・メメントモリ7

 一晩病院で過ごしたあと、そのまま国家管理局に向かった。軽くなった髪にはまだ慣れないが、雪平コトカはそれでも進んだ。温い空気が妙に不安を掻き立てる。


 電車に揺られ、人の波を渡りやってきたコトカを、黄土色の教会は迎えた。自動ドアを抜け、そのまま地下の階段を降りる。もう五味うずらは既にそこにいるような気がしたのだ。


 壁に取り付けられたライトの列が、コトカが近づくごとに一つずつ点灯した。一つ、また一つと、ぼんやりとした明かりが徐々に鮮明になる。それにつれて、彼女の影も濃さを増した。


「ん……? ああ! エメンタールさん!」


「……え?」

 

 エメンタールは思わず戸惑いの声を漏らした。

 地下に到着すると、足音に気づいたのか五味うずらが笑顔で彼女を見た。ただ、そこいるのはうずらだけではないのだ。


「なんで、みんなが……」


 地下――博物館ミュージアムには、生き残ったギアーズのメンバー全員がそこに立っていた。……スティルトンを除いて。


「もしかして髪、切りました? いいですねえ、私もしてみたいです! イメチェン!」


「そんなことよりも、なんで、もしかしてみなさんもうずらちゃんに……」


「……そうね。この女に、今何が起こってるのか問いたださないと」


 ゴーダが目線を変えずに口を開いた。淡々とした様子だが、その言葉には怒りも含まれているようにも聞こえた。何をしているんだ、自分も同じ目に遭ったら冗談じゃない、と。


「ボクが言いふらしてやったんだよ、なあ?」「そうですね」


 パルメザンとカマンベールも、うずらを冷たく睨む。……ああ、やはりみんな怒っているのか。それもそのはずだ、「予期せぬ事態」どころの話ではない。


 エメンタールにも、あのときと同じどろりとした黒い感情が流れてきた。二度とあのような凄惨な景色は、見たくもない。呪縛のように体がこわばって仕方がないが、それでも少女を問い詰めた。四人でうずらを取り囲み、尋問のような空気が流れる。


「うずらちゃん……教えてよ。どうしてチェダーちゃんは虚になったの? ねえ」


「……なんでだと、思いますか」



 ――――……!



「テメェ、質問に質問で返すとか頭わりーんじゃないの? 糖分そのまま脳にブチ込んでやろうか」


「待ってパルメザンさん」


 なぜ。


 エメンタールは、自分がその答えを既に知っていると悟った。病院で見た乙の記憶を辿る。そう、彼女の最期は……。


「魔力指数……」


「正解です。魔力指数とは、そのひとの個性や人生そのもの。未来で埋め合わせをすればいいから、少し減るぶんには問題ありません。しかしゼロになったら取り返しがつきません。死にます。


ただ、それだけではあのような異形にはなることはできないんです。





みなさん、『メメントモリ』という言葉をご存知ですか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ